大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
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2005年9月時点の情報を掲載しています。
「商売繁盛」と言葉にすることは簡単です。ただし、この言葉の意味を問われたとき、企業や業種によって異なる説明をするはずです。大企業の場合は、同じ会社内でも事業部単位で「商売繁盛」のイメージが異なることもあります。
たとえば東京・秋葉原の路地裏や雑居ビルの階上には、売場は非常に狭いのに固定客をがっちり抱えている専門店があります。反対に、マスコミでも取り上げられ、テレビ番組でも取材されるようなお店なのに、売れるのは利益の薄い特価品や有名メーカーがテレビで宣伝している新製品ばかりという場所もあります。
そうした特価品の多いお店に足しげく通う知人がいます。彼が見るのは特価品コーナーだけです。「これは明らかに評価損処分品(原価より安く売っている)で、絶対お買い得だと判断したらお財布を取り出しますね」と話します。
しかし、そうした価格の安さだけで勝負する店ばかりではありません。秋葉原には有名店ではないけれど、インターネット通販で国内・国外から注文が殺到するお店もあります。専門店街には同様なお店があるもので、秋葉原から近い蔵前は玩具問屋街として有名ですが、ここに「久保商店」という玩具問屋があります。おそらく本誌の読者でご存知の人は皆無かもしれません。久保商店の取引先は世界中の玩具店で、前会長の久保達夫氏がアメリカで開催された玩具関係のイベントに行けば「Mr.KUBOが来た」と人々が集まります。インターネットでも日本の玩具関係の情報を発信していますから、海外からのお客様が毎日のように来訪されています。
久保商店が商売繁盛のために行った工夫はどのようなことだったのでしょうか? それは「良質な人脈作り」だと言及できるでしょう。久保氏と筆者は20年ほどの付き合いがありますが、現在は同問屋の役職を退き、古希を過ぎた老人は今年だけでもロシア、ブラジル、フランス、イタリア、ドイツなどを訪問したと楽しそうに話していました。
「ボクはね、世界12ヶ国語を話すことができるんだ、島川さん。どこの国でも“こんにちは”と“ありがとう”を話すことができれば、商売ができるものですよ。心を込めて“こんにちは”と”ありがとう”を繰り返していれば商売は繁盛するものですよ」久保氏は楽しそうに話されました。もちろん“こんにちは”と“ありがとう”以外は、現地で通訳を雇うそうです。
「仕事というのは楽しくなくちゃいけないよね。玩具を通じて世界中の人と友達になれるんだから、こんなに楽しい商売はありませんよ」と久保氏は話します。売れるショップに売れる人となるための、最初の提案は「自分も他人も楽しくて、それでいてお互いのビジネスになる」ということだと筆者は考えています。
秋葉原の専門店や久保氏の事例から、まず自分自身が具体的にイメージする「商売繁盛」像を考えてみてください。企業は「売上=利益+費用」という数式で成立しています。合理的な考え方しかできない経営者は、費用を限りなくゼロに近く設定して、法律を無視したような方法まで使って売上を求めようとするかも知れません。
利益の追求に邁進するイメージを「商売繁盛」と考えることは発想が貧困ではないかと筆者は考えます。あなたは、あなたを信頼してくれる顧客・裏切らない顧客を何人数えることができるでしょうか? その数が「商売繁盛」のための貴重な資産だということを自覚しましょう。
島川 言成
パソコン黎明期から秋葉原有名店のパソコン売場でマネージャを勤め、その後ライターに。IT関連書籍多数。日本経済新聞社では「アキハバラ文学」創生者のひとりとして紹介される。国内の機械翻訳ソフトベンチャー企業、外資系音声認識関連ベンチャー企業のコーポレート・マーケティング部長を歴任。現在、日経BP社運営のビジネスサイト「日経SmallBiz」でIT業界の現状分析とユニークな提案をするコラムを連載中。PC月刊誌「日経ベストPC」では秋葉原のマーケティング状況をリポート。また、セキュリティ関連ベンチャー企業のマーケティング部門取締役、ゲームクリエーター養成専門学校でエンターテインメント業界のマーケティング講座も担当。
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