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2005年11月時点の情報を掲載しています。
インクジェットプリンタの主戦場が、シングルファンクションプリンタ(SFP=単能機)から、プリンタ複合機へと移行した。
昨年の年末商戦では、出荷台数の約3割に留まっていたプリンタ複合機だが、今年夏以降は、プリンタ複合機の販売比率が初めて50%を突破した。それにあわせて各メーカーの年末商戦向けプリンタの新製品も複合機が中心となっている。
複合機はプリンタ機能だけでなく、スキャナ機能、コピー機能などを有していることから、一台で多用途に利用できる点がメリットだ。しかもSFPとそれほど価格差がなく購入できるという点も見逃せない。ウェブに画像をアップする際には、スキャナ機能を使えば過去の写真や手書きのカットをPCに取り込むことができる。また、家でも簡単に新聞や雑誌などのコピーができるという使い方も可能だ。基本機能となるプリンタ機能を含め、1台3役のメリットは大きい。
一方、プリンタメーカーにとっても、用途の拡大によってインク消費量の増加が期待できると予測している。複合機化は、ユーザーおよびメーカーにとっても、魅力のある製品だといえる。今年の年末商戦では、全出荷量の6割以上が複合機になると予測されており、それによる新たな利用提案にも、各社は余念がない。
こうした複合機を巡る熾烈なメーカー間競争の一方で、実はもうひとつ、今年の商戦で見逃せないポイントがある。それは、プリンタ陣営が狙う『おうちプリント』と、フィルムメーカーが推進する『お店プリント』との争いである。
デジタルカメラの浸透と、現像写真と同等の画質を実現するプリンタの普及によって、家庭で写真プリントをするといった使い方が広がってきているのは周知の通りだ。これに対抗してフィルムメーカーは、デジカメで撮影した写真も写真店でプリントしてもらう『お店プリント』の提案に力を注いでいる。
富士写真フイルムの「カンタン、キレイ、色あせない」のキャッチフレーズは、まさにお店プリントの優位性を訴えたものであり、お茶の間にも広く浸透している。実際、キヤノン、エプソンの両社が、ユーザーに対してそれぞれアンケートを行った結果、デジカメ画像をお店プリントに出す理由として、お店プリントの方が「きれい」、「長期保存に適している」という声が多かったという。
だが、プリンタメーカー各社は、これに対して強く反論している。例えば、キヤノンは、「1ピコリットル、9600dpiという高精細化によって、お店プリントと差がないレベルにまで到達している。また、長期保存性という点でも、ChromaLife 100という当社技術によって、お店プリントを上回るレベルにまで到達している」と語る。また、エプソンでも「新製品では、エプソンカラーと呼ばれる技術を実現したことで、耐オゾン性で30年以上、耐光性で80年以上を達成しており、お店プリントに比べても、品質、長期保存で引けをとらない」と胸を張るのだ。
実は、この熾烈な争いが激化する背景に、複合機の出荷比率の拡大という要素が見逃せない。かつてのプリンタ複合機といえば、エンジンなどは一世代前の技術が使用され、単機能機に比べて印字品質が悪いという印象が強かった。しかし、昨年から投入されている複合機は、最先端の画像エンジンが採用され、写真画質に関する技術も以前とは比べものにならないほど進化している。また、スキャナ機能やフィルムスキャン機能によって、過去に撮影した写真の焼き増しも、複合機によって簡単にできるようになった。いわば、おうちプリントを加速する環境が、複合機によって作り出されているというわけだ。
プリンタメーカー各社のキャッチフレーズは、「プリンタまかせで、写真がキレイ」(エプソン)、「デジカメプリントでお悩みの皆様へ、もう迷う事はありません」(キヤノン)。いずれも、お店プリントへの対抗を強く意識したものだ。
複合機の投入は、おうちプリントの利用を促進するキラーデバイスともいえる。だからこそ、各プリンタメーカーも力を注いでいるのである。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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