大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
Up Front Opinion
|
Another side Talk
|
巻頭特集
|
Open Source Solutions
|
ソフトウェアライセンス
|
IT活用
|
売れるショップ
|
ビジネストレンド
|
イベント
2005年11月時点の情報を掲載しています。
業務改革・改善のためには、どのようなIT活用の方法があるのだろうか。パッケージ化されたアプリケーションの利用によって、どこまで効率は上げられるのか。あるいは、ビジネス系アプリケーションの使いこなしによって改善が計られるのか。そうした視点から、IT活用について考えていく。今月はデータ管理について考察する。
IT活用の成果は すべてデータに残る
IT活用にとって何よりも重要なもの。それは、日々の仕事を通して創り出されたデータにある。たとえば、筆者にとっての最大のデータ資産は、記事やコラムなどの原稿になる。そのデータは、テキスト形式で保存して、仕事場では常に二台のハードディスクに保存するようにしている。もしも、外出先で取材したり執筆した原稿があれば、それは電子メールを使って自分宛に送信しておく。そうすることで、データはメールサーバにもバックアップされ、ノートPCをいちいち開かなくても、作業場のデスクトップPCですぐに使えるようになる。ちなみに、メールサーバはLinuxのsendmailを利用して、事務所でオリジナルのサーバを稼動させている。つまり、ハードもOSも違うものにすることによって、バックアップの安全性を高めようとしているのだ。これだけ厳重にバックアップをとる理由は、過去に大切なデータを失いかけた経験があるからだ。OSやアプリケーションは、マスターCD-ROMさえあれば、いつでも元に戻せるが、データというオリジナルの資産は、バックアップがなければ復元できない。いつかはPCが壊れるという事実を考えることなく、日ごろから使っているノートPCだけにデータを蓄積していると、ある日突然に電源が入らなくなって、それまでのデータがすべて失われる、という悲劇に襲われる危険すらあるのだ。
復旧が困難な 個人データの数々
実際に日ごろ使っているノートPCが壊れてしまったとしたら、どのようなビジネスの停滞が起こるのだろうか。まず考えられるのは、インターネットや電子メールが使用できなくなることだ。インターネットだけならばまだしも、電子メールが使えなくなるということは、これだけ発展してきたネット社会においては、致命的なダメージだ。取引先との電子メールが1日2日と遅れていけば、それだけで取引先から信用を失い、ビジネスの損失になるかもしれない。次に、見積書や企画書に提案書といったデータの損失だ。現在では、多くの人がワープロ感覚でノートPCを使っているので、日々のビジネスでやり取りされているドキュメントの多くが、ノートPCの中のハードディスクに保管されている。そのデータが使えなくなれば、それだけでビジネスは止まってしまう。特に、個人で作ったデータの多くは、その人の経験や知識が凝縮されているので、容易に他から持ってくるというわけにもいかない。
さらに厄介な損失は、グループウェアなどで利用している設定情報だ。クライアント/サーバ型のグループウェアでは、個人ごとの設定はPCに保存されている。そのため、クライアントPCが壊れてしまえば、それまでの設定をすべて最初から行うことになる。また、独自のカスタマイズなどを行っていれば、思い出して再設定するしかない。こうしたトラブルに対して、万全な備えをするためには、最終的にはバックアップを定期的かつ継続的にとっておくしかない。
最も確実な方法は PCの多重化
一口にバックアップといっても、その方法はさまざま、大きく3通りのバックアップ方法を提案することはできる。そこで、まず手始めに最も安全で確実かつ迅速な方法から紹介しよう。それが、PCの多重化だ。
企業系サーバ環境において、ストレージやサーバの多重化というのは、よく使われる技術だ。2台以上のハードウェアを並列に実行し、データを常に連動させておくことによって、1台が壊れてももう1台が稼働する。1台よりも2台にすることで、耐障害性を高めようとする安全策が、多重化技術になる。もっとも、クライアントPCにおいて「これが確実だ」という多重化技術はない。あるとすれば、BIOSが多重化されているとか、本体ケースの電源が二重になっているとか、ハードディスクをミラーリングしている、といった多重化になる。しかし、筆者の提唱する多重化とは、ハードウェアの高度な技術ではなくて、単純に2台以上のPCを並行して使うことだ。「職場のデスクトップPC」と「持ち歩き用のノートPC」という関係や、「会社のPC」と「自宅のPC」でもいい。複数台のPCを使うことによって、データの集中化を防ぐ効果が期待できる。2台以上を使い分けるようになれば、当然のことながらデータも多重化するようになる。確かに、複数台のPCで多重化したデータを使おうとすれば、ファイルの世代管理が煩雑になり、手間がかかると思われるかもしれない。しかし、その手間が自然とデータをバックアップする行為へとつながっていくのだ。もう少し賢明になれば、ファイル共有サーバやUSBメモリなどを使って、マスターデータを1箇所に集め、個々のPCではそのコピーを編集するようになるかもしれない。さらに、PCを多重化しておけば、もしもどちらか一方がクラッシュしても、ビジネスが停滞することはない。日々のトラブルに備えるという意味において、毎日使うPCの多重化は、とても効果のある対策といえる。
メディアへのコピーと 全社規模での自動バックアップ
残る2つの方法のうち、ひとつは外部メディアへのコピーになる。個人であれば、CD-RやDVD-Rへのコピーが、便利で確実な方法といえるだろう。ただ、画像データのような大きなものでなければ、わざわざCD-Rにコピーするほどのことはないと思いがちだ。そこで現実的な対策としては、CD-RやDVD-Rを月に1回利用して、その間は更新したファイルだけをUSBメモリなどにコピーしておくと、安全性と利便性を両立できる。重要な点は、毎日作業することと、バックアップしたデータをすぐに使える状態にしておくことにある。ちなみに、バックアップ専用ツールの中には、独自の形式で保存するものがある。そうしたツールを使ってしまうと、復元するのが面倒になるため、仕事を止めてしまう心配があるのだ。
そうはいっても、CD-RやUSBメモリに定期的にバックアップをとることは、日々の仕事に追われている身にとっては難しい。そこで第三の方法が、ツールを活用した自動バックアップとなる。組織的に運用している場合には、集中制御型のクライアント用バックアップツールを利用する方法がある。また、個人であれば単純な自動バックアップツールを使う方法もある。いずれにしても、ITの力を借りてバックアップを自動化すれば、うっかり忘れてしまう心配もなくなる。
バックアップという作業は、単純なようで奥が深い。個人で利用しているPCであっても、その中に保存されたデータは、その人の創作物でありオリジナルだ。それだけに、失われてしまえば大なり小なりの損失になる。その損失を防ぐためには、とにかくふたつ以上のコピーを作っておくしかない。どのような方法であれ、大切なことは「常に」行う心がけにある。個人のデータであっても、ビジネスに関するものであれば、それは会社の資産でもある。したがって、ビジネスに関する個人のPCに入っているデータは、個人の責任というよりは、会社の情報部門の取り組みとして、安全で確実なバックアップ環境を整備することも、今後はより重要になってくるだろう。
田中 亘氏
筆者のプロフィール/筆者は、IT業界で20年を超えるキャリアがあり、ライターになる前はソフトの企画・開発や販売の経験を持つ。現在はIT系の雑誌をはじめ、産業系の新聞などでも技術解説などを執筆している。得意とするジャンルは、PCを中心にネットワークや通信などIT全般に渡る。2004年以降、ITという枠を超えて、デジタル家電や携帯電話関連の執筆も増えてきた。
■データ多重化のすすめ
本紙の購読申込み・お問合せはこちらから
Copyright 2006 Otsuka Corporation. All Rights Reserved.