大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
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2005年11月時点の情報を掲載しています。
ビジネスシーンに交渉はつきものです。筆者が量販店でマネージャーをしていたとき、部下のSくんから、「お客様とお話しするのが苦手なんですが、どうすれば良いでしょうか?」と相談されました。真剣に悩んでの質問であることは、相手の目を見ればわかりました。この問題の解答を出すことができなくて、営業の現場を去っていく若者が結構いるんですね。販売の現場で相手とお話しすることに苦手意識を抱いていれば、売れるモノも、売れなくなります。筆者はどのように応えたでしょうか?
「Sくんの言葉は、自分で分かっているように、確かに滑らかじゃないけど、真面目に説明しようとする好感度が高いと保証するよ。自分はお客様に真面目に商品を説明させていただく、という意識を忘れなければ、きっと多くのお得意さんをつくれる店員になれると思うね」筆者の答えはコレでした。言葉遣いが上手になれるノウハウを説明したわけではありません。相談相手の人格を褒めただけでしたが、それからSくんの接客態度が変わりました。成果よりも自分を売ることを優先するようになりました。朴訥とした説明にシビレをきらせ、何人かのお客様を逃しはしましたが、そんな時、筆者は「プロ野球の一流打者だって7割は失敗する」とSくんを激励したものです。
販売経験の浅い若者を部下に持った場合、怖いのが「没交渉」型の人間を作ることです。過剰なノルマを与えたり、コミュニケーションが不足がちな組織が、そうした人間を形成する傾向にあります。
筆者は、毎週一回、ゲームクリエイターを目指す専門学校の生徒たちに講義をしています。生徒にC言語やJava言語を理解させるわけではありません。学校長から「最近の生徒は、技術を持っているのに、就職面接で落とされてくる人が目立ちます。人前で話すことを恥ずかしがらないようにして頂けませんか?」と依頼されたので、そのための講義をしています。
講義のポイントは5つです。筆者が販売の現場から会得したことですが、総合職から技術職まで役立つのではないかと考え、提案させていただきます。
ポイント1:相手の理解を意識して話しているか?
自分が理解できているから、相手も理解できているという考え方は危険です。技術職の人に多いのが、専門用語を多用した話し方をすることです。また外国語に長けた人も、カタカナ語の多用にご注意を。相手は自分とは違うのです。
ポイント2:相手の顔つきや身振りを観察しながら話しているか?
一方的に話す癖のある人は、相手の表情など微塵も意識しません。シナリオを棒読みする役者は、販売の現場では通用しません。相手の顔つきや身振りを冷静に観察する余裕が、「ここは話題を変えたほうがいいナ」と気づかせます。
ポイント3:過剰な「真剣さ」は不気味に見られる
真剣な態度も人にヨリケリです。さきほどのSくんのような朴訥なタイプの真剣な接客態度は効果的でも、バッテリー消耗時間などのような使用状態によっては結果が異なることを、論理的・学術的に追求する説明は、相手からは不気味に見えるときがあります。
ポイント4:譲歩から進むビジネスもある
組織には立場に応じた規律や権限があります。どんなビジネスも原価割れを嫌いますが、モノの価値は時系列的に下降線をたどる傾向が強いはずです。「それは許されておりません」と突っぱねるか、「上司に相談してみます」と応じるかで、ビジネスチャンスの範囲が変化します。
ポイント5:納得できたら諦めよう
プロ野球の一流打者でも7割は失敗しますが、本当の一流打者は失敗から学ぶそうです。成約率の高い販売員に共通しているのが、やれることをすべてやったのに、相手の同意を得られなかったのだから、潔く諦めようと割り切れることです。割り切れない人はストレスを蓄積します。
このようなことは日常的にあります。コミュニケーションは、一方的なものでないことを心掛けていきたいものです。
島川 言成
パソコン黎明期から秋葉原有名店のパソコン売場でマネージャを勤め、その後ライターに。IT関連書籍多数。日本経済新聞社では「アキハバラ文学」創生者のひとりとして紹介される。国内の機械翻訳ソフトベンチャー企業、外資系音声認識関連ベンチャー企業のコーポレート・マーケティング部長を歴任。現在、日経BP社運営のビジネスサイト「日経SmallBiz」でIT業界の現状分析とユニークな提案をするコラムを連載中。PC月刊誌「日経ベストPC」では秋葉原のマーケティング状況をリポート。また、セキュリティ関連ベンチャー企業のマーケティング部門取締役、ゲームクリエーター養成専門学校でエンターテインメント業界のマーケティング講座も担当。
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