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2006年1月時点の情報を掲載しています。
ビジネスモバイルと呼ばれる領域のノートパソコンが注目を集めている。この分野の製品は、一般的には、B5サイズで、1Kg前後の重量、バッテリー連続駆動時間が10時間前後というノートパソコンを指す。無線LANスポットの広がりをはじめ、いつでも、どこでも、誰でもというユビキタス環境でパソコンを利用するビジネスマンが増加し、それにあわせてビジネスモバイルパソコンへの需要が拡大しているのだ。
調査会社などの発表では、モバイルノートパソコンという領域が、重量2Kg以下と、やや範囲を広げた形で捉えられている。その観点から見ると、今年度の市場規模は国内165万台前後で、前年比ほぼ横ばいといった状況だ。だが、いくつかのパソコンメーカーに聞くと、1kg前後のビジネスモバイルパソコンに限定した場合には、われわれが思う以上の成長曲線を描いているのがわかる。
この分野をリードするレッツノートを擁する松下電器産業によると、「同社のパソコン事業は前年比20%増で推移している」と好調ぶりを示す。業界全体が約10%増で成長しているのに比べると、その伸び率の高さがわかる。
また、NEC、富士通がその市場の成長性を捉えて、2006年からこの領域に戦略的な新製品を投入することを表明している。企業向けパソコンの5分の1程度の市場規模となっているビシネスモバイル市場は、もはやメーカーにとっても見逃すことができない市場となっているのだ。そのビジネスモバイルの市場において、2006年は2つの要素がポイントとなりそうだ。
ひとつは、耐久性である。
ビジネスモバイルパソコンの選定条件としては、これまでは軽量化と長時間バッテリー駆動の2つが優先されてきた。モバイルで利用するということは、容易に持ち運ぶためには軽量化が必要であり、外出先では長時間利用できるということは、当然の要請だったといえる。
だが、今年はこれに加えて、耐久性が重要なポイントとなる。通勤ラッシュの鞄のなかに入れておいて、その圧力に押されて液晶画面が割れてしまった、あるいは、移動中や使用中に不意にパソコンを落としてしまい、ハードディスクのデータが読めなくなってしまった、という問題が相次いで報告されはじめたからだ。
オフィスや家庭内でほとんど移動させずに利用しているA4サイズのノートパソコンとは異なる要件が、ビジネスモバイルパソコンには要求されるのだ。
もともと耐久性には定評がある松下電器のレッツノートだが、それでもさらなる耐久性向上を追求するため、わざわざ首都圏の朝の満員電車に技術者を派遣し、圧力センサーを体中につけて、どのぐらいの圧力が加わるのかを測定した。その結果、満員電車のなかでは約100Kgの圧力がかかることがわかったという。さらに、この調査では、細かな振動がノートパソコンに加わり、それも液晶画面を割れやすくする要因のひとつになっていたことを突き止めた。同社では、このデータをもとに、擬似的に満員電車の状況を再現できる振動型加圧装置を独自に開発。これによって、耐久性をより向上させるための研究開発を開始したのだ。
こうした研究は、松下電器に留まらない。NECでも、ボンネット型の構造を上蓋部分に採用することで、150kgまでの耐荷重を実現しており、これによって満員電車のなかでの持ち運びに耐えうる構造としている。まさに、メーカー各社において、日本のビジネスモバイル環境に合致した物づくりが進められているといえよう。
もうひとつのポイントは、1月にインテルが発表した次世代セントリーノと呼ばれるNapaプラットフォームをベースにした進化だ。
Napaでは、デュアルコアCPUのYonah(開発コードネーム)と、チップセット、ワイヤレスLANボードによって構成されるプラットフォームを利用したノートパソコンが、今年のノートパソコン市場の中心的な話題となるのは明らかだ。
今回のNapaプラットフォームでは、従来の進化のように性能の大幅な向上だけに留まらず、消費電力の削減という条件もクリアしている。これによって、性能向上と低消費電力の双方を実現し、さらに小型化を実現した製品を開発することが可能になる。当然、ビジネスモバイルの領域にもプラスの効果を発揮することになるのだ。
いずれにしろ、今年の注目ポイントとしてビジネスモバイルパソコンが見逃せないのは明らか。この領域は、ちょっとした台風の目になりそうだ。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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