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2006年3月時点の情報を掲載しています。
大画面・薄型テレビを巡って、国内主要各社が生産設備の大型投資に乗り出している。
プラズマテレビで最大シェアを誇る松下電器は、昨年9月の尼崎工場の稼働に続き、年明け早々には、その隣接地に、新たに第4工場を設置すると発表。1,800億円の投資を行い、2008年には、42インチ換算で年間600万台の生産を行うとした。これにより、松下電器全体での生産能力は、2008年には年間1,100万台に達するという。
液晶テレビでリードするシャープも負けてはいない。今年10月に生産開始する計画である亀山第2工場に、従来の1,500億円の投資に加えて、さらに2,000億円の追加投資を発表した。当初、同工場のフル稼働は2007年末を予定していたが、追加投資により9ヵ月も前倒しして2007年3月には可能になる。
韓国サムスンとの合弁で液晶パネルの生産を行う「S-LCD Corporation」(以下S-LCD)を設立しているソニーも、第8世代の生産設備を導入した新工場を建設する計画が「S-LCD」で浮上。ソニーは、同施設に対して3,000億円規模の投資をするものと見込まれている。同社がソニーパネルと呼ぶ液晶パネルの生産能力を高めることで、北米を中心とした需要拡大に対応していく考えだ。
一方、日立製作所、東芝、松下電器の3社による薄型液晶パネルを生産する合弁会社IPSアルファテクノロジでも、千葉県茂原市に建設していた液晶パネルの新工場を、当初予定から2ヵ月前倒しして、今年5月に稼働すると発表した。
このように各社が薄型テレビ向けのパネル生産で積極的な投資を進める背景には、世界規模での今後の旺盛な需要が見逃せない。その重要なキーワードがアナログ放送の停波だ。徐々に認知が広がってきたように、日本では2011年にアナログ放送が停波し、デジタル放送へと移行する。これに伴うテレビの買い換え需要が見込まれる。日本では、現在約1億台のテレビが利用されているといわれ、その多くが買い換えの対象になるという、テレビ事業においてはカラー化以来ともいえる大変革となる。
この動きは日本だけではない。米国では2009年に、欧州でも2007年から2012年にかけて、順次デジタル放送へと切り替わることになる。そして、デジタル放送受像器への単なる買い換えという需要だけでなく、大画面化、ハイビジョンによる高画質化、薄型化といった要素も、この需要の要素として加わることになる。
ブラウン管テレビでは技術的な問題から、30インチ以上の大画面化は至難の業だったが、プラズマや液晶では40インチ以上の大画面化も可能だ。今年1月に米ラスベガスで開催されたCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショウ)において、松下電器が103インチというプラズマテレビを発表。年内にはコンシューマ市場を対象に販売を開始するというように、驚くべき大画面化も可能なのだ。
米ディスプレイサーチ社の調べによると、2008年には全世界の37インチ以上の大型テレビは、3,000万台に達すると見られているが、一部関係者の間では、これを上回るのは確実とみる声もある。そして、2008年以降も着実に薄型テレビに対する需要は拡大する、というのが多くの業界関係者に共通した意見だ。各社が、パネルの生産設備投資に積極的な姿勢を見せているのも、こうした旺盛な需要に対応する必要に迫られているからなのだ。
だが、その一方で、過剰な生産投資と指摘する声がある。液晶パネルでは、日本の大手電機メーカー以外にも、台湾、韓国勢が生産強化に乗り出しており、競争が激化するのは明らかだ。また、市場が縮小しているブラウン管テレビについては、中南米や東南アジア地域において依然として根強い需要があるほか、北米や中国で人気が高いリアプロジェクションテレビの需要動向や、キヤノンおよび東芝が2007年第4四半期から量産を開始するSED※1といった大画面テレビの、新たな技術に対する関心が高まっていることも見逃せない。
液晶、プラズマ陣営の各社の積極的な投資とともに、リアプロ、SEDといったさまざまな方式が林立している大画面テレビ、そして、根強いブラウン管テレビの需要も含めると、旺盛な需要すらも上回る過剰な設備投資が行われているという試算もできるわけだ。
デジタル家電市場は、「オセロゲーム」と各社幹部が異口同音に語るように、勝ち負けが一気にひっくり返る可能性が強い分野といわれる。そして、勝ち組と負け組がはっきりとする分野でもある。各社が本格的な投資を開始した薄型テレビ市場は、生き残りをかけた本当の争いが始まったといえる。
※1 Surface-conduction Electron-emitter Display
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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