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2006年3月時点の情報を掲載しています。
業務改革・改善のためには、どのようなIT活用の方法があるのだろうか。パッケージ化されたアプリケーションの利用によって、どこまで効率は上げられるのか。あるいは、ビジネス系アプリケーションの使いこなしによって改善が図れるのか。そうした視点から、IT活用について考えていく。今月はワークフローについて考察する。
古くて新しいテーマがワークフロー
パソコンが1人に1台が当たり前になり、インターネットへの接続やイントラネットも整備され、電子メールによるコミュニケーションも促進されてきた。そんな環境にあっても、いまだに多くの中小企業が取り組めないIT活用の課題が、ワークフローとなっている。ワークフローは、その名前が示すように業務の流れをIT化する取り組みになる。紙の伝票や申請書による稟議書、承認申請などを、ネットワークを活用して電子的に効率よく処理するものだ。ワークフローが整っていない企業では、課長や部長の机の上には、INとOUTの二段になった書類入れが置かれ、承認待ちの申請書と捺印後の書類が仕分けされている例が多い。業務の遂行にとって、申請と承認は必須の作業となっているが、経費清算や購買申請のように、円滑な処理が求められる承認が、人的な理由によって滞ってしまうことは、ビジネスの現場では大きなデメリットとなっている。こうした課題を解決するために、ネットワークとパソコンを活用した電子承認、つまりワークフローが求められている。
ワークフローを実現するために必要なITとは
ワークフローを導入するためのITでは、グループウェアが有名だ。ワークフローの基本は、ユーザーとして登録されている利用者に対して、申請者から最終決済者に至るまでの承認者の流れを作ることにある。例えば、電子メールであれば、一度に複数の人たちに同一の申請書を送ることができる。しかし、承認の多くは段階を経て決済をもらうことが多い。課長の次に部長から印鑑をもらう、といった手順だ。そのため、電子メールのような同報送信では、承認プロセスが成立しない。承認の順番をあらかじめ登録しておいて、その順序に合わせて順番に承認をもらっていく仕組みが、ソフトウェアに求められている。もちろん、グループウェア製品の中にも、ワークフローをサポートしているものもあれば、サポートできないものもある。したがって、実際の導入に際しては、ワークフロー機能の有無を確かめておく必要がある。また、グループウェア製品でなくても、単独でワークフロー機能を提供するソフトウェアもある。
ワークフロー導入における注意点
実際に、ワークフロー機能を備えたソフトウェア製品を導入するにあたっては、一つだけ注意する点がある。それは、ユーザー管理の方法だ。これからの企業内ITでは、セキュリティやコンプライアンスといった観点から、これまで以上に厳密な利用者管理が求められる。つまり、ネットワークにログインして、情報にアクセスしたり承認などを行う利用者が、常に一意のユーザーIDで管理されていなければならない。なりすましによるログインや、代理承認などを安易に行えるようなユーザー管理では、日本版SOX法などに抵触する心配もあるのだ。そのため、ワークフロー機能においても、全社規模で厳密に管理されているユーザーIDと連動して、正確に機能する必要がある。ワークフロー機能独自のユーザー管理では、IDの二重化によるミスや漏れが発生する心配があるのだ。
もう一つ、実際の選定にあたって注意するべきポイントは、使い勝手にある。全社的に利用するとなれば、誰でも簡単に手早く使える必要がある。操作が難解で、特殊な教育が必要なシステムでは、導入のために余分なコストがかかるだけではなく、運用後の問い合わせなどでサポートの手間もかかる。機能は少ないとしても、必要最低限の目的が達成できて、ITリテラシーの低い人でも簡単に使えることが、ワークフロー導入を成功させる大きなポイントでもあるのだ。
大塚商会のワークフローソリューション例
それでは、実際にどのようなソリューションがあるのか、いくつか紹介しておこう。
まず、「Advance-Flow」はスピーディな決裁と業務プロセスの標準化を実現する .NET Framework 完全対応のワークフローソリューションだ。Active Directory に対応し、SharePoint Portal Server 2003 用の Web パーツなど、マイクロソフト製品との密接な連携機能を提供している。標準機能としてサンプルフォームを 13 種類添付し、印影など紙帳票のイメージのまま Web 上で入力することが可能になっている。また、オプション製品として、導入後にすぐ使えるフォーム集(50種類)も用意し、早期のシステム化を支援する。
また、情報共有ASPサービス『アルファオフィス』の機能拡張としてワークフローオプションが用意されている。ワークフローオプションは、シングルサインオンにより申請画面から社員情報等へのアクセスなど、シームレスな連携を実現している。また、申請時・最終決裁時のメール通知機能や、1経路に複数人の決裁者を設置可能とする機能なども提供されている。
ワークフローからはじまる経営革新の可能性
企業がワークフローを導入して業務の効率化を図りたいと考える場合、主に経理や総務などの部門からのニーズによることが多い。しかし、ワークフローという業務向けITソリューションには、申請業務の円滑化だけではない、多くのソリューションがある。ひとたび、業務の流れを円滑にコントロールするITが導入されれば、そのワークフローを柔軟に組み替えることによって、申請以外の業務にも利用できるからだ。たとえば、金融業であれば与信管理や信用取引における承認プロセスとして応用できる。流通業であれば、SCM(Supply Chain Management)と組み合わせた人間系の工程管理ツールとして活用することも可能だ。その他にも、医療や公共機関、一般向けサービスなど、申請から承認そして決済へと至る情報の流れをITでコントロールすることは、さまざまな実際の業務やビジネスに結びつくソリューションになる。
これまで、パソコンの1人1台化やオープンなネットワークのインフラが整っていなかったために、1990年代に登場したワークフロー系ソリューションの多くは、その理想を実現することができなかった。しかし、ユビキタス社会が整い、ネットワークも充分に整備されてきた今こそ、かつてのワークフローが目指した理想が、具現化できる状況になってきた。このチャンスをビジネスに活かして、新たな業務の効率化や革新を実現できるようになれば、ITによる企業の競争力は大きく向上する。
もちろん、今後は社内という閉じた世界だけではなく、WebサービスやSOAによるアプリケーション間の相互連携によって、企業間でのワークフロー共有や連携も可能になっていく。こうした広がりと可能性を考えるならば、まずは社内の中にワークフロー基盤を構築しておくことが、重要な取り組みとなる。業務の現場からの視点で導入を行っても効果は発揮できるが、より上位の経営的な判断から、ワークフローを導入することは、多くの企業に求められているテーマといえるだろう。
田中 亘氏
筆者のプロフィール/筆者は、IT業界で20年を超えるキャリアがあり、ライターになる前はソフトの企画・開発や販売の経験を持つ。現在はIT系の雑誌をはじめ、産業系の新聞などでも技術解説などを執筆している。得意とするジャンルは、PCを中心にネットワークや通信などIT全般に渡る。2004年以降、ITという枠を超えて、デジタル家電や携帯電話関連の執筆も増えてきた。
■電子承認システム「Advance-Flow」
業務上の各種申請や承認処理を電子的に行うためのワークフローシステム。右は「Advance-Flow」の申請承認フロー画面。承認フローに沿って自動的に処理されるので、申請・承認が迅速に行える。「Microsoft SharePoint Portal Server」上での電子承認システムを可能にする。
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