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にっぽんの元気人
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目標を「達成する人」と「達成しない人」の違いとは?
一般社団法人日本リーダーズ学会代表理事として、次世代を担うビジネスリーダーの育成に取り組む嶋津良智さん。業績向上に寄与する独自プログラム「上司学」が好評を博し、これまでに世界中で2万5000人以上のリーダーを育て上げた。そんな嶋津さんの近著『目標を「達成する人」と「達成しない人」の習慣』( 明日香出版刊)が話題を集めている。ITベンチャー企業のトップセールスから、起業、株式上場と、次々に目標を達成した嶋津さんが語る、その極意とは?


営業目標ではなく「自分の」目標を決める
BP:嶋津さんの『目標を「達成する人」と「達成しない人」の習慣』を興味深く読ませていただきました。なかでも印象的だったのは、トップセールスマンのご経験もある嶋津さんが、最初は人見知りで、営業が嫌いだったというエピソードです。

嶋津良智氏(以下、嶋津氏):
バブル景気真っ盛りの1987年に社会人になったのですが、ろくに勉強もせず、学校にも行かなかったので、空前の売り手市場だったのに、どこにも採用してもらえませんでした。ある友人から「営業がやりたいと言えば採用してもらいやすい」というアドバイスを受けたので、言われたとおりにアピールしたところ、唯一あるITベンチャー企業の営業職に受かったんです。
 当時は本当に人見知りが激しかったものですから、毎日100件も200件も飛び込み営業をさせられる日々は地獄のように感じました。でも、父の教えもあって「一度就職したからには、どんなにツラくても簡単には会社を辞めない」と決心していたので、だったら「同じ社内でも、営業をしなくていい立場になればいいんじゃないか?」と発想を変えることにしました。
 周囲を見渡してみると、当時所属していた支社にたった1人だけ、営業をしていない人がいました。それは支社長です。それを見て、「そうか、偉くなれば営業に出なくてもいいんだ。それなら自分も支社長になってやろう」という目標を定めました。目標を1年でも1カ月でも早く実現するには、とにかく営業成績を上げて、会社に認めてもらわなければなりません。そこで「営業成績を上げることは、『昇進』という目標達成のための手段なのだ」と割り切ることにしました。
 最終目標が明確になったおかげで、そこに早くたどり着くために営業を頑張ろうというモチベーションが生まれました。おかけでその会社のトップセールスとなり、その後もがむしゃらに頑張った結果、目標であった支社長を経て、最後は営業部長にまでなることができたのです。

BP:仕事そのものの目標ではなく、「自分はこうなりたい」という目標を定めたことが成功に結び付いたのですね。

嶋津氏:
目標を「達成する人」と「達成しない人」の決定的な違いは、そこにあるのではないでしょうか。
 わたしは、自分も含めて世の中の9割の人は凡人だと思っています。仕事の目標だけで頑張れる非凡な人は、おそらく1割もいないはずです。
 ですから「営業成績をこれだけ上げる」という仕事の目標と、「それによって昇進して役職手当が付けば、もっと暮らしがエンジョイできる」といったプライベートの目標をうまく結びつけることが大事なのです。そのほうが、仕事とプライベートの両方とも目標達成に近づくはずですから。
 上司の方々が部下にやる気を持たせ、営業成績を上げたいときも、仕事の目標とプライベートの目標をリンクさせることをアドバイスすると、非常に効果的です。

BP:目標を「達成する人」と「しない人」の違いは、ほかにも何かありますか?

嶋津氏:
自分の物差しだけで物事を判断しないことも重要でしょうね。
 ITベンチャー企業で営業を始めたばかりのころ、同じお客さまに何度も営業を掛けるとしつこく思われるのではないかと思い、訪問をためらっていたことがあります。そのとき、上司からこんなふうに言われました。
「嶋津、商品が安いか高いかを決めるのは誰だと思う?」
「もちろん、お客さまです」
「商品が必要か必要じゃないかを決めるのは?」
「お客さまです」
「それじゃ、セールスがしつこいか、しつこくないかを決めるのは?」
 そう問いかけられて、わたしはハッとしました。言うまでもなく、それもお客さまが決めることだったからです。
 にもかかわらず、自分の物差しだけで判断して、お客さまを訪問することをためらっていたのでした。大切なのは、「自分の価値観」と「目標を達成するための価値観」を分けて考えること。「人に迷惑をかけるのは嫌だ」というのは、あくまで自分の価値観にすぎません。それは一度脇に置いて、「営業目標を達成するには、何をすべきなのか?」という視点で仕事に取り組んでみるといいと思います。


成果が上がらないときは「方向」「方法」「量」を見直す
BP:その後、嶋津さんはITベンチャー企業を中途退職してご自分の会社を設立。
さらに株式上場まで果たされました。設立したのは情報通信機器の販売会社だったそうですが、本誌読者にも同業の方々が大勢いらっしゃいます。営業で成功するためのアドバイスをいただけないでしょうか?

嶋津氏:
営業が思うようにうまくいかないと感じたときは、「方向」「方法」「量」の3つが間違っていないかどうかを確認してみることをお勧めします。
 「方向」は訪問する相手、「方法」は営業の仕方、「量」は訪問する適正な回数。このどれかひとつでも間違っていたら、営業はうまくいかないものです。
 例えば、「方向」や「方法」は正しくても、適正な訪問回数、すなわち「量」をこなさないと、営業目標はなかなか達成できるものではありません。
 なぜなら、訪問回数が少ないと、その分、目標が達成できる確率も下がってしまうからです。
 逆に、「量」は十分でも、「方向」や「方法」が間違っていると、成約率はなかなか上がりません。ですから、「方向」「方法」「量」のすべてが間違っていないかどうかを確かめることが大切なのです。この3つがそろっていれば、営業成果は絶対に上がるという信念を持っています。

BP:もしも3つのうちどれも間違っていないときは、どのように軌道修正を図ればいいのでしょうか?

嶋津氏:
その場合は、自分の「習慣」「時間の使い方」「コミュニケーションの取り方、取る相手」を見直してみることをお勧めします。
 例えば「習慣」。人間は知らないうちに、つい余分な仕事を自分で増やしてしまう傾向があります。セールスマネージャーや経営者を長くやってきたのでよくわかるのですが、人は忙しくしていることを他人に見せるために、つい、しなくてもいい仕事をつくってしまうのです。そうした無駄な「習慣」をなくして、もっと合理的に動けるようにしたほうがいいと思います。
 また、「時間の使い方」を工夫すれば、仕事の動きに無駄がなくなりますし、お客さまへの訪問回数を適正化するのにも効果的です。

BP:嶋津さんは、どのような「時間の使い方」をされているのでしょうか?

嶋津氏:
普通、人は予定が決まってから行動するものですが、まず行動する「時間割」を決めてから、そこに予定を組み込むようにしています。
 例えば、火曜の12時から14時までは「ランチミーティング」、14時から16時までは「商談」といったように、あらかじめ毎日の行動内容を決めておき、実際の予定が決まったら、その枠にはめ込むのです。
 なりゆきでスケジュールを調整していると、つい時間管理がルーズになってしまうものです。
 その点、あらかじめ行動の「時間割」を決めておけば、動きに無駄がなくなり、1日や1週間、1カ月、1年をもっと有効に使えるようになるはずです。
 また、「時間割」をつくるだけでなく、そこに入れる予定の優先順位もしっかりと決めています。
 目標を達成したいのであれば、そのために必要な予定を最優先するのが重要なポイントです。

BP:「コミュニケーションの取り方、取る相手」については、どのような点をチェックすべきですか?

嶋津氏:
営業成績が上がらないとき、誰に相談しているのか、どんなふうに相談しているのかといったことを振り返ってみてはどうでしょうか。
 適切なアドバイスを受けられる人かどうか、そもそも相談する内容が要領を得ているかどうかといったことは非常に重要です。
 また、あなたが上司であれば、部下に仕事をさせるときに、どのようなコミュニケーションを取れば成果を上げてくれるのかを考えてみてください。
 コミュニケーションの話からはちょっとそれますが、部下に営業の仕事をさせるためには、同僚や後輩とペアで回らせるのも方法です。1人で営業回りをすると、ついさぼってしまいがちですが、2人で回るとなるとそうはいきませんからね。
 ただし、仲がいい部下同士だと一緒にさぼってしまうこともあるので、仲のよくない部下同士をあえてペアにしたほうがいいかもしれません。
 むしろ仲がよくないほうが、互いに意識し、競争し合って営業成績を上げてくれるのではないかと思います。


つねに最悪の事態を想定しながら行動する
BP:そのほか、上司として、部下の営業成績を上げるためのアドバイスがあれば教えてください。

嶋津氏:
新しいことへのチャレンジを求めたときに、つい「できない」「知らない」と尻込みする部下もいると思います。そういう意識を持たせないようにすることも大切ですね。できないことは、できるようになればいいわけですし、できる人にやってもらう方法もあります。同じように、知らないことは誰かに聞いたり、自分で調べればいいわけです。
 「できない」というネガティブな発想ではなく、「どうすればできるか」というポジティブな発想を持たせるべきだと思います。ただし、ポジティブといっても、何も考えずに能動的な行動を取るのは、むしろ逆効果です。動き出す前に、必ず、動くことによるリスクを考えさせること。それも最悪の事態を想定させて、それが現実に起こった場合の対策までを決めてから動き出させることが肝心です。
 何も考えず、やみくもに動き出したら、想定外の事態が発生したときに、そこで壁にぶつかってしまいます。
 しかし、はじめから最悪の事態を想定して動き出せば、どんな状況に陥ってもしっかりとリカバリーできるものです。営業成績を上げることができるのは、言うまでもなく後者です。
 そうしたことを上司として部下にアドバイスしてあげれば、人も組織もたくましく育つのではないでしょうか。

BP:最後に、本誌読者にメッセージをお願いします。

嶋津氏:
アベノミクスや2020年東京五輪の開催決定によって、今後、日本の景気はきっとよくなるはずです。ビジネスも大胆に動いていい時期ではないでしょうか。
 しかし、いい時期の後には、いずれ悪い時期がやってきます。果敢に攻めることは大事ですが、将来に備えて守りもしっかり固めておくべきでしょう。
 リスクを抑えれば、損失が減って、結果的に業績は右肩上がりになります。
 繰り返しになりますが、発想はポジティブでも、つねに最悪の事態を想定しながら動くことをお勧めします。

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一般社団法人日本リーダーズ学会代表理事
早稲田大学講師
嶋津 良智氏
Yoshinori Shimazu

◎ P r o f i l e
1965年東京生まれ。大学卒業後、IT系ベンチャー企業にてトップセールスマンとして活躍。24歳の若さで最年少営業部長に抜擢。就任3カ月で担当部門の成績が全国ナンバー1になる。その後、28歳で独立・起業し代表取締役に就任。翌年、情報通信機器販売の新会社を設立。3年後、出資会社3社を吸収合併、6年目に株式上場(IPO)を果たす。2005年、次世代リーダーを育成することを目的とした教育機関、株式会社リーダーズアカデミーを設立。2007年シンガポールへ拠点を移し、独自プログラム「上司学」により世界中で2万5000人以上のリーダー教育に携わり、講演・企業研修・コンサルティングを行う。2013年日本へ拠点を戻し、一般社団法人日本リーダーズ学会を設立。 世界で活躍するための日本人的グローバルリーダーの育成に取り組む。






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