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2008年1月時点の情報を掲載しています。
Web 2.0、SaaS、Cloud Computing、最近よく耳にするこれらのキーワードに共通するのは、アプリケーションをサーバ側に、データをデータセンター側に、それぞれ移動させたいという思惑だ。現在のコンピューティング環境は、主要なアプリケーションがPC上で稼働し、PCのハードディスクにデータが記録される。これをすべてユーザーの手元にあるPCから排除しようというわけだ。
こうした動きの背景には、インターネットに代表される高速ネットワーク技術の発達と、毎日のように報道されるセキュリティの問題がある。高速なネットワークを利用し、サーバ側で大半の処理を行ってしまえば、ユーザーが操作する端末は必ずしも高性能である必要はない。むしろ端末を簡素化することで、ソフトウェアのバージョン管理やユーザーサポートといった業務を軽減することができる。
その一方で、クラッカーやマルウェアといったコンピュータ犯罪や、PCの盗難や置き忘れによるデータの漏えい・紛失は、大きな社会問題になりつつある。これを防ぐには、管理が行き届かなくなりがちな末端のPCにデータを置かなければよい。データを持たず、アプリケーションを実行せず、サーバへアクセスするブラウザとネットワークさえ利用できれば、端末は何でもいい、という発想だ。
こうしたユーザーにとっての利点と同時に、これは決着がついてしまった感のあるPCというプラットフォームから、産業をシフトさせたいというIT企業の思惑でもある。現在ITの主流となっているPCの骨格は、x86プロセッサとWindowsの組み合せであり、富はこの2つを支える2社、IntelとMicrosoftに集中しがちだ。従来型のコンピューティングモデル、言い換えれば2社が勝利をおさめている戦場に、のこのこ出て行っても、互換性という武器であっさりと返り討ちになるのは分かっている。コンピューティングの主役をサーバに移すことで、新しい戦いやすい戦場で戦いたい、という思惑は当然あるだろう。
そもそも1980年代にPCが誕生したのは、ユーザーが自由に使える計算機が欲しい、というニーズからであった。当時のITの主流であるメインフレームコンピュータによるコンピューティングは、厳重に管理されており、ユーザーの自由を許容しなかった。サーバベースのコンピューティングは管理が容易な反面、管理過多になりがちだ。しかし四半世紀を経てPCの自由は、時に行き過ぎだと見られている。PC(クライアント)ベースのコンピューティングは、ユーザーの自由が確保されるものの、放任になりがちでもある。
今、コンピューティングの中心をサーバ側にシフトさせようという動きが顕在化しているのは、企業ユーザーの管理への要求、IT企業が望むパラダイムシフトの欲求がマッチしているからだ。管理から自由へ、そしてまた管理へと振り子は触れるのだろうか。
元麻布春男
IT系雑誌やインターネットのコラムなどで広く活躍するフリーライター。
執筆歴は15年以上におよぶ。1960年生まれ。
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