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| 2006年11月21日に実務上のガイドラインとなる「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準（公開草案）」（以下、実施基準案）が公表された。待ちに待った実施基準案だが、導入の仕方次第で事務負担の大幅な増加も予想される。今号では、Phase3として、実施基準案の要求を踏まえて、評価対象となった業務プロセスレベルの内部統制の可視化と評価について解説する。 Phase1で説明したように、全社レ ベルの内部統制は「チェックリスト」、 業務プロセスレベルの内部統制は「い わゆる3点セット」※1を用いるのが一 般的な方法である。 この3点セットを効率的に作成する 内部統制の文書化手技法として「業務 プロセスアプローチ」を紹介する。業 務プロセスアプローチとは、業務プロ セスチャート上にリスク・コントロール マトリクス（RCM）と、業務記述書の内 容を反映させる文書化技法である。 業務プロセスチャ−ト上でリスクに対 するコントロールの効き具合をビジュ アルに把握することが可能となる。 業務プロセスに係る内部統制の評 価について、実施基準案は下記のよう に要求している。今号では、要求内容 の1と2について、それぞれ実施基準 案の‘勘どころ’を踏まえながら‘実務的 な対応方法’を解説する。
 実施基準案では、業務プロセスの 概要については、必要に応じ図や表 を活用して整理・記録することが有用 であるとし、その参考例として、「業務 の流れ図」、「業務記述書」を示してい る。そこで、「業務プロセスアプローチ」 に基づいて、業務プロセスを把握・整 理する手技法を解説する。 （１）業務プロセスの捉え方 業務プロセスは、図表1のように 階層的に構造化して捉える。最上位 レベルの業務プロセスがレベル0で あり、内部統制の評価対象範囲とし て選定された事業と外部取引先との 関係を表現している。対象事業の内 部を1段階ブレークダウンした業務 プロセスがレベル1であり、主要な 業務機能の連鎖で表現する。これを さらに詳細化したものがレベル2で ある。例えば、レベル1の「商品を 発注する」という業務機能をさらに ブレークダウンし、詳細に業務の流 れを描いたものがレベル2の業務プ ロセスである。詳細化にあたっては、 発注業務機能をさらにいくつかの業 務（「仕入先選定」「縫製発注」「付属 品発注」「付属品納品管理」等）にく くり、そのくくりごとに業務プロセ スを描く方が整理しやすい。 （２）最上位レベルの業務プロセス （レベル0） 対象事業に関する最上位レベルの 業務プロセス（レベル0）をモデル化す る。 図表2は、内部統制の評価対象範囲 としてアパレル（卸・小売）事業を選定し た事例を示している。まず、アパレル事 業を中央に位置づけ、その事業と関わ りのある外部の関係先（得意先、仕入 先、銀行等金融機関等）をその周りに 配置する。次に、アパレル事業と外部 の関係先との間にどんな関係があるの かを明確にする。この表現方法として は、四角形と矢線を使用する。物のや り取りは太矢線、帳票も含め情報のや り取りは細矢線、現金等のやり取りは 点線矢線を使用し、各矢線上に具体的 な情報等の名称を記述する。 図表2のアパレル事業と主要な外部 の関係先との関係は、右のように表現 されている。 このように、レベル0を作成し、対象 事業と外部の取引先との関係を明示 することによって、対象事業の範囲と業 務の流れが概括的にとらえられるよう になる。 （３）対象事業を一段階詳細化した業務 プロセス（レベル1） アパレル事業の内部を大きく「業務 処理プロセス」と「会計処理プロセス」 に分けて一段階ブレークダウンする。 その業務プロセスがレベル1である。 15〜20程度の粗さを目安にアパ レル事業の業務機能を洗い出し、管轄 する部門の領域内にその業務機能を 配置し、業務機能間の関連を矢線で 結んでいく。その際、レベル0で記載 した外部の関係先も漏れなく配置し、 矢線で結ぶことになる。なお、事業が 複数ある場合は、原則としてその数だ けレベル１業務処理プロセスを作成す ることになる。（図表3） 次に会計処理プロセスを説明する （次頁図表4）。これは基本的に事業ご とに異なるものではなく、複数の事業 が評価対象範囲になった場合でも、一 つ作成しておけば足りる。ポイントは、 中央に「総勘定元帳管理」の業務機能 を配置し、そこに各種会計データが集 約されてくるように他の業務機能を配置することである。 また、「総勘定元帳管理」から会計 データが「連結決算管理」と「開示 業務管理」にデータが転送されてい る。この3つの業務機能をまとめて、 実施基準案では「決算・財務報告プ ロセス」と呼称している。?総勘定 元帳に取引合計を入力する手続、? 連結修正、報告書の結合・組替など の年次報告書作成のための仕訳とそ の内容を記録する手続、及び?年次 財務諸表に関連する開示事項を記載 するための手続の3つである。 こうした「決算・財務報告プロセス」 は全社レベルの内部統制に準じてす べての事業拠点について全社的観点 から評価するものと、他の業務プロセ スと同様に3点セットを作成して評価 するものに区別される。例えば、連結 会計基準の統一やグループ方針等が 前者に相当し、一方、後者としては、決 算数値の集計手続や連結パッケージ の入手などが考えられる。 （４）対象事業を二段階詳細化した業務 プロセス（レベル2） 通常、レベル1の各業務機能は一つ 以上のサブプロセスから構成され、そ の各サブプロセス単位でレベル2の業 務プロセスを描くことになる。 実施基準案では、すべての業務プロ セスを評価する必要はなく、評価範囲 として絞り込まれた業務プロセスを評 価すれば足りる。レベル2の業務プロ セスを対象に評価範囲に含まれるか否 かの検討を行うことになる。 例えば、「商品を発注する」、「商品を 入荷する」というレベル1の業務機能 を、レベル2として各サブプロセス単位 に整理すると図表5のようになる。 図表6は、レベル2の「商品入荷」 という業務プロセスが、評価対象範 囲として選定されたと仮定して、「業 務プロセスアプローチ」に基づいて、 業務プロセスを把握・整理している。 
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 南 成人 氏 1985年立命館大学経済学部卒業。東京北斗監査法人で監査や株式公開指導、内部統制導入支援に従事。最近では、BPRで培ったノウハウを背景に、企業の日本版SOX法対応の支援を主業務として活躍。2002年チャールズウェインコンサルティング株式会社設立 代表取締役、2004年日本公認会計士協会 監査基準委員会委員を務める。1986年からTAC株式会社公認会計士試験講座講師を務めている。 ■図表1 業務プロセスの捉え   ■図表２ レベル0（アパレル事業の例） 
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