大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
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2008年5月時点の情報を掲載しています。
パーソナルコンピュータの歴史は、高性能化の歴史であるとともに、低価格化の歴史でもある。いや、高性能化と低価格化が同時に展開されてきた、という方がより正確かもしれない。当初は100万円を超えるのもそう珍しいことではなかったパーソナルコンピュータの、今の売れ筋はディスプレイ込みで10万円前後だ。ここまでくると、コストの多くは筐体や電源、ソフトウェアライセンス、さらには流通コストやサポート費用など、これ以上削るのが難しい経費で占められ、大幅な値下げは困難だと思われてきた。
しかしここにきて、ふたたびPCの低価格化が図られようとしている。Intelは、インターネット接続によるWebアプリケーションの利用を前提とした、新しい低価格PCのプラットフォームとしてデスクトップPC型のNettopと、ノートブックPC型のNetbookを提唱、これらのプラットフォーム向けに新しいプロセッサブランド「Atom」の立ち上げを行った。Nettop/Netbookが目指す価格帯は、500ドル以下の低価格層で、当初は途上国向け、中でも教育市場を強く意識していた。
ところが、Netbookのプロトタイプとも考えられる低価格PC(ASUSのEeePC、EverexのCloudbookなど)が、日本や北米といった「成熟市場」で、思わぬヒットとなり、様子が変わってきた。500ドル以下の低価格を実現することで、2台目需要を喚起できることが判ったのである。この市場に対応するべく、Microsoftも最新のWindows Vistaより、少ないリソースで利用可能なWindows XP Homeの販売延長を決めるなど、低価格PCは大きな流れになりつつある。
Nettop/Netbookが従来の低価格PCと異なるのは、最初から低価格を前提にコストの積み上げを行っていることだ。そのために削れるものは、ドンドン削る。従来のアプローチが、PCとしての機能や性能を維持したまま、いかに低価格を実現するか、というものだったとすれば、Nettop/Netbookは機能や性能を削っても低価格を実現しようというアプローチだ。ストレージ容量は限られているし、メモリ容量も少ない。自ずと利用範囲は限られるが、PC利用の重心がインターネットにシフトした結果、ユーザーは必ずしも1台のPCにすべての機能、最新の技術を求めなくなっている。
Intelがその心臓部にと考えるAtomプロセッサは、低価格と低消費電力を第一に、新規開発された。ある程度性能を犠牲にしてもトランジスタ数を減らしてダイ面積を縮小し、製造コストと消費電力を切り詰める。一般的なPCで使われるプロセッサより一桁少ない4,700万トランジスタで、4分の1程度に過ぎないダイ面積(24.2平方ミリ)を実現したAtomプロセッサは、1枚の半導体ウェハから最大2,500個とることが可能だ。
同時に、その最大消費電力は0.65W〜4W程度と格段に低い。これなら冷却ファンのないパッシブヒートシンクで済ませることもできる。冷却ファンを省略できれば、単純にその分のコストを削減できるだけでなく、筐体の小型化、流通コストの低減など、その効果はさまざまなところへ波及する。
Intelをはじめ、低価格PCを推進するベンダーは、低価格PCが既存のPCとは異なる新たな市場を切り開いてくれると期待している。それは『EeePC』など、初期の低価格PCには当てはまっていることだが、果たして本当に既存のPCと同じ市場で食い合うことにならないのか。本格展開が始まる今年の後半が注目される。
元麻布春男
IT系雑誌やインターネットのコラムなどで広く活躍するフリーライター。
執筆歴は15年以上におよぶ。1960年生まれ。
【IT Trend Watch】
・第2回 次世代光ディスク規格戦争の真の勝者とは? 【Vol.37】
・第1回 SaaS化の隠された思惑 【Vol.36】
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