サーバ統合の必要性が指摘されるようになって久し い。しかし、サーバ統合にともなう物理的な諸問題 に頭を悩ませ、足踏みをしてきた中堅・中小企業は 多いのではないだろうか。折しも6月末より、マイク ロソフトが『Windows Server 2008 Hyper-V』 正式版の提供を開始したため、2008年秋は、ブレ ードサーバと仮想化ソフトウェアによるサーバ統合 が、一大トレンドとなることが予想される。販売店の 皆様はこうしたトレンドを踏まえつつ、お客様にブレ ードサーバと仮想化ソフトウェアによるサーバ統合 を提案していただきたい。 |
サーバ統合の必要性が指摘されるようになって久しい。サーバ統合や集約化を、比較的小規模の運用環境の企業においても、計画や検討、関心を示す傾向にある(表1)。
ここで改めてサーバ統合のメリットを考えてみる。サーバ統合とは、企業内ネットワークに分散配置されているサーバを、物理的、あるいは論理的に統合することだ。1980年代までの企業内システムは、大規模ホストコンピュータと専用端末による閉鎖的なものだったが、コンピュータの性能が飛躍的に向上し、UNIXやWindows OSが普及した1990年代に、企業内システムは事業拠点、あるいは部門ごとに分散配置され、相互接続されるようになった。
こうしたオープン系のシステムは、それまでの大規模ホストコンピュータを中心とする閉鎖的なシステムに比べて、システムの拡張が容易であり、コンピュータの性能向上と低価格化に後押しされて、サーバの分散配置は一気に加速した。また、当時は企業内ネットワークのスピードが現在ほど高速でなかったため、サーバの分散配置によりネットワークの負荷分散ができるメリットもあった。このようにしてサーバの分散配置はトレンドとなり、現在でも多くの企業が、事業拠点ごと、あるいは部門ごとに分散配置されたサーバを利用している。
しかし今日、分散配置されたサーバによる弊害が指摘されるようになっている。指摘されている弊害のうち最大のものは、TCO(総保有コスト)の増大だ。いくらコンピュータが性能向上とともに低価格化しているといっても、事業拠点、部門ごとにサーバを導入し、保有台数が増加すれば、TCOは増加する。下表を見て欲しい。社内のサーバ設置台数が5〜10台程度の企業においても、半数がサーバの統合・集約化に、「具体的に検討/考慮」ないし「関心はある」と回答している。
これらの問題を解決する方法として、サーバ統合の必要性が指摘されているのだ。サーバ統合がもたらすメリットは、第一にTCOの削減であり、第二にシステムの信頼性やセキュリティレベルの確保が挙げられよう。
では、次にサーバ統合への具体的なアプローチについて考えていく。サーバ統合には、物理統合と論理統合という2種類の方法がある。物理統合は、事業拠点ごと、あるいは部門ごとに分散配置されたサーバを、物理的に1ヵ所に集約して運用することである。それに対して、論理統合というのは、分散配置されたサーバはそのままに、あたかも論理的に1ヵ所に集約されたサーバであるかのように運用することを言う。サーバの論理統合については、後段の仮想化で考えることにしたい。
事業拠点ごとや部門ごとに、分散配置されていたサーバを物理的に統合するためには、大きく2つの方法がある。第一の方法は、データセンターを利用して、分散配置されていたサーバを統合する方法だ。この方法のメリットはシステムの信頼性やセキュリティレベルが高いことだが、コストがかかるというデメリットがある。
データセンターを利用する方法は、コストの問題を無視すれば、災害対策やBCP(事業継続計画)の観点からは望ましいが、サーバ統合で実現したい目的が、TCOの削減であるなら、お客様に対してデータセンター利用を提案しにくい。データセンターを利用することによって、TCOが増大してしまっては本末転倒である。
第二の方法が、社内にサーバルームを設けて、分散配置されていたサーバを統合する方法だ。この方法のメリットは、データセンター利用に比べて安価にサーバ統合ができることだ。デメリットとして、システムの信頼性やセキュリティレベルを一定の水準以上に保つためには、システム管理者にそれなりの負荷がかかる。
社内にサーバルームを設ける方法を採る場合、気を配らなければならない点がたくさんある。たとえば、電源の問題(サーバの多くはオフィスで一般的に用いられる100V電源ではなく、200V電源が多い)、温度管理の問題(サーバの発熱により室温が上昇しやすいため、サーバを安定稼動させるためには、空調装置によって室温を適切に管理する必要がある)、床の重量制限の問題(過大な床荷重がかかるため荷重に耐える床工事が必要)、入退室管理(セキュリティ)の問題などに気を配る必要がある。
これらのメリットとデメリットを見極めて、お客様の事業規模や、システムの規模に応じて、最適な提案を行う必要がある。
こうしたサーバ統合におけるさまざまな物理的な問題は、積極的にビジネスのチャンスとしてとらえたい。サーバ統合には上記のような物理的な諸問題がともなうが、言い方を替えれば、コンサルティングの需要がある、ということでもある。販売店の皆様は、データセンター、社内サーバルームを問わず、上記のようなサーバ統合における物理的な諸問題をお客様に十分説明し、最適なコンサルティングサービスを提供していただきたい。
以上を前提として、サーバの物理統合の方法について、引き続き考えてみる。データセンター、社内サーバルームを問わず、サーバの物理統合において、現在、有効な方法として注目されているのが、ブレードサーバの導入だ。ブレードサーバは、ラックマウント型のサーバよりも、さらに密度の高いサーバだ。
これまで主流となっているラックマウント型サーバは、幅19インチ、高さ1.75インチを1U(ユニット)とし、U単位で規格化されている。これまでは、このようなラックマウント型サーバが主流であったが、サーバが高性能化し、サーバの大量導入の必要性が生じるにつれて、最も高さの低い1Uラックマウント型サーバでも、スペースを取りすぎる、という問題が指摘されるようになった。
そのような問題を解決するのが、ブレードサーバだ。ブレードの高さはU単位で設計されており、用途に応じて3Uから10Uまでの専用エンクロージャが用意されている。たとえば、『HP BladeSystem c7000』の場合、10Uサイズのエンクロージャに最大16枚のブレードサーバを差し込んで使用することが可能だ。ただしブレードサーバは、サーバベンダの製品に互換性がないことに留意しておかなければならない。
サーバベンダの製品は、エンクロージャ側に冗長化(二重化)された電源と冷却用ファンを備えるもの、イーサネット、ファイバーチャネルなど各種ネットワークインターフェイスを備えるもの、管理コンソールや、バックアップのためのDVD-RWドライブを備えるものなど、それぞれ工夫されており、これらの機能を活用することで、従来のラックマウント型サーバよりも、高密度のサーバ群を、従来の19インチラックに構成することが可能となる。
特に最近は、中堅・中小規模の事業所でも導入しやすいブレードサーバが用意されている。100V電源を使用できるタイプや、ストレージシステムもケースに内蔵することができるタイプ、冷却用ファンの騒音や排気に配慮し、専用サーバルームを持たない事業所でも導入しやすいタイプなどが、サーバベンダから発売されている。現在、日本ヒューレット・パッカードの『HP BladeSystem』、日本アイ・ビー・エムの『IBM BladeCenter』、NECの『SIGMABLADE』、日立製作所の『BladeSymphony』などがある。
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■表1 サーバ統合・集約化についての考え・対応方法
■表2 サーバ統合の方法
■表3 サーバ統合を実施する際、統合するプラットフォーム
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