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巻頭特集 文教ソリューションの勘どころ
2008年3月時点の情報を掲載しています。

少子化の影響により、公立学校では統廃合が各地で行われるようになり、私立学校は生き残りをかけた熾烈な競争を強いられている。大学への入学希望者総数が全大学の入学定員総数を下回る「大学全入時代」が到来するともいわれている。だが、こうした厳しい状況下でも、ITを効果的に活用した教育や校務を実践し、他校との差別化を図って大きな成果を収めている学校もある。その意味では、教育現場の課題を解消し、学校教育の充実や校務の効率化につながるシステムを提案できれば、教育市場におけるビジネスチャンスは大きく広がるはずだ。そこで、販売パートナー様の教育市場へのアプローチを支援するため、日本の教育現場におけるIT活用の課題にフォーカスし、文教ソリューションのシステム提案のポイントをまとめた。


教育現場における IT化の現状と課題
現在、国のIT活用支援プロジェクトなどにより、教育現場でもパソコンやインターネットなどのIT利用環境が急ピッチで整備されており、コンピュータを利用して教科指導が行える教員も以前よりも増えている。しかし、実際の授業や校務でITを効果的に活用できているかというと、必ずしもそうではないようだ。教育現場ではまだ乗り越えなければならない課題も多い。


人材育成・教育面における IT活用の現状の課題
 IT化の波が地球規模で急速に進展している中、日本が引き続き国際競争力を持ち続けていくためには、次世代を担う子どもたちが、初等・中等教育の段階からITに触れ、情報活用能力を向上させる環境整備を進めていくことが重要である。しかし、これまで学校では、各種IT機器の整備が推進されているものの、教員用コンピュータ整備の不足、校務のIT化の遅れ、学校のIT機器の保守・点検などを行う人材不足などの問題があり、学校現場のIT化による改革が十分に進んでいるとはいえない。そのため、今後は、学校におけるIT環境の一層の整備を進めると共に、ITを活用した学力向上などのための効果的な授業の実施や、学ぶ意欲を持った子どもたちがITを活用して効果的に学習できる環境の実現などが期待されている。だが、そうした環境を整備するためには、教員のIT活用能力を一層向上させるとともに、優良な教育用コンテンツの整備を進めていく必要がある。さらに、昨今では、インターネット上の違法・有害情報に起因する問題が相次いで発生している。学童期から情報内容を判断できる能力が必要とされてきており、情報モラル教育をはじめとする情報教育の見直しを図り、初等・中等教育の段階から児童や生徒の情報活用能力を向上させていくことが求められている。
 そこで、内閣府は、2002年に策定した「e-Japan2002プログラム」の見直しを図り、2006年に「IT新改革戦略」を策定した。その中で、次世代を見据えた人的基盤づくりに向けた目標と方策を明記し、教育現場におけるIT活用を力強く後押ししている。


「IT新改革戦略」による 学校のIT利用環境の支援とは? 「IT新改革戦略」は、「いつでも、どこでも、誰でも、ITの恩恵を実感できる社会の実現」をスローガンに掲げ、それを実現するためのIT政策の重点項目などが明記されている。これは、小泉内閣時代に策定された「e-Japan2002プログラム」を加速・推進するために、改めて現状のIT活用の課題と解決策をまとめたものである。
 もともと「e-Japan2002プログラム」では、学校教育の情報化を推進するために、@学校のインターネット接続のADSLや光ファイバーなどへの切り替え推進、A多様な教育用コンテンツの充実・普及及び教育用ポータルサイトの充実、B教員のIT指導力の向上という3つの目標を掲げて取り組みがスタートした。そして「IT新改革戦略」では、教育現場におけるIT活用をさらに加速させるために、5つの具体的な方策を明示している。
 第一に、2010年度までにすべての公立校などの教員にひとり1台のコンピュータを配備し、学校と家庭や教育委員会との情報交換の手段としてのITの効果的な活用と、さまざまな校務のIT化を積極的に推進すること。また、校内LANや普通教室のコンピュータなどのIT環境整備について早急に計画を作成して実施するとともに、学校における光ファイバーによる超高速インターネット接続などを実現する。
 第二に、小・中・高等学校などにおいて情報システム担当の外部専門家(学校CIO)の設置を推進し、2008年度までに各学校においてIT環境整備計画を作成するなど、IT化のサポートを強化すること。
 第三に、2006年度までに教員のIT指導力の評価基準を明確化し、それに基づいてITを活用した教育に関する指導的教員の配置や、教員のIT活用能力に関する評価をその処遇へ反映することなどを促進することにより、すべての教員のIT活用能力を向上させる。
 第四に、2006年度までにITを活用した、わかりやすい授業方法や、児童生徒の習熟度に応じた効果的な自習用コンテンツの開発・活用を推進し、教科指導における学力向上のためのITを活用した教育を充実させる。
 第五に、IT社会で適正に行動するための基となる考え方と態度を育成するため、情報モラル教育を積極的に推進するとともに、小学校段階からの情報モラル教育のあり方を見直す。
 実際、こうした国の方策などにより、教育現場におけるIT利用環境は急速に整備されつつある。公立の小・中・高等学校などにおける教育用コンピュータの整備は、平成18年度には児童・生徒7.6人に1台となり(図表1)、平成18年度における公立学校のインターネット接続率は99.9%に達し、ほぼすべての学校がインターネットに接続している(図表2)。さらに、コンピュータを利用して教科指導が行える教員は、平成14年度の52.8%に対して平成18年度は76.8%に増加している(図表3)。
 しかし、たとえIT利用環境が整備されていても、実際にITを活用した効果的な教育が行われているとは限らない。教育現場では、まだ乗り越えなければならない課題も多い。


識者が語る 教育現場の実情と課題 2008年2月22日に開催された「学校を変革する地域教育ネットワークセミナー」(主催/社団法人日本教育工学振興会)において、教育現場へのICT(lnformation Communication Technology)導入に関する最新動向の報告が行われた。その中で、独立行政法人メディア教育開発センター教授の中川一史氏は、教育現場でICT活用が進んでいない主な理由として、次の3点を挙げている。
 @ICT機器の活用目的やビジョンが明確でない。
 AICT機器のセッティングに手間がかかる。
 BICT機器の活用を推進するキーパーソンがいない。
 「教育現場ではLL教室やパソコン教室が整備され、パソコンを使用して指導できる教員も増えています。ところが、パソコンなどのICT機器を活用した授業のビジョンを持った人材が少ないのが実情です。そのため、せっかくICT機器を導入していても、たとえばプロジェクタの配線がわからずにセッティングに手間取るため、あまり使われていないケースもあります。また、企業ではパソコン利用が常識の今、教育現場では『パソコンが使えません』がまだ通用し、許容される環境にあります。したがって、こうした問題点を解消するためには、ICT機器の活用目的やビジョンを明確にしたうえで、いつでも使える環境にして、活用を推進する情報担当リーダーを決めておく必要があります。特にICT機器を使わないと不便であるということを理解させることが重要ですね」と中川氏は指摘する。
 さらに、同セミナーの中で鳴門教育大学大学院准教授の藤村裕一氏は、「文部科学省の調査で、昭和41年と比較して教員の勤務時間の増加が顕著になっています。通常の勤務時間内では、生徒指導時間や学校経営に関する事務的業務の処理時間が増加しており、授業準備や成績処理が、勤務時間外や自宅に持ち帰って行われている」と教員の勤務実態を報告する。その上で教員の事務負担を軽減するためにも、ICTを活用した校務情報化をより一層推進していく必要性を説く。「ところが、教育現場では、校務情報化を推進するうえで、@予算がない、A人がいない、Bビジョンがないという3つの問題点を抱えており、例えば、必要なプリンタのインクや磁気メディアなどの消耗品費の予算が削られる」と校務情報化の問題を挙げている。
 私学においても、教育現場の実情はそれほど変わらないようだ。私学経営の支援や教育研究の相談を行っている私学経営活性化協会専務理事の嶋倉英一氏は、「私学におけるIT化は、大都市圏に立地する大手の私立大学など資金力があるところから整備されています。大半の私学は、校内の情報化の必要性は十分認識されているものの、ITを導入するための資金が不足しているのが実情です。ただ、以前に比べると、パソコンなどの情報機器はかなり整備され、パソコンを使って教えられる指導力を持った人材も増えてきました。そのため、ハードウェアと人材の問題は充足しつつあります。次の課題は、教育現場でいかにIT機器を有効活用していくかということです」と私学における現状の課題を指摘する。
 このような文教分野の現状とIT課題に取り組んでいる事例を次頁から見ていく。

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■IT利用環境の推移@
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■IT利用環境の推移A
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■図表4 今後重要になると考えられるIT関連事項
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【巻頭特集】

・中小・中堅企業に必要なリスク管理と情報管理の処方 【Vol.36】

・AC100V電源対応により、オフィスに設置できるブレードサーバが登場
スモールスタートではじめるブレードによるサーバ統合 【Vol.35】


・Linuxサーバ向けHAクラスタソフトウェアの決定版! LifeKeeper for Linux 【Vol.34】

・コスト削減だけではないVMwareサーバ仮想化製品の導入メリット 【Vol.33】



 
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