大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。  
BPNavigator to Go Index Backnumber BP PLATINUM
にっぽんの元気人
2010年5月時点の情報を掲載しています。

「あの人から買いたい」と思われる信頼関係で最高の「営業」になる
百科事典や英会話教材の販売を事業としていた外資系教育会社の営業時代、世界142社中2位という記録を作った和田裕美氏。「お客様の背中を押す」営業術で顧客満足度を上げるというスタイルから生まれた独自のコミュニケーション術は幅広く支持され、独立後の現在は企業研修から一般向けセミナーまで活躍の場を広げている。心と心がつながる営業を実践してきた和田氏に、不況を乗り切るための営業力とは何かをたずねた。



営業は経験で成長する素直な心が成績も伸ばす
BP:営業に必要な素質とは何でしょう。
和田氏:営業という仕事は、毎回契約が取れる訳ではなく、3人会ってYESの返事がもらえるのは1人というところ。2人続いたNOでやる気を失うのではなく「4人目に合えば次のY E Sがもらえるかも」と考え、継続できる人だけが、営業として成長できるのです。売れた経験だけでなく、売れない経験もマイナスにはなりません。20代半ばくらいの若い営業は、売れ続けると自分がすごいことをやっているような錯覚に陥ることがあります。上司のやり方は効率が悪いように見えて、自分の方が正しいと天狗になってしまうのです。それが売れなくなってみると、上司がやるように丁寧にあいさつ回りをしたり、お礼状を書いたりすることが大切だと分かります。先輩のアドバイスに耳を傾け、自分でも本を読んだりして勉強するようになります。この売れない時期に、どれだけのことを吸収できるかが、成長への分かれ道。素直にいろいろなことを受け止めることができる人は、営業に向いていると思います。


「気づきのお客様」獲得が成功へのカギとなる
BP:それでは、和田さんの考える良い営業とは、どのような営業でしょうか。
和田氏:人間は誰でもお金を払うのはイヤなものです。街で試食用のパンを配っていて、受け取った後で「100円です」と言われたら返すでしょう?(笑) 「お金を払う」というのは結構高いハードルです。契約書にサインしてもらうという営業の仕事がどれほどすごいことなのか、分かると思います。
 「お金を払う」というハードルの高さから考えると、お客様は3種類。「いま、その商品がどうしても必要な人」「将来的に必要性を感じていて購入を検討している人」「現在も将来も、まったく必要性を感じていない人」。本当に「売れる営業」とは、3番目の「まったく必要性を感じていない人」に売ることができる営業です。欲しくない人にどうやって「欲しい!」と思わせるか。商品の良さを伝えるために、お客様と営業担当者の心がつながっていることが必要です。現在でも、将来的にでも商品を必要だと考えているお客様は、購入時に条件を検討します。数社から見積を取って一番安いところから購入します。しかし、購入を全く考えていなかった人が、商品の必要性に初めて気づいてくれた場合は、競合他社なしに契約できる可能性が出てきます。営業担当者が、お客様に商品が変える未来を伝えることで、「今欲しくない人」が「気づきのお客様」になるのです。


「あなたから買いたい」と言われる営業を目指す
BP:具体的にはどのようにアプローチすれば良いですか。
和田氏:ノルマの達成など営業側の都合を押しつけていては、この「気づきのお客様」には相手にされません。お客様の会社の利益も考えて行動することで、「この人と話すと得する」と思われるようになって初めて、信頼関係が生まれるものです。
 例えばIT関係の商品を扱っているなら、最新機器の情報などをきっかけにお客様との関係を深めてみたらいかがでしょうか。ITの分野は情報の変化が早く、一般の人ではとても追いきれません。そこに自社製品に限らずITについての話題が豊富で、分かりやすく説明してくれる営業が通ってきてくれるようになったら、お客様の会社では「この営業を捕まえておいたらIT情報に遅れずに済む」と考えてもらえるはずです。お客様から「最近、どんなのが売れてるの?」「新しいPCは何がいい?」等と自然に質問されるような関係が築ければOKです。お客様がオトクだと感じる情報を無料で提供できるようになることが「あなたから買いたい」と思ってもらえる第一歩です。

BP:お客様との人間関係づくりには時間がかかるのではないでしょうか。
和田氏:営業としての経験が長くなってくると、今月契約が取れそうなお客様、1年後に契約可能なお客様、さらに長い期間でアプローチ中のお客様など、複数のお客様を並行して担当することになります。つまり、仕事をしている期間が長いほど、時間をかけてゴールに近くなるお客様が増えてくるので、急ぎのノルマに追われなくなります。証券業界では、6 年かけて大口取引先を口説き落として営業成績がトップになったという伝説的な営業担当者もいるほどです。
 結局、「何を買うか」だけでなく「誰から買うか」、を優先してもらえるのが「気づきのお客様」なのです。見積額を比較されての契約で売上を伸ばしたとしても、価格を安くしているため会社の利益は減ってしまう。「高くてもあなたから買いたい」と思ってもらえれば、営業担当者自身の成績だけでなく、会社の利益も大きく伸びることになります。


不況のときこそ「陽転思考」
BP:不況が長引いています。和田さんもリストラを経験していますね。
和田氏:はい。代理店制度の廃止に伴い支社を閉鎖することになり、本社の正社員として残ったのですが、収入は4分の1に減りました。その後、2001年に同社が日本を撤退したのをきっかけに独立して現在の会社を立ち上げました。会社の日本撤退のときは、何もかも失って、人生の中で大地震に被災してしまったようなものです。しかし、大震災に被災した時に避難所で配られたおにぎりを「ああ、美味しい」と思って感謝できるような人は立ち直りが早いのではないでしょうか。私も会社の日本撤退を「それは仕方のない事実だ」と受け止めて、気持ちを切り替えるようにしました。そのとき、どんな困難な状況の中で、少しでも「良かった」と感じることを見つけるという思考パターンが自分に備わっているということに気付いたのです。
 私は、「陽転思考」という考え方が重要だと思います。これは、困難に直面して泣いてもいいし怒ってもいいけど、長引かせずに素早く次の幸せな方向へのステップにつなげていくという考え方です。また、失うということは、新しいことを取り入れるチャンスであるという考え方もあります。

BP:不況に立ち向かう経営者にも必要な考え方ですね。
和田氏:そうです。こんな時期だからこそ手に入ることを探すべきです。無駄な経費を削減するのも、景気が悪い時だからこそ社員も納得するし、協力的になるはずです。人員を増やせない時だからこそ、一人当たりの生産性や効率を求めても、受け入れようと思える人が増えます。
景気が良くなった時にこれらのことは必ずプラスになるのです。

BP:不況だからこそ、新たに取り組めることもありますか。
和田氏:営業担当者が売れてない時期の経験で成長できるのと同じように、企業も売れなくなったことをきっかけに成長できることもあるはずです。売れる時代なら、やみくもに販路を広げてもどんどん売れるが、売れないからこそアイデア勝負になります。コーヒー販売の会社だったら、今までの商品に加えて、クリームや紙コップも一緒に売る方法を考えてみるとか、コーヒーのバリエーションを増やしてアピールするとか。
 また、こういう時期だからこそ、厳しい状況の中での長期借入を選択し、設備投資をしたら、確実に頭一つ抜け出すことも可能ではないでしょうか。金融機関の貸し渋りが伝えられていますが、不況が続けば今後はもっと借りにくくなる状況も想定されます。今がチャンスです。最新のI T設備への投資なんて狙い目だと思います。私なら、「これからもっと悪くなるかもしれないから、今のうちに大塚商会さんを呼んで最新のITに入れ替えるといいですね」とアドバイスします(笑)


「営業力」で日本に活力を
BP:最後に読者も「陽転思考」で元気になれるようなメッセージをお願いします。
和田氏:実は、フルコミッションの営業、特に化粧品や健康食品の分野では、80代のおばあちゃんが現役で働いています。しかも多くの利益を上げて納税までしています。一方で、20代の若者でも、働けずに親がかりの生活を送っている人もいます。今の日本では6人に1人が働いていないというデータもあるほどです。こうした人が、元気になって働いて収入を得て、納税できるようになれば、日本全体に活力を与えることになるのではないでしょうか。また、定年後も実績のある営業担当者がフルコミッションで会社に残る道を開くのも良いかもしれません。
 今、「陽転思考」を伝える活動に力を入れているのですが、さまざまな事情で働けなかった人が私のセミナーを聞いて「頑張れるようになった」と報告してくれることが多くなりました。考え方だけで、すべてが良くなるとはいえませんが、いま元気を失っている人の背中を後押しできたらと思います。自分のできる範囲でいろいろな人に「陽転思考」を伝えていきたいと考えています。

セミナー

photo
和田 裕美 氏
H i r o m i W a d a

◎ P r o f i l e
京都府出身、営業コンサルタント。営業事務から転職し、外資系教育会社にてフルコミッションの営業職へ。売れない新人時代に自分なりの営業スタイルを築きあげ、同社での成績は日本でトップ。世界142カ国中2位になるほどの圧倒的な営業力を獲得する。同社の日本撤退に伴い、株式会社ペリエを設立し、独立。「和田裕美の人に好かれる話し方」「世界No.2セールスウーマンの『売れる営業』に代わる本」「人生を好転させる『新陽転思考』」など著書多数。


Backnumber
【にっぽんの元気人】

・経済評論家 勝間 和代氏 【Vol.49】

・株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長 小室 淑恵氏 【Vol.47】

・ワタミ株式会社
代表取締役会長・CEO 渡邉 美樹 氏 【Vol.46】


・ブックオフコーポレーション株式会社
代表取締役社長 佐藤 弘志 氏 【Vol.45】



 
PageTop
BP PLATINUM本紙の購読申込み・お問合せはこちらから
Copyright 2010 Otsuka Corporation. All Rights Reserved. 
セミナーリンク