英語圏でパーティーの招待状に「BYOB」と書いてあったら、「bring your own booze」(お酒は各自で)という意味。これをもじったのがBYOD(bringyour own device)、すなわち「デバイスは各自で」という言葉だ。BYOC(bring your own computer)と書かれることもある。
コモディティー化が進むPCの世界では、コンシューマ向け製品のほうがビジネス向け製品より機能や性能、デザインの面で優れていることが珍しくない。プロセッサ性能にしてもメモリ容量にしても、コンシューマ向け製品のほうがパワフルで、最新製品である例が多い。そのためか、生まれた時からデジタル製品が身近にあった「デジタルネイティブ」世代は、企業から支給されるPCや携帯電話・PHSを「使いづらい」「魅力的ではない」と感じることもあるそうだ。また、会社で使用しているPCへの規制があまりにも厳しい場合、情報収集の効率を上げるために私物を使う場合もある。BYODが広まりつつある背景には、このような理由が指摘されている。
企業の視点でみると、BYODにはメリットもデメリットもある。メリットは、導入コストを抑えられること。PCや携帯電話の調達を従業員の自弁、もしくは、費用の一部を補助とするなら、機器の購入や買い替え費用を低減できる。さらに、社外のPCやスマートフォンから社内のシステムにアクセスし、業務を遂行できれば、BCP対策としても期待できる。
デメリットとしては、ITのプラットフォームを統一しづらくなる点が挙げられる。PCの場合は、Macを使いたいという声に応えるかどうか。また、iPad2やAndroid端末といったタブレット端末の扱いをどうするのかも悩ましい。Webブラウザや電子メール・グループウェアの能力は、それほど違わないものの、その他のアプリケーションについては、まったくの別物と考えられる。これらの違いは、ネットワークやサーバ側に付加的な設備やソフトウェアを導入することによって、ある程度は解決できる。
一番の問題は、情報セキュリティをどのようにして確保するかという点。従業員の私物を社外持ち出し禁止にはできないので、情報流出を防ぐとともに、外部で感染したマルウェアを企業内に持ち込ませないための対策が必要になる。すでに十分なセキュリティ対策をとっている企業なら、対応はそれほど難しくない。従業員のデバイスもActive Directoryなどの「台帳」に登録し、グループポリシーなどで適切なセキュリティ設定をすればよいからだ。Windows PCなら、これでセキュリティ問題は、ほぼすべて解決できるはずである。
それ以外のデバイス、具体的にはMac、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話などの場合、セキュリティ対策の追加や運用面での対処が必要になる。デバイス側では、使用者のセキュリティに対する問題意識が重要で、安易なアプリケーションのインストールがセキュリティホールになる可能性があるからだ。具体的な対応策としては、MDM(Mobile Device Management:モバイルデバイス管理)ソリューションの導入がある。ただし、私物への規制は大変難しい問題だ。何をどこまでを許可するのがベストか。そのノウハウはどこにも存在していない。だからこそ、ここにパートナー様のビジネスチャンスが広がっている。