無線通信装置を内蔵したセンサーや電子機器がインターネットと直接に情報をやり取りする、モノのインターネット(Internet of Things:IoT)。エネルギー管理やITヘルスケアを実現するための仕組みとして、すでに一部で活用が始まっている。 センサーや電子機器同士が直接に通信する形態として、Machine-to-Machine(M2M)と呼ばれるものがある。インターネットを介して行うM2Mが、「モノのインターネット」あるいはInternet of Things(IoT)だ。現在では、「インターネットに無線で接続可能なセンサーや電子機器」という意味でも使われている。 サーバーとクライアントPCで情報を収集・処理するこれまでのITと違って、IoTではクラウドとインターネットを現実世界(リアルワールド)により近い領域に役立てていくのが特徴的である。 例えばエネルギー管理の分野では、各家庭に設置されたスマートメーターが集めたリアルタイムの使用量を基に電気や都市ガスの製造量や配給方法の最適化が可能。宅内エネルギー管理システム(HEMS)と連携させれば、個々の家電製品のオンオフや能力制御を離れた場所からインターネット経由で行うことも可能になる。 また、急速に市場が立ち上がりつつあるITヘルスケアの領域では、家庭内の健康器具やウェアラブルデバイスで取得した測定値(体重、脈拍、血圧、呼吸、尿糖など)をクラウドで分析するサービスがすでに稼働中。法制面で乗り越えるべき壁はあるものの、地域医療連携に組み込もうとする動きも盛んだ。 このほか、工場の製造設備、倉庫や物流経路に設置した無線ICタグ(RFID)リーダー、自動車(コネクテッドカー)、企業や家庭に設置されたセキュリティ機器なども、IoTの活躍が期待されている分野である。 IoTを実現するための要素技術としては、低消費電力型の無線通信とユニークな識別コードの2つが重要だ。 まず、無線通信については、ZigBee(IEEE 802.15.4)やBluetooth(IEEE 802.15.1)などの近距離無線通信(PAN)がIoTでの主役となる。数年間は電池交換なしで動き続けることが求められるIoTの世界では、クライアントPCやタブレット/スマートフォンで使われている携帯電話(LTE)や無線LAN(IEEE 802.11)は消費電力が大き過ぎて使えない。ただ、PANの到達可能距離は10m程度と短いので、センサーや電子機器の近くになんらかのゲートウェー装置が必要になる。 次に、使用者を特定したりサービスに課金したりするためのユニークな識別コードも必要だ。携帯電話にはIMEI(電話機ごと)やIMSI( 加入者ごと)などの固有番号があるが、IoT対応の電子機器ではそのような世界的な枠組みがまだ確立していない。活用に向け、動きの速い流通や物流の領域ではRFID用のユーコード(ucode)(発番はユビキタスIDセンター)やEPC(発番はAuto-ID Center)が使われることになるだろうが、他の領域ではこれから検討と調整が始まる見込みだ。 なお、典型的な活用例からも明らかなように、IoTは社会全体と関わる大型のシステムとなる。このため電力・都市ガス・鉄道といった公益産業を別にすれば、民間の一企業が自社のサーバーにIoT用アプリケーションを組み込んで業務処理に利用するという使い方はまず考えられない。 ほとんどの場合は、業界クラウドなどの半公共的パブリッククラウドを介した利用法になるはず。膨大な数のIoT対応電子機器が生成する“ビッグデータ”によって通信回線に大きな負荷がかかることを考えれば、収集した情報を蓄えるデータベースもIoT対応電子機器を制御するためのアプリケーションもクラウド側に置く形態がもっとも合理的だ。 今後、伸張する分野として注目されるので、どのようなビジネスが成り立つのかをパートナー様はリサーチすべきだ。