タブレットやスマートフォンを業務システムの“入り口”として使うには、自社専用のモバイルアプリを作るのがベスト。そのためのバックエンド側機能をクラウドサービスとして提供してくれるのが、BaaS(Backend as a Service)だ。 このところ、性能向上が目覚ましいタブレットやスマートフォンなどのモバイルデバイスを業務システムのフロントエンド(入り口)として活用する企業や小売店が増えている。そうした利用者に“バックエンド”側の機能をクラウドとして提供するのがBaaS(Backend as a Service)というサービスだ。モバイルデバイス向けであることを強調するために、モバイルBaaS(MBaaS)と呼ばれることもある。 このようなサービスが登場した背景には、タブレットなどのモバイルデバイスそのものは安価に入手でき、モバイルアプリを利用者が自作するのもそれほど難しくないが、業務システムに仕立て上げようとすると難易度が急に高まるという事情がある。モバイルデバイスの中だけで完結する単純なアプリなら操作画面を定義するだけでよいが、業務処理をこなすためのアプリケーションには“重たい”処理と高価な機材が必要になるのだ。 例えば、販売管理や顧客管理などの基幹系業務でモバイルデバイスを使うにはデータ処理を担当するサーバーとデータ格納用のストレージを用意する必要がある。しかし、SOHOユーザーや個人商店にとってはサーバーやストレージを用意するだけでも荷が重いし、サーバーソフトウェアを開発し、メンテナンスするためのソフトウェア技術者を確保するのは至難の業。市販のパッケージソフトウェアでモバイルデバイス対応になっているものはまだ少ないし、使えたとしてもWebブラウザーでの操作は快適ではない。 また、高度に専門的な機能もBaaSなら簡単に手に入る。 例えば、タブレットやスマートフォンに内蔵されているGPSデバイスで利用者の現在位置を自動的に把握し、その近くにオフィスがある顧客オフィスを地図画面上に表示する。営業支援(SFA)システムでよく見かけるこのような機能も、BaaSで提供される地理情報(GIS)APIを利用して作れば、座標を扱うソフトウェアを自社で開発したり地図データを入手したりする必要はなくなる。 小売店の店頭や訪問先でモバイルデバイスをPOS端末として使うのに欠かせないクレジットカードの決済機能も、BaaSを利用すれば簡単に実装できる。ハードウェアとして必要なのは磁気カードリーダーとレシートプリンター(ジャーナルプリンター)だけ。据置型決済端末は要らないので、設置スペースもリース料も大幅に節約できる。 BaaSが提供するその他の専門的サービスとしては、ユーザー認証、コンテンツ管理、タブレットやスマートフォンへのプッシュ通知、ソーシャルメディア連携などがある。 BaaSのおもなユーザーとしては、業務に必要なモバイルアプリを内製しようとしている一般企業と、Apple Store/Microsoft Store向けのモバイルアプリを開発しようとしているソフトハウスの両方が考えられる。 BaaSを提供する場合は、タブレット/スマートフォン、アプリ開発ツール、BaaS、モバイルアプリ管理(MAM)/モバイルコンテンツ管理(MCM)/モバイルデバイス管理(MDM)の各ツールと組み合わせたシステム販売とするのが良策。モバイルデバイス用の開発ツールや各種ツールにはクラウドサービスとして提供されるものも多く、BaaSと同じクラウドベンダーのものを選ぶとよいだろう。 パートナー様の立場では、アプリを含めた業務システム(ハード/ソフト)の販売を支援する役割がおもになる。タブレットを販売する際のシステム提案のメニューの一つとするのも効果的だ。