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2015年9月時点の情報を掲載しています。
最近注目が集まっているデバイスに、HMD(Head Mounted Display)が挙げられる。HMDは、その名の通り、頭部に装着するディスプレイであり、以前から業務用途などで用いられているが、液晶技術などの進化によって高性能化と低価格化が進み、画角や精細感が向上したことで話題を集めている。しかし、今回取り上げる「HoloLens」は、外観はHMDによく似ているが、従来のHMDとは全く異なるデバイスである。
従来のHMDは基本的にディスプレイとしての機能しか持たず、PCやスマートフォンなどを接続して利用するのに対し、マイクロソフトが開発中のヘッドマウント型のデバイスであるHoloLensは、CPUやGPUなどが搭載されており、単体で動作することが最大の特徴だ。
HMDは、装着すると外界が見えなくなる「没入型」(非透過型)と外界が見える「透過型」(シースルータイプ)に大別できるが、HoloLensは透過型であり、装着しても周りの様子が見えるため、そのまま歩き回ることが可能だ。HoloLensは、現実世界に映像(マイクロソフトはホログラムと呼んでいる)を重ねて表示できるデバイスであり、ホログラフィックコンピューティングという新たな概念を実現する。こうした現実世界に映像を重ねる技術を拡張現実(AR)と呼ぶが、これまでは研究室レベルでしか実現されていなかった。一般の人々が気軽に拡張現実を利用できる世界を実現することが、HoloLensのミッションである。HoloLensには、カメラや各種センサー、サラウンドヘッドホンなどが搭載されており、使用者の場所や周囲の状況、ジェスチャー、音声などを認識できる。UI操作は、空中でジェスチャーを行ったり、音声コマンドで行える。天気予報や料理のレシピ、ToDoリストなどを壁や天井に表示させたり、現実の物体に映像を投影してゲームを行うといった利用が可能だ。
HoloLensは、これまでのコンピューティングの概念を根本的に変える可能性を持つデバイスだ。コンピューターを常に身に付けて利用するウェアラブルコンピューティングは、昔から提唱されているが、これまでは腰に超小型PCを装着し、PCとケーブルで接続したHMDを装着するというスタイルであった。HoloLensを利用すれば、そうしたケーブルは不要になり、サングラスをかけるような感覚で、ウェアラブルコンピューティングを実現できる。例えば、マイクロソフトはNASAと共同で、HoloLensを国際宇宙ステーションで利用するプロジェクトを進めている。このプロジェクトでは、HoloLensを利用して、宇宙飛行士に地上管制からの指示を出したり、宇宙飛行士が見ているものについて地上管制がリアルタイムでフィードバックを返すといったことを実現する。マイクロソフトの最新OS「Windows 10」にはHoloLens用のAPIが実装されており、Windows 10デバイスと連携することで、さらに可能性は広がる。
HoloLensの価格や発売時期はまだ公表されていないが、最初のモデルの発売は2016年中になると言われている。また、最初のモデルは開発者向けや企業向けとされており、一般ユーザーが入手できるようになるのは、もう少し先になりそうだ。HoloLensは、さまざまな業務の効率を大きく向上させるポテンシャルを秘めたデバイスであり、SIerなどにも新たなチャレンジの機会をもたらすことになるだろう。
text by 石井英男
1970年生まれ。ハードウェアや携帯電話など のモバイル系の記事を得意とし、IT系雑誌や Webのコラムなどで活躍するフリーライター。
マイクロソフトが開発中の「HoloLens」。内部にCPUやGPUなどが搭載されており、他のデバイスとの接続が不要で、単体で動作する
HoloLensの利用イメージ。シースルータイプになっており、装着しても周りの様子が見える。現実世界にホログラムのUIが投影されたように見える
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