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2015年3月時点の情報を掲載しています。
2014年10月31日、総務省が「SIMロック解除に関するガイドライン」の改正案を発表した。このガイドラインは、携帯電話事業者が2015年5月1日以降に新たに発売する端末について、ユーザーからSIMロック解除の希望があれば、原則として無料でSIMロックの解除を行うことを義務づけたものだ。このガイドラインによって、日本でも本格的なSIMロックフリー時代が始まることになる。
そもそもSIMロックとは何だろうか? 現在、販売されている端末は、回線契約情報を記録したSIMカードと呼ばれる小さなカードを差し込むことで、移動体回線網への接続が可能になる。SIMロックとは、端末に特定のSIMカードが差し込まれた場合のみ動作するように、制限がかかっていることをいう。日本では、NTTドコモやau、ソフトバンクモバイルなどの携帯電話事業者が直接販売する端末が大きなシェアを占めているが、これらは基本的にSIMロックがかかっている。それに対し、海外で販売されている端末の多くは、SIMロックがかかっておらず、ユーザーが自由にSIMカードを選んで利用できる。携帯電話番号ポータビリティ(MNP)制度を利用することで、携帯電話事業者を変更しても、同じ携帯電話番号を使い続けることが可能になったが、SIMロックがかかっていると、その端末をそのまま他の携帯電話事業者のSIMカードで利用することはできない。また、海外渡航時に国内から持参した端末に、渡航先の携帯電話事業者のSIMカードを差し込んで利用したいというニーズにも、SIMロックがかかった端末では応えることができない。
このように、SIMロックは利用者の利便性を阻害しているとして、総務省は2010年6月に「SIMロック解除に関するガイドライン」を策定し、携帯電話事業者に自主的な取り組みによる、SIMロック解除の実施を求めた。SIMロック解除とは、SIMロックが施されて販売された端末の設定を変更し、どこのSIMカードでも利用できるようにする作業であり、SIMロック解除済みの端末は、SIMロックフリーと呼ばれる。しかし、このガイドラインは、あくまで自主的な取り組みを求めるものであり、事業者によってSIMロック解除への対応が分かれている。そこで、総務省は今回、ガイドラインを改正し、SIMロック解除を義務づけることで、SIMロックフリー化を推し進めることになったのだ。
これによって何が変わるのだろうか? まず考えられるのは、MVNOのさらなる普及である。MVNOとは、移動体回線網を自社では持たず、実際に回線網を保有する他の携帯電話事業者から借りて、自社ブランドで通信サービスを行う事業者のことであり、日本通信やニフティ、So-netなど、多くの事業者が参入している。価格が安いことが特徴であり、通信量や通信速度が制限されるものの、1カ月1,000円未満という低価格な料金プランも提供されている。MVNOが借りている移動体回線網を所有している携帯電話事業者の端末なら、MVNOのSIMカードをそのまま利用できるが、例えば、ソフトバンクモバイルの端末に、NTTドコモの移動体回線網を利用するMVNOのSIMカードを差して使うことはできなかった。しかし、SIMロック解除が行われた端末なら、そうしたことを気にする必要はなく、気軽にMVNOに乗り換えることが可能になる(ただし、auの端末は、NTTドコモやソフトバンクモバイルとは通信方式が異なるために互換性はない)。また、海外に渡航する場合でも、SIMロックフリー端末なら、渡航先で入手したSIMカードを差し込むだけで利用できる。
現時点でも、ASUSやHuaweiなどが、SIMロックフリー端末を日本国内で販売しているが、2015年5月以降は、携帯電話事業者から販売される端末も、基本的にすべてSIMロック解除に対応するので、自分の使いたい端末を使いたい通信サービスと組み合わせることが可能になる。MVNO事業者にとっては絶好の追い風であり、顧客獲得競争がさらに過熱するだろう。SIMロック解除の義務化によって、ユーザーの選択肢が今よりも広がるだけでなく、業務用端末の通信料金を大きく下げることも可能になる。ソリューションプロバイダーにとっても大きな商機となりそうだ。
text by 石井英男
1970年生まれ。ハードウェアや携帯電話など のモバイル系の記事を得意とし、IT系雑誌や Webのコラムなどで活躍するフリーライター。
ASUSのSIMロックフリー端末「ZenFone 5」。SIMカードを提供する事業者を問わず利用できる。
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