「ポケモンGO」の大ヒットで、位置や空間に関する様々な情報を重ね合わせ、地図上に表示するGISが改めて注目を集めている。これまで想像しえなかった新たな情報が見えてくるGISの最新情報をお届けする。 GIS(Geographic Information System:地理情報システム)とは、位置や空間に関する様々な情報を、コンピュータを用いて重ね合わせ、情報の分析・解析をしたり、情報を視覚的に表示させるシステムだ。私たちの生活の中で利用されるケースが増え、その活用範囲はますます広がっている。 たとえば防災対策。防災施設がどこにあるのか、災害時に壊れやすい木造住宅がどのあたりに分布しているか、一人暮らしの高齢者がどこに住んでいるのか? これまではこういった情報は、別々の地図や台帳にまとめられており、それらの関連性を知ることは極めて困難だった。しかし、防災施設の情報や木造住宅の分布は、すべて「場所」「位置」といった情報を持っており、位置情報をキーとすることで、ひとつにまとめることができる。それがGISだ。地図や航空写真の上にその情報を重ね合わせることで、様々な情報の関連性が一目でわかるようになり、想像しえなかった新しい情報を知ることができるようになる。GISは、社会を支える技術の1つであり、21世紀の重要なツールとして、ますます注目されている。 2015年に総務省がGISを活用した「G空間×ICTプロジェクト」の推進を発表しており、今後は国策として取り組まれていくだろう。このプロジェクトのビジョンとして掲げられているのが「新たな産業・サービスを創出し、経済を再生させる」「世界最先端の防災システムを作る」「先進的、先導的な手法により地域を活性化させる」というものであり、資料の中で、2012年時点で19.8兆円だった市場規模が2020年には62.2兆円になるという試算も出ている。 GISを始める際には、まず必要になるのが地図データだ。航空写真の要不要、マップの品質や利用頻度などによっては、安価に利用できるGISサービスがあるので、そちらを利用する手もある。次に、位置情報をリアルタイムに処理するための、バックエンドシステムが必要だ。クラウドサーバーを使った分散環境が有効であり、ドキュメント志向のデータベース、インメモリ型キーバリューストア等が必要になる。フロントエンドは、オープンソースライブラリを使ってWebベースで構築し、アプリ化すればAndroid/iOS双方で利用できる。AR(拡張現実)/VR(仮想現実)を重視するなら、ゲームエンジンでアプリを構築しよう。 今後はIoTの進展により、既に活用が行われている物流やフィールド営業はもとより、人や物に紐づく位置情報の利用も始まるであろう。作業員の位置把握を行い、危険エリアへの立ち入りをアラートで知らせることも可能だ。ドローンを使って広大な圃場を管理することもできる。また、世界的に大ヒットした「ポケモンGO」に代表される位置情報ゲームも進化していくだろう。そこで培われた技術はビジネスの世界にもフィードバックされる。「ポケモンGO」では、建物内での位置情報の補正や標高データの利用は行われていないが、このあたりが実現できれば、動態把握によるスポットマーケティングにも使える。アイデア次第でひろがるGIS。今から始めてみてはいかがだろう。