個人が持つ住宅や自動車などの資産を貸し借りできる「シェアリングエコノミー」と呼ばれるサービスが、欧米を中心に 広がりを見せている。2016年は日本でもシェアリングエコノミーがさらに進展する年になりそうだ。 21世紀に入り、私たちはこれまで推し進めてきた過剰生産・過剰消費の見直しが求められている。人々の消費スタイルは徐々に単独所有から共同利用へと変化しており、それは個々の生活を飛び越え、シェアリングエコノミーとして立ち上がりつつある。シェアリングエコノミーとは、個人が所有する資産をインターネットを介して貸し借りすることを言う。共有される資産としては、住居や駐車場などの空間、自動車や自転車などの移動手段、洋服などのモノ、空き時間、お金などで、個人同士が直接やり取りするサービスが多い。スマートフォンが普及して、いつでもどこでもネットが利用できるようになり、マッチングの機会が爆発的に増加したことが急成長の要因となっている。直接取引には信頼関係が不可欠だが、Facebookなどのソーシャルメディアとの連携により実名性や透明性が担保されたことが後押しとなっている。各サービスには提供者、利用者双方の評価が蓄積されており、どちらも利用の可否を選択できる。 シェアリングエコノミーの代表的なサービスとしては、米国で2008年に設立され、いわゆる「民泊」を仲介する「Airbnb(エアビーアンドビー)」、2009年に設立された配車サービスの「Uber(ウーバー)」がある。 Airbnbは約190カ国でサービスを提供しており、空き部屋の登録件数は100万件を超える。Uberは空き時間を使って自家用車をタクシーとして提供するサービスで、未上場にも関わらず、その時価総額は7兆5000億円という好調ぶりだ。シェアリングエコノミー市場は、世界規模では2025年に36兆8500億円*1に達するという予想もある。 一方、日本では様々な規制が壁となって出遅れが指摘されているが、2016年1月には東京国際空港(羽田空港)を抱える東京都大田区でAirbnb民泊が解禁された。不特定多数の人を宿泊させる場合、旅館業法などで厳しい規制がかけられてきたが、特定の地域に限って規制改革などをする「国家戦略特区」の認定を受けることで解禁にこぎつけた。日本発のサービスもある。例えば、2012年8月にスタートしたレンタルスペース予約サイト「Sheeps(シープス)」。同サイトの掲載レンタルスペースは都内だけで400カ所前後。年内に1000店舗まで増やす予定だという。最初はミーティング用にオフィスを貸し出す個人事業主がほとんどだったが、現在ではカフェや雑貨店、ダンスフロアなど、オフィス以外にもさまざまな店舗を借りることができる。さらには2015年12月にスタートした荷物配達サービス「ハコベル-hacobell-」。運送業者が保有するトラックの空き時間を利用して配送を受託するというもの。遊休資産と需要を結びつけることで、中小企業の経営を支援している。国内シェアリングエコノミー市場規模は、2014年度で232億7600万円*2であり、その勢いは益々加速していくだろう。 コストをかけずに住居の自由を得たり、高級車を複数共有することも可能なシェアリングエコノミーは、貸し手と借り手の双方に経済的なメリットを与えるとともに、人生を豊かにする選択肢と言える。日本には、誰も住んでおらず活用されることのない空き家が総住宅数の15%、およそ1万戸もあると言われ、自動車の利用率は5%程度で年に20日程度しか利用されていないというデータがある。これらは氷山の一角であり、活用されずに眠っている遊休資産が山ほどあるのだ。そこには大きなビジネスチャンスが拡がっている。 *1「The sharing economy – sizing the revenue opportunity」(PwC)より1ドル=110円換算 *2 サービス提供事業者の売上高ベース。 矢野経済研究所調べ