上下を気にせずに差し込める、最大データ転送速度がUSB 3.0のさらに2倍の10Gbpsに向上、そして、最大100Wという大電力の供給も可能といった夢のインターフェースが2016年に普及が見込まれている。 現在、PCやタブレット、スマートフォンなどのIT機器で最も多く使われているインターフェースといえば、なんといってもUSBであろう。USBとは、Univesal Serial Portの略であり、その名の通り、汎用的に使えるシリアルバス規格だ。 USBは、PCなどのホスト側と周辺機器となるデバイス側が明確に分かれているインターフェースであり、ホスト側はAコネクタ、デバイス側はBコネクタが使われる。それぞれ標準コネクタの他に、より小さいミニUSBコネクタやマイクロUSBコネクタが規定されているが、ミニUSBコネクタはやや中途半端なサイズなので、スマートフォンやタブレットなどの薄さを重視する機器では、マイクロUSBコネクタが広く使われている。USBは、電源を入れたままコネクタを抜き差しできるので便利だが、コネクタの上下が決まっており、上下が逆では入らないという問題があった。マイクロUSB Bプラグは薄くて小さいため、ぱっと見ただけで上下を判断するのは難しい。マイクロUSBケーブルを接続しようとしたが、コネクタの上下が違っていて接続できなかったという経験を何度もしているのではないだろうか。 2013年8月に策定されたUSBの最新規格であるUSB3.1では、最大データ転送速度がUSB 3.0のさらに2倍の10Gbpsに向上しただけでなく、このコネクタ問題にもメスが入れられた。それが「USB Type-C」と呼ばれる新たなコネクタ規格である。USB Type-Cコネクタは、上下左右対称なデザインを採用しているため、コネクタがリバーシブルとなり、上下を気にせずに差し込むことができるのだ。また、ホスト側もデバイス側も同じType-Cコネクタを利用するように変更され、サイズも一種類しかないため、コネクタ仕様の違いを気にする必要もなくなった。USB Type-Cコネクタのサイズは、約8.4×約2.6mmとコンパクトなので、薄さを重視するタブレットやスマートフォンにも適している。 また、USBは電源を供給できることも利点であり、スマートフォンやデジタルカメラではUSB経由でバッテリーの充電を行う製品が多い。ただし、もともと消費電力の小さなマウスなどへの給電が想定されていたため、従来のUSB規格の給電能力はあまり高くなかった。USB 2.0では最大500mA(2.5W)、USB 3.0では最大900mA(4.5W)と規定されており、スマートフォンやコンパクトデジタルカメラのバッテリーならなんとか充電できるが、より容量の大きなタブレットやノートPCのバッテリーを充電するには力不足であった。しかし、USB 3.1ではUSB Power Delivery(USB PD)と呼ばれる、USB経由でより大きな電力を供給するオプション仕様を利用できる。USB PDでは、最大100Wという大電力の供給も可能で、ノートPCなどの電源コネクタをUSB Type-Cに統一することで、ACアダプタの無駄を減らそうという提案がなされている。なお、オプション仕様であるため、USB Type-C対応製品であっても、全ての製品がUSB PDをサポートしているわけではないが、今後はUSB PD対応製品が増えてくることが期待される。 このように、USB Type-Cは、USBの使い勝手を高め、その可能性を広げる大きな革新なのだ。さらに、USB Type-Cコネクタを利用して、DisplayPortやThunderbolt 3といった、USBとは異なるインターフェースも利用するための拡張仕様も発表されており、今後はありとあらゆるIT機器のインターフェースがUSB Type-Cに集約されていくというシナリオも十分に考えられる。2015年は、USB Type-C時代の幕開けとなった年だが、本格的な普及は2016年後半からであろう。HPの「HP EliteBook Folio」など、最近発表されたノートPCでは、USB Type-Cに対応した製品が増えてきている。ノートPCだけでなく、USB Type-C対応の液晶ディスプレイなども発表されており、今年はUSB Type-Cへの対応がトレンドとなりそうだ。