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2017年7月時点の情報を掲載しています。
生命の設計図であるDNAは、わずか4種類の塩基配列によって複雑な遺伝子情報を伝える。この仕組みを二進法に利用 できれば、分子工学レベルの情報密度のストレージが可能になる。そんなSFめいた取り組みがスタートしている。
世界最大級のストレージ機器開発企業 の発表によると2013年に企業や個人が 生成した電子データ量は4兆4000億GB だった。これを容量128GBのiPad Air に保存し、一つ一つ積み上げていくと、 その高さは約25万キロメートルに及ぶ。 これは地球から月までの距離の3分の2 に相当する数字である。さらに同社は、 2020年には年間のデータ生成量が44 兆GBに達すると予測する。そこで浮上す るのが、増え続ける電子データの保存方 法を巡る問題だ。 H D DにせよS S Dにせよ、その寿命は 10年に満たない。増え続ける電子データ の保存に、数年に一度のデータ移行が必 要になる現在の仕組みが適しているとは 考えにくい。それと共に、データ量の増大 に伴うストレージ装置・施設の大型化とい う物理的な問題も浮上する。 こうした中、注目されるのが生物の遺伝 子情報を伝えるDNAをストレージとして 活用する取り組みだ。DNAは二重らせん によって結ばれた、A(アデニン)、G(グア シン)、C(シトシン)、T(チミン)という4種 の塩基の配列によって、生命の設計図で ある遺伝子情報を伝える。2進法の電子 データをこの塩基配列へと置き換えるこ とが、その基本的な考え方になる。 第一のメリットは、情報密度の大幅な向 上だ。例えば人体には約37兆の細胞があ るが、各細胞には最大で1.5GBの記憶容 量を持つDNAが必ず含まれている。実は 人体は、現時点の年間データ生成量が収 納可能な巨大なストレージとして見ること もできるのだ。もう一つのメリットがその耐 久性である。スペインの洞窟で発見された 約40億年前のヒト属化石から抽出された DNAが、人類の進化の歴史に一石を投じ ていると言えば、現在のストレージとは比 較にならない驚異的な耐久性がうなずける はずだ。 遺伝子工学の進化により、任意のデー タに対応したDNA合成は以前から可能に なっている。しかしストレージとしての利 用には、生物学上の要因に伴う書き込み・ 読み取り時のエラーが大きな課題になっ ていた。この問題の解決に貢献したのが、 インターネット経由のマルチキャスト配信 のために開発された「噴水符号」というテ クノロジーだった。これはあらかじめ情報 に冗長性を持たせ、バケットが抜け落ちた 場合は別のバケットの情報でそれを補う 技術である。 DNAへのデータ書き込み・読み出しへ の噴水符号の成果は劇的なものがあっ た。2017 年3月、米コロンビア大学と ニューヨークゲノムセンターの研究チー ムが発表した論文では、わずか1gのDNA 分子に21万5000T Bの情報の収納が可 能と報告している。 同チームは、コンピュータO S、リミュ エール兄弟が1895年に制作した短編ド キュメンタリーフィルム『ラ・シオタ駅への 列車の到着』などのデータを200塩基分 の長さの7万2000本のDNA二重らせん に書き込み、それを完全に復号化するこ とに成功している。 だがDNAストレージ実用化には、まだ 課題も多い。DNA合成には7000ドル(約 77万円)かかり、データの読み出しにさら に2000ドル(約22万円)が必要になるこ とはその一つ。ただし、そのコストは今後、 指数関数的に下がると考えられ、HDDや SSDと比べても一定の価格競争力を備え 得ると見られている。課題として残るの は、DNAの合成・読み出しに一定の時間 が必要になる点だ。 DNAストレージの研究は、コロンビア 大学のチームのほか、マイクロソフトをは じめとする企業や研究機関が取り組みを 開始している。しかしその実用化は、ライ ブラリーのアーカイブなど、スピードがさ ほど求められない用途から始まると考え ていいだろう。
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