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2007年7月時点の情報を掲載しています。
米国では、十年以上前から電力線経由の通信(POWERLINE COMMUNICATIONS:PLC)が、ケーブルテレビ以外で通常・衛星放送に変わるものとして注目されてきた。アメリカのケーブルテレビ事業は、ケーブルニュースネットワーク=CNNなどが1980年代から急速に普及した。しかし、業者が法的問題の絶えないフランチャイス方式を利用していることや、競争を促す観点から他にメディア事業を行っている者が「複合化」を進めないよう、別のサービス提供方法が望まれている。
そこで、地域に根付いた電力事業者を活用しようという考えが着目された。米国においては、電力は州又はいくつかの州からなるブロックの電力会社が提供している。その上、大体は体力のある会社で、なおかつ公共サービスとして長年の経験があることから、それなりに規制があっても、事業展開を推し進めると判断された。この流れから、現ブッシュ政権下の連邦通信委員会(FCC)でPLCに関する検討がはじまった。
これを受け、(未だに)標準化が定まっていないこの新たな分野でビジネスチャンスを狙う企業として、たとえば東芝等が欧米のメーカーと共に参加しているユニバーサル・パワーライン・アソシエーションや、ソニーと他の日系家電(コンスーマ・エレクトロニクス)メーカーが米国で立ち上げたCEパワーライン・コミュニケーション・アライアンス等が、団体行動の形で、21世紀に入って活発な動きを示しはじめた。
しかし問題は、ここからだった。バージニア州で、コムテックという会社が、2005年にPLCのパワーライン上でブロードバンド・サービス(BPL)の本格運用をはじめた。まもなく、このBPL運用で、アマチュア無線に悪影響を及ぼすことが判明したのだった。送電線で通信を行うと出力がおのずと大きくなることから、電波障害が起きる可能性があると、専門家から指摘をされていた。さらなる調査の結果、他にも緊急時の無線システムへ影響を及ぼすことがわかった。
しかし、これに対して、米国全土で電波行政を管轄するFCCは、2006年にサービス提供者に対し思いもよらず軽い「厳重注意」の勧告を行うだけでこの問題に幕を引こうとした。普通ならば、FCCの権限で事業停止になってもおかしくないのに、注意に留まった背景には、IPテレビなどの普及で、ブロードバンドのサービス提供者数の拡大が必要になり、「お目こぼし」をしておきたいFCCの立場があったといわれる。欧州では、BPLを推し進めるにあたって、あまり深刻な問題に直面しておらず、急速にPLCの普及が進んでいることへの「対抗心」もあったともいわれている。
こうした事態に、2006年末に、このFCCの対応を不服として、米国アマチュア無線団体ARRLは、電波妨害を起こすものに対して、厳しく管理を行わないという「悪しき前例」を取り除くべしとの主張からFCCを相手取り訴訟を起こした。米国の電線地中化率は微々たるもの、規制が厳しくなれば、事実上BPLは導入しにくくなる。このビジネスを狙っていた家電メーカーも、裁判が決着するまでは、二の足を踏むこととなった。
そこで登場したのが、モトローラ社であった。高層ビル発祥の地である中西部のシカゴに本拠地を置く同社は、電波障害が少ない「集合住宅」向けのシステムを開発、2007年にアマチュア無線の愛好家らに参加を呼びかけた。実験は成功し無線ユーザーたちを味方につけた。このことから、モトローラ社は集合住宅向けの市場に関しては、「蛇口部分」に手をかけた形になったのである。
つまり、現状では、家電メーカー等はモトローラ社と組まないと、なかなか身動きがとれないということになる。アメリカのPLC市場の発展は、法的問題からまだ先になりそうである。
【コラム】「米国IT事情」
・第1回 NGNの世界的動向と通信の安全性 【Vol.32】
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