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2006年7月時点の情報を掲載しています。
業務改革・改善のためには、どのようなIT活用の方法があるのだろうか。パッケージ化されたアプリケーションの利用によって、どこまで効率は上げられるのか。あるいは、ビジネス系アプリケーションの使いこなしによって改善が図れるのか。そうした視点から、IT活用について考えていく。今月はセキュリティとコンプライアンスについて考察する。
統合化の基本はストレージとサーバ
オープンシステムの統合に向けて、多くの企業が最初に着手する課題が、データを保管するストレージとアプリケーションが稼動するサーバの集中化にある。Windows95の登場以来、ネットワークを手軽に使える環境が整ってきたため、多くの企業では部門や支店などにファイル共有のためのファイルサーバを導入した。また、イントラネットやグループウェアのためのアプリケーションサーバも積極的に導入してきた。その結果として、本社の情報システム部門による管理の行き届かないサーバやストレージが乱立することになってしまった。こうしたストレージやサーバの乱立は、運用管理に負担やコストがかかるだけではなく、セキュリティという面からも問題が多い。そこで、ストレージやサーバを一ヵ所に集める統合化の流れが加速している。また、技術的にもSAN(ストレージエリアネットワーク)やNAS(ネットワークストレージ)のように、ストレージ統合に適したシステムも登場してきた。SANでは、通常の企業内ネットワークとは別にストレージ機器だけを結んだ高速な専用ネットワークを導入して、利用者側から見れば、巨大な単一のストレージ環境のような仕組みを提供している。ストレージを一ヵ所に集中することで、分散環境でばらばらになっていたディスクの空き容量を節約するだけではなく、ファイルやデータの集中管理を可能とした。つまり、一ヵ所にストレージを集約することによって、合理的で効率のよい運用が実現するのだ。同様に、アプリケーションサーバも集約することによって、ストレージと同様の効果が得られるのだ。
統合化の重要なポイントはネットワーク環境
いいこと尽くめのストレージやサーバ統合だが、ひとつだけ考えておかなければならない課題もある。それはネットワーク環境のことだ。かつて、分散環境が普及した背景は、ネットワークが弱いことに原因があった。現在では、100BASEのスイッチングハブやギガビットイーサなどを手軽に使っているが、以前は、10MBの転送速度を確保するだけでも大変であった。さらに、同敷地内だけではなく遠隔地と結ぶことを考えると、地方の端末と中央の統合環境間は、高速回線で結ばなければならなかった。しかし、こうした環境は、インターネットによるブロードバンド接続が整うまでは、十分とはいえなかった。また、ビジネスで利用しようとすれば、ベストエフォート(品質非保証)型のインターネット回線では、不安に感じられる面も多い。そうした背景から、企業によっては広域LAN接続を導入するケースも増えている。例えば、都心のオフィスと首都近郊にある情報システム部門を広域LANで結んで、高速通信で統合化されたストレージやサーバを利用できるようにする。一方、地方拠点に関しては、ブロードバンド接続とVPN(仮想プライベートネットワーク)を利用して、セキュアなアクセス環境を確保する。もちろん、すべての拠点間を広域LAN接続できれば、安全で快適だが、そこはコストとのバランスになる。利用頻度などを考えて、どの回線を使うのか、選んだ回線の種類にあわせて、もっとも安全でコスト効果の高いセキュリティ手段を施すことが、システム統合におけるポイントとなっている。
システム統合に必要とされるサーバ集約型アプリケーション
ストレージやサーバなどのシステム統合が加速している理由のひとつとして、オープンシステムを取り巻くアーキテクチャの変化も見逃せない。1990年代の前半までは、サーバとクライアントで処理を分担するクライアント/サーバ型コンピューティングが主流であった。この方法では、クライアント側にも処理用のソフトが必要で、そのための運用負担が大きくなっていた。身近なソフトの例としては、Exchange ServerとOutlookの関係がある。インターネットのメールサーバとメールクライアントソフトの関係も同様だ。こうしたクライアントとサーバの関係は、それぞれのアプリケーションが合理的に機能するので、ネットワークを流れるトラフィックの量を最小限にとどめ、効率のよいデータの利用や閲覧が可能になる。反面、もしもシステム全体に修正が発生したときには、サーバだけではなくクライアント側のソフトもすべて更新する必要が生じる。サーバ側の更新は1台だけで済むとしても、メールの利用者が100名いれば100台のクライアント環境を更新しなければならない。しかし、これが、意外と大きな負担になるのだ。例えば、一台5,000円で業者に依頼したとすれば、50万円の出費になってしまう。
それに対して、インターネットのWeb技術を活用したアプリケーションでは、すべての処理をサーバ側で受け持っている。クライアント側では、Webブラウザでアクセスするだけで済むのだ。インターネットのフリーメールもこれと同様の仕組みだといえる。HotmailやYahooメールのように、Webブラウザさえ使用できる環境にあれば、どんな端末からでもインターネット経由でサーバにあるメールが利用できるようになる。この仕組みのように、Webアプリケーションと呼ばれる技術では、クライアントに依存しないで、必要な処理を中央に集約できる。ストレージ統合やサーバ統合は、こうしたWebアプリケーションの利用にとっても、最適な環境といえるのだ。
システム統合から生まれる安全でコスト効果の高いサーバ運用
システム統合は、今後のオープンシステムが向かうべき方向であり、単なるトレンドではない。Webアプリケーションの利用や、運用管理にセキュリティといった観点からも、さらに統合化の流れは加速すると思われる。そのためにも、クライアント/サーバ型アプリケーションからの柔軟な乗換えと、統合環境に適したシステム運用の方法を考えていく時期になっている。将来的には、ユーティリティコンピューティングと呼ばれているように、アプリケーションを使った分だけ対価を払うようになるとか、ホスティングなどはすべて外部に任せて、その企業のコアコンピタンスに集中できるようなITのあり方も提唱されている。
しかし、そうした未来図を実現する前に、まずはストレージやサーバ統合を通して、無駄なサーバ資源の浪費を削減し、運用管理の効率やコストを改善し、安全なシステム環境を整えることが、大きな成果を示すものとなるのだ。
田中 亘氏
筆者のプロフィール/筆者は、IT業界で20年を超えるキャリアがあり、ライターになる前はソフトの企画・開発や販売の経験を持つ。現在はIT系の雑誌をはじめ、産業系の新聞などでも技術解説などを執筆している。得意とするジャンルは、PCを中心にネットワークや通信などIT全般に渡る。2004年以降、ITという枠を超えて、デジタル家電や携帯電話関連の執筆も増えてきた。
■SANとNASの共存
NASは1台のサーバであるため、SANに接続してストレージ共有すれば、ストレージ資源を有効利用できる。双方の利点を活用することで、SANでのファイル共有の問題点と、NAS環境でのストレージ資源の問題点を解消させることが可能だ。
【コラム】「業務改革・改善のためのIT活用とは」
・第7回 セキュリティとコンプライアンスに向けた取り組みの第一歩とは 【Vol.26】
・第6回 業務の効率化と透明性を実現するワークフローが理想 【Vol.25】
・第5回 古くて新しいセキュリティ対策はマネジメントにある 【Vol.24】
・第4回 データこそが個人にとってもビジネスにとっても資産 【Vol.23】
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