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2006年11月時点の情報を掲載しています。
大手企業を中心に、業績の回復および過去最高益を更新するなど、まだら模様ではあるものの、景気の活況感が戻ってきた傾向がある。しかし、一方で勝ち組負け組という明暗が取り沙汰され、格差社会などの流行語も聞かれている。個人や社会的な傾向はともかくとして、企業における競争の優劣や収益力の違いについて考えると、この2,3年の違いは、やはりITの活用力に多くの理由があるように思われる。そして、その差をさらに開こうとするかのように、いま中堅企業でもERP(統合基幹業務システム)導入の好機が訪れている。
スケールアウトとスケールアップ
個人が使うPCとは違い、ネットワークの背後で働くサーバは、一度導入してしまうと、3年から5年は使い続ける。そのため、これまでは3年先5年先を見越して、性能的に余裕のある機器を選ぶことが多かった。また、サーバの入れ替え案件の多くも、処理性能を高くするため、いわゆるスケールアップの目的で機種選定が行われてきた。
しかし、業界ではもうひとつのサーバ拡張の流れが注目されている。スケールアウトという方法だ。これは、単体のサーバの性能を「交換」によって増強するのではなく、並列的にサーバを「追加」していって、増加した負荷を分散して性能を強化する。電車にたとえるならば、はじめに3両くらいで運行して、乗降客が増えてきたら4両5両と増やして対応するような感覚になる。
過去のサーバ用ソフトの多くは、独立したハードウェアの動作環境に依存して性能を発揮するように設計されていたため、単にサーバを横に並べたからといって、処理能力が上がるわけではなかった。しかし、「グリッド技術」に代表される並列処理を活用した負荷分散アーキテクチャが進歩してきたことで、スケールアウトによる性能向上は、かなり現実的なものとなってきた。特に、高性能なデータベースで大量の情報を処理するようなシステム環境では、スケールアウトで対応できるかどうかをはじめに検討するようになってきた。なぜなら、スケールアップ(機器交換)と比較すると、スケールアウトによる機器追加の方が、初期投資を安くできる上に、将来的な拡張も低コストで済むようになるからだ。
スケールアウトを支えるサーバの代表格がブレードサーバ
なぜ、スケールアップよりもスケールアウトの方が、コストパフォーマンスに優れているのか。その理由は、対応するサーバ機器にある。通常、スケールアップによるサーバ機器は、単独で処理性能の高い箱になっている。高性能で高価なCPUを搭載し、大容量のメモリと高速な処理回路を搭載している。そのため、構成するひとつひとつの部品が高く、ハード全体の価格も高価になる。巨木を運搬するために、大型トラックが必要になるようなものだ。
それに対して、スケールアウトに対応したサーバは、あらかじめ裁断した木材を小分けして運搬するようなものなので、軽トラックの台数を増やせばいいようなもの。つまり、低コストの部品で構成されたサーバでも、数で対抗することで力になる。低コストと書くと、性能的に劣るように思われるが、実用性は十二分にある。むしろ反対に、数を用意することで安全性を高める効果も期待できる。もしも、1台にトラブルが発生しても、代替できる予備が多くなるので、耐障害性が向上するのだ。
小型のサーバを数多く設置して、並列処理で性能を向上させる、という目的にとって、最適な設計になっているモデルが、ブレードサーバと呼ばれる機種になる。ブレードとは、刀や板を意味する言葉だが、その名の通りに、1台のサーバ機能を1枚のボードに集約した設計になっている。専用のラック(エンクロージャと呼ばれる)に差し込むだけで、必要な台数分のサーバを簡単に増設できる。また、スペースもとらないので、これまで箱型のサーバが5台10台と転がっていたようなコンピュータ室に導入すれば、フロアはかなりすっきりする。小さくはじめて、負荷が増えてきたらブレードサーバを追加するだけでいいので、運用も楽で管理者の負担にもならない。最近では、高級モデルだけではなく、低価格な普及モデルも登場してきたので、3〜5年前のPCサーバを交換する時期にきているのであれば、価格的にも検討できる範囲にある。こうした背景から、スケールアウトとそれに対応するブレードサーバが、専門家の間では注目されている。そして、その「基盤」にあたるシステム部分から、再構築を検討することが、将来的なIT活用にとって重要だといわれているのだ。
ブレードサーバのメリットとデメリット
いいことづくめのように紹介してきたブレードサーバだが、まったく問題がないわけでもない。そのひとつは、対応するシステムの問題だ。ハードウェア的にはスケールアウトで性能を増強できるようになっていても、現実にはその増設に対応できるデータベースやミドルウェアなどのシステム環境が必要になる。複数台のサーバを複数枚のブレードサーバに置き換えるだけでも、高い家賃の節約にはなるが、その性能を十二分に引き出そうとするならば、スケールアウト対応のグリッド性能などを採用する必要がある。もうひとつは、投資コストの問題だ。複数枚目からの増設になると、コストパフォーマンスに優れた効果を発揮できるブレードサーバだが、1〜2枚程度の利用では、単体の箱型サーバよりも初期投資が高くなることが多い。特に、一度製品を選んでしまうと、それ以降のブレードサーバ増設は、エンクロージャ(設置用ケース)と互換性のある製品を使わなければならないので、最初の選択は慎重に行った方がいい。
それでも、社内のITシステムをブレードサーバにすることは、将来的に考えていくと利点も多い。特に、今後も積極的なIT投資を継続していく成長企業の場合には、どんなソフトウェアやソリューションを構築するとしても、その基盤がブレードサーバになっていると、増強や拡張の余裕が得られる。すでに、データセンターや大手企業のオープンシステムなどでは、ブレードサーバの導入が積極的に行われているが、今後は中堅や中小企業においても、設置場所を節約し将来的な拡張も容易且つ
低コストにするブレードサーバが、注目されていくだろう。
田中 亘氏
筆者のプロフィール/筆者は、IT業界で20年を超えるキャリアがあり、ライターになる前はソフトの企画・開発や販売の経験を持つ。現在はIT系の雑誌をはじめ、産業系の新聞などでも技術解説などを執筆している。得意とするジャンルは、PCを中心にネットワークや通信などIT全般に渡る。2004年以降、ITという枠を超えて、デジタル家電や携帯電話関連の執筆も増えてきた。
■スケールアップとスケールアウト
【コラム】「業務改革・改善のためのIT活用とは」
・第9回 中堅企業に追い風となるERP導入のトレンド 【Vol.28】
・第8回 オープンソースシステムに求められる統合化の波 【Vol.27】
・第7回 セキュリティとコンプライアンスに向けた取り組みの第一歩とは 【Vol.26】
・第6回 業務の効率化と透明性を実現するワークフローが理想 【Vol.25】
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