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2020年7月時点の情報を掲載しています。
世の中で使われているITソリューションは、実行するためのハードウェアリソースがどこにあるかで、クラウドとオンプレミスに大別できる。最近は、インターネットを通じて、必要なリソースを必要な分だけ利用するクラウド・コンピューティングの人気が高まっているが、サーバーなどのハードウェアリソースを自社で管理するオンプレミスにも、機密保持の面やシステム障害に自社で対応できるなど、オンプレミスなりの利点はある。クラウドでもオンプレミスでもない、第3のコンピューティング・プラットフォームとして注目を集めているのが、フォグ・コンピューティングという概念だ。フォグとは霧を意味し、手の届かないところにあるクラウド(雲)ではなく、より近いところにあるハードウェアリソースを活用する分散型コンピューティングモデルである。具体的には、工場や店舗などに置かれたハードウェアを利用して分散処理をするイメージだ。フォグ・コンピューティングでも、クラウドを一切使わないというわけではなく、フォグで処理したデータをさらにクラウドに送って最終的な処理を行うソリューションが一般的だ。生データをそのままクラウドに送る場合と比べて、フォグ・コンピューティングでは、データ通信量を削減できるため、コストの節約につながり、応答速度の面でも有利だ。フォグ・コンピューティングと似た概念として、エッジ・コンピューティングという言葉があるが、エッジ・コンピューティングのほうが、よりモノや生データに近いデバイス、例えばスマートフォンや組み込みマイコンなどを活用するイメージである。フォグ・コンピューティングはシスコシステムズが提唱した概念であり、2015年に同社やArm、Dell、Intel、Microsoft、プリンストン大学により、OpenFogコンソーシアムが設立され、規格の標準化が進められている。
2020年6月に、セガが「フォグゲーミング」と呼ぶ構想を研究開発中であることが明らかにされた。フォグゲーミングは、フォグ・コンピューティングのゲーミング版ともいえるもので、全国のゲームセンターのハードウェアリソースをクラウド的に使うイメージだ。具体的には、ゲームセンターに設置されている業務用ゲーム機のCPUやGPUを流用して、分散処理を行うことで、コストダウンと低遅延を実現するというものだ。プレイヤーは最寄りのゲームセンターにアクセスすることで、自分が所有しているPCなどのハードウェアリソースでは負荷が高い、ハイクオリティなゲームをプレイできるというのが、フォグゲーミングの狙いだ。すでに、クラウドで処理を行い、その結果をプレイヤーの端末に返すクラウドゲーミングは実用化されているが、クラウドゲーミングでは、ネットワーク的に遠い場所に存在するクラウドとやりとりするため、遅延(レイテンシ)が生じやすく、MMORPGなど、多少の遅延が許されるゲームは問題なくとも、FPSのような素早い反応が重視されるゲームには向かないという欠点があった。各地に存在するゲームセンターへのアクスなら、遅延を低く抑えられる。また、ゲームセンターの運営者にとっても、客が少ない時間帯や営業時間外でも、フォグゲーミングの利用者から利用料金を徴収できるという利点がある。
このようにフォグゲーミングは、プレイヤー側にもゲームセンター側にもメリットがある構想だが、現在、各地のゲームセンターに設置されている業務用ゲーム機(中身はほぼPCである)が、そのままフォグゲーミングに対応できるわけではない。セガとしても、フォグゲーミングはまだ研究開発段階の技術であり、その実用化は早くても2021年以降となるだろう。セガは、ゲーム開発・販売を行っている会社であるため、フォグ”ゲーミング”とうたっているが、技術的には、ゲーム以外の用途(AIの学習や推論、新薬創成など)でも、ゲームセンターのハードウェアリソースを活用することは可能であろう。フォグ・コンピューティングは、クラウド・コンピューティングの次に来る技術として目されており、フォグゲーミングがその発端となることを期待したい。
■フォグ・コンピューティングの図
フォグ・コンピューティングでは、近くにあるハードウェアを使って処理を行うため、遅延を減らせる
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