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2009年1月時点の情報を掲載しています。

　この秋に米国で開催されたマイクロソフトの開発者向けイベントで、次バージョンとなるWindows 7の姿が見えてきた。Windows Vistaをベースに、新しいユーザインターフェイスを採用することで使い勝手を高め、広範な普及を狙うというのがマイクロソフトが描くシナリオだ。
　一昨年の11月にリリースされたWindows Vistaは、残念ながらマイクロソフトや業界が期待したようなヒットにはならなかった。Windows XPとの互換性の問題に加え、初期のWindows Vistaが持っていた不具合（ほとんどはSP1で修正されたが）の影響もあり、企業、コンシューマを問わず人気を得ることができていない。さらに2008年最大のヒット商品となった低価格ミニノートPC（その代表的なプラットフォームがIntelのAtomプロセッサを搭載したNetbookである）が、ハードウェアリソースの問題から、ことごとくWindows XP搭載となったのも、Windows Vistaのイメージを傷つける結果となった。Windows Vistaの最大のライバルは、MacOSやLinuxではなく、自社製品のWindows XPだったのである。
　しかしWindows Vistaには優れた部分もたくさんある。強化されたセキュリティ、将来を見据えた高度なグラフィックス、堅牢なドライバモデルなど、開発に要した6年間は無駄に費やされたわけではない。これから登場するUSB 3.0をはじめ、徐々にWindows Vista以降でないと対応できない技術やデバイスも増えてくるだろう。Windows 7がその不人気にもかかわらず、開発のベースにWindows Vistaを選んだのは、こうした先進性を生かすために違いない。
　Windows 7が背負うのは、Windows Vistaが果たせなかった新しいWindowsであるVistaアーキテクチャへの移行だ。そのためにWindows 7は、Windows Vistaとはまったく違う名前を与えられ、フレッシュな外観と操作性を備える。
　その一方で、低価格ミニノートPCへも対応可能なようにインストールサイズの縮小、使用メモリ量の削減が行われる。システムの起動に直接影響しないデバイスドライバ、特に古いものを中心にWindowsのパッケージから外し、Windows Update等によるオンライン提供へ切り替える。画面の描画データのダブルバッファリングをやめて、ウィンドウ描画に必要なメモリ量を削減する、といった変更が行われる見込みだ。
　Windows Vistaに引き続きWindows 7にとって最大のライバルも、やはりWindows XPになるだろう。発売から7年を経て枯れたWindows XPは、それだけで手強い相手だ。と同時にWindows 7は、Windows Vistaについてしまった悪いイメージとも戦わなくてはならない。
　マイクロソフトはWindows 7のリリース時期について、明確な期限を示していない。が、Windows Vistaのリリースから3年後にあたる、2009年末から2010年早々を目指しているのは間違いないところだろう。これからの約1年がまさに正念場というわけだ。
　最近、マイクロソフトのライバルとして、Googleに代表されるクラウドコンピューティング企業が挙げられることが多い。しかし、そうした企業と戦う前に、まず過去の自社製品に勝つこと。それが最もマイクロソフトに求められていることだろう。

元麻布春男
IT系雑誌やインターネットのコラムなどで広く活躍するフリーライター。
執筆歴は15年以上におよぶ。1960年生まれ。

【IT Trend Watch】

・第6回　SDD = 半導体ドライブが牽引するIT機器市場の未来　【Vol.41】

・第5回　モバイルブロードバンド戦国時代三つ巴の覇者はどこ？　【Vol.40】

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