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巻頭特集 ビジネスチャンスを獲得する クラウドを味方につけるシステム改善の提案
2010年1月時点の情報を掲載しています。

クラウドコンピューティングが注目を集めている。多くのハードメーカーやソフトメーカーが、クラウドコンピューティングに関するさまざまなメッセージを発信し、数々のシステム提案やビジネスモデルを提唱している。その一方で、クラウドコンピューティングの普及は、企業内のシステム構築を不要にし、IT産業全体に与える影響が大きいのでは、とも懸念されている。そんな中で、クラウドコンピューティングをIT商材として味方につけるシステム改善の提案について検証した。



2つのクラウドコンピューティングがビジネスを分ける
 コスト削減やITによるビジネスの積極的な推進という目的から、クラウドコンピューティングの活用は、多くの企業にとって重要なテーマとなっている。マスコミなどに取り上げられるクラウドコンピューティングの姿は、通信回線を通してインターネット上にあるサービスを自由自在に活用し、低価格で高効率のI Tを実現できる、というものだ。しかし、現実のクラウドコンピューティングにおける活用状況は、まだ十分なサービスを提供できる状態には至っていない。それだけに、IT商材としてのビジネスチャンスは数多く存在する。その可能性を探っていくために、まず2種類のクラウドコンピューティングについて整理しておこう。
 一般的にクラウドコンピューティングというと、社内外を問わずにPCや携帯端末などからインターネットにアクセスして、営業支援や各種のビジネスアプリケーションを利用するイメージが浮かぶ。
 しかし、これはクラウドコンピューティングの一面でしかない。サービスがインターネット上で公開されているクラウドコンピューティングは、最近では「パブリック・クラウド」と呼ばれることが多い。その一方で、「プライベート・クラウド」と呼ばれるクラウドコンピューティングもある。こちらは、クラウドコンピューティングの利便性を企業または企業グループ内の情報システムで実現しようという取り組みだ。これまでにも、イントラネットによる社内ポータルや電子メールの利用などは行われていたが、その利便性を向上させるだけではなく、サーバ仮想化技術を導入して、システム統合や柔軟なリソース配分などを可能にする取り組みもプライベート・クラウドの構築だと捉えられている。そこで、この二つのクラウドコンピューティングのそれぞれのメリットや課題について整理してみよう。


パブリックとプライベートそれぞれのクラウドコンピューティングの特長
 パブリック・クラウドは、「所有から利用へ」というITシステムのトレンドを形にしたサービスの一つだといえる。話題や注目度の高いサービスとしては、営業支援系のセールスフォース、ウェブメールやグーグルアプリケーションを提供しているグーグル、また、マイクロソフトのBPOS(Business Productivity Online Suite)はメールやグループウェアなどのサービスを展開。さらに、サービス基盤そのものを提供しているアマゾンなどが挙げられる。
 パブリック・クラウドでは、その提供するサービスの形態によって、SaaSやPaaS、IaaSなどと区分されている。SaaSは、Software as a Serviceの略称で、以前はASPと呼ばれていたこともある。インターネットなどのネットワークを介してソフトウェアをオンラインで利用するもので、一般的にクラウドコンピューティングというとS a a Sをイメージする例が多い。
 その利用形態も、ウェブメールのようなものから業務アプリケーションまで多岐にわたる。SaaSのメリットは、特定のハードウェアやソフトウェアなどを導入しなくても、インターネットに接続できる回線と端末さえあれば、ウェブブラウザなどから手軽に利用できる点にある。その利用料金も、使った分だけ支払うケースが多く、導入が容易でコストも明確なので効率が良いといわれている。
 その一方で、不便な点もある。企業内で利用するID管理との不整合や、オープンであるが故のセキュリティ対策の不備など課題も多い。さらに、汎用的なサービスを提供する目的であることから、特に業務アプリケーションなどは個々の企業が求める規格に合致しない例が多い。すでに財務会計や販売管理などのSaaSも登場しているが、勘定科目が異なっていたり、自社の伝票形式に合わないなど、利用のために社内の業務プロセスやフォーマットの変更を余儀なくされる例もある。
 こうしたことから、S a a S型のクラウドコンピューティング利用に踏み出せない企業も多い。その課題を解決するために、Paa Sというサービスも登場している。PaaSは、SaaSのSがPlatformのPに変わったもので、単なるアプリケーションではなく、プラットフォームとなる開発環境を提供したり、アプリケーションのカスタマイズを可能にするサービスだ。さらに、ソフトウェア環境ではなく、仮想化されたサーバなどの形でサービスの実行環境だけを提供するIaaS(Infrastructure as a Service)というものも登場している。IaaSは、SaaSやPaaSに比べると自由度はかなり高いが、基本的にはこれまでのレンタルサーバやVirtual Private Serverに近いものになり、実際に利用するためには何らかのシステム開発やインテグレーションなどが必要になる。
 つまり、パッケージ利用がSaaSで、カスタマイズ環境がPaaS、そして基盤のみの利用がIaaSという区分になる。これらはすべてインターネットを経由したパブリック・クラウドとして利用することを前提としている。
 それに対するプライベート・クラウドは、SaaSやPaaSなどの仕組みを一企業内または企業グループ内の基盤上に構築するイメージになる。パブリックで提供されているサービスに比べて、自社のさまざまなアプリケーションやワークフローなどとの連携が可能になり、クラウドコンピューティングの利便性を社内システムで実現しようというものだ。システム構築においては、仮想化システムの導入などと並行してサーバ統合を推進する例が多い。現在、多くのハードベンダーはプライベート・クラウドの企業内導入を推奨するメッセージを発信している。パブリック・クラウドに対して、プライベート・クラウドの推奨は、ITベンダーにとって有用な商材になるからだ。


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■パブリック・クラウドとプライベート・クラウドの違い表
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