景気停滞期に入り、サーバやPCなどのIT機器がこれまでのように売れなくなって いる中で、パートナー様は何をどのように訴求していくべきなのか。マンパワーを 強化する「人材育成」はその答えの一つだ。「人材育成」という新たな武器でセール スを行うことで、これまで接点のなかった総務や人事への営業の機会も出てくる だろう。また、IT機器の販売プラス人材育成という付加価値を付けた差別化も可 能となる。今こそ伸長する人材育成ビジネスが狙い目だ。 |
世界的な景気の低迷により、多くの企業で「コスト削減」が叫ばれている。この不況下で、生産性を向上させるためには、「現有の人材リソースをいかに最大限に活用できるかどうか」がカギになる。人材教育や研修などを活用し、いち早く一人ひとりのマンパワーを強化することが急務と言えるだろう。
「不況下において、企業がより効率的に収益を上げるためには、2通りの方法が考えられます。1つめは、ITを活用して業務効率を向上させるIT投資、2つめは、一人ひとりのマンパワーを強化する人材育成です。コスト面を考えた場合、大規模なIT投資を実現することが難しいというのが実情です。そこで現在、人材育成が注目されています」と大塚商会技術本部生産効率推進部兼エデュケーションセンター部長広瀬弘文氏は語る。
いくら人材教育がIT投資よりコストがかからないといっても、不況下ではできる限りの支出は抑えたいものだ。しかし広瀬氏は、「不況の今だからこそ、積極的に人材教育に取り組まなければならないと考える経営者が、少しずつだが増えている」という。その理由を尋ねると、「一部の企業で、余裕ができた時間を人材教育に活用して、社員をスキルアップさせようという動きが見られます。そのような企業の場合、景気に回復の兆候が見られたときにスタートダッシュしようと考えているため、人材教育を先行投資と捉え積極的な投資を行っています」と広瀬氏は積極的な人材教育への投資の現状について語る。
現在の人材育成のトレンドは大きく分けて3つに分類される。(1)技術教育、ヒューマンリテラシー教育(一般社員、技術者への教育)、(2)企業全体に関わるビジネスルールの習得(情報セキュリティ、コンプライアンス)、(3)職位に求められる能力開発(新入社員、中間管理職、マネージャー研修など)。
(1)技術教育、ヒューマンリテラシー教育では、最近はコミュニケーション能力やリーダーシップなどヒューマンリテラシーに関する教育が大きなトレンドになっている。仕事のプロフェッショナルを育てるためには、業務に対する高度な知識が必要だ。しかし、知識の徹底ばかりに注力し、個々の能力が発揮できないという課題をどこの企業も抱えている。その点を解決する手段として、生産性をより効率的に向上させるためには、知識教育プラスヒューマンリテラシー教育が不可欠と言える。
(2)企業全体に関わるビジネスルールでは、2009年4月入社予定の新社会人などを対象にトレンドマイクロが実施した「情報セキュリティ意識に関するアンケート」(P20 グラフ1)において、興味深い数字が出ている。調査結果によれば、新社会人の96.5%が「就職を機に情報セキュリティ意識・スキルを高めたい」と思っており、自身の情報セキュリティ意識やスキルが「社会人として通用する」と思っている人は1 3 . 9 %しかなく、残りの5 6 . 4 %は「通用するかどうか不安」、27.4%は「通用しない」と回答したとのことだ。つまり、新社会人のほとんどが情報セキュリティなどのスキルを高めたいと思っているのだ。企業側は、このニーズに応えるためにもセキュリティなどに関する人材教育を行う必要がある。
(3)職位に求められる能力開発では、「新入社員や若手社員に対しての教育はどこの企業も実施していると思いますが、彼らを育てる技術というのは、みなさん案外知らない」と広瀬氏は中堅社員や管理職への教育の必要性を語る。うまく部下を育てることを教育すれば、それが自社内の文化になり、長い間効果が続いていくのだ。 |
■図1 不況下の人材育成の動き
■グラフ1 新社会人の情報セキュリティ意識
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