2010年11月9日、国際エネルギー機関(IEA)が発表した、2010年版「世界エネルギー見通し」では、各国が現行のエネルギー政策を継続した場合、2035年には原油価格が2009年の4倍になると報告されている。国内においても、環境に関わる法制度は年々厳しさを増し、大規模企業のみならず、中堅・中小企業でも電気・CO2・紙の使用量削減を含めた環境対策が急務といえる。IT投資が回復傾向にある今、環境対策を企業全体でのコスト削減のチャンスと捉え、買い控えられていたIT機器のリプレースなどをご提案できる。エンドユーザ様のコスト削減・ブランド力向上を実現する環境対策ソリューションをご紹介する。 |
多くの中小企業にとっては、改正省エネ法などへの対応も含めて環境対策は重要という理解はあるものの、コストの点を心配して導入が遅れる例も少なくないという。
大塚商会で環境対策ソリューションを担当する、ODSプロモーション部 北堀利明は、「中小企業へのご提案時に喜ばれるのは『初期費用がかからない』ことです。初期費用がかかったとしても『短期間でコスト削減が達成できる』ものもポイントが高いですね。さらに、導入によって、人的負担が減って、運用の手間が削減できるなど、わかりやすい効果が期待できるものも好まれます」と話す。
「お客様に環境対策のソリューションをおすすめする際には、あまり『環境』を前面に出さず、『コスト削減が可能で環境にも効果がある』というような話し方を心がけています。中小企業の方は、コスト削減につながることがわかってはじめて、環境ソリューションの提案を受けて入れてくれるところがあります。ITソリューションの運用で業務効率をあげて、人件費を削減しながら電力使用量も削減できるという複合的なものが喜ばれます」。
2010年4月の改正省エネ法の施行で、これまでの工場・事業所単位でのエネルギー管理から、企業全体でのエネルギー管理へと変更になり、詳細な報告を義務付けられる「特定事業者」が大幅に増加した。
「特定事業者」に該当するのは、年間のエネルギー使用量が1,500kl (原油換算)以上の企業。このため、1カ所の工場で大量に電力を消費する製造業だけでなく、コンビニエンスストアやフランチャイズチェーン店など、1カ所は小規模でも国内に多くの事業所、拠点を持つ大企業は、正確なエネルギー使用量を計測する必要がある。
経済産業省が所管する省エネ法に加えて、環境省所管の「地球温暖化対策の推進に関する法律」(温対法)への対応も必要。こちらは、エネルギー由来のCO2以外の温室効果ガス(メタン、一酸化二窒素等)などの排出量に関する報告を義務付けている。
東京都では、国よりもさらに厳しい環境確保条例が施行されている。省エネ法、温対法は、報告は義務付けられているものの、あくまでも努力目標に過ぎないが、環境確保条例には罰則もある。都内で1,500kl (原油換算)以上の電力消費量がある事業所を対象に、2010〜14年間の5年間の平均で、オフィスビルには8%、工場では6%の削減を義務付けている。自力でこれらの削減義務が達成できない場合は、東京都から排出権を調達して達成しなければならない。条例違反者には、50万円の罰金や違反事実の公表などの罰則が設けられるなど、これまでになく厳しい内容となっている。
この条例の対象となるのは、都内で約1,300カ所(オフィスなど業務系施設:約1,000カ所、工場など産業系施設:約300カ所)とみられているが、オフィスビルの場合は、テナント事業者にもビルオーナーの削減義務達成への協力が定められており、中小企業にとっても環境対策は無縁ではない。
改正省エネ法についても、東京都の環境確保条例でも、自社が該当するかどうかを判断するためには、年間の電力消費量データを取得することが必要になる。
すでに特定事業者として対応環境対策が進んでいる大規模企業などでは、全国に分散する拠点・工場・オフィスビルの各フロアの消費電力量を集計するために、どのようなことを行っているのだろうか。
北堀は手間をかけずに報告書が作成できる電力消費量データの入力、計算にはOSKが提供する「エナジーカルク」が効果的という。
「弊社も全国で約140拠点ある省エネ法の特定事業者です。新しく記録をと取り始めなければならなかった事業所も多く、それぞれが毎月の請求書を集めて記録・集計し、報告するなど、かなりの負荷がかかりました。エナジーカルクを利用することで負担が軽減されています」と話す。
エナジーカルクは、これまでASPで提供してたいへん好評を得ており、2011年12月から、ビジネスパートナー事業部
(以下、BP事業部)が推進するSaaS販売プラットフォーム「BP PLATINUM Type-S」で取り扱いが開始される予定だ。企業の全事業所のエネルギー使用量(電気・ガスなど)をWebブラウザから入力するだけで、年間のエネルギー使用量が集計され、改正省エネ法と東京都環境確保条例で定められた様式でデータ出力できる。
月額課金方式のため、初期投資コスト・運用コストともにたいへん低くなっているのもポイントが高いる。
では、実際に電力消費量を削減するために、即効性のあるソリューションはあるのだろうか。北堀は「Web会議システムとeラーニングがおすすめ」と話す。
「Web会議システムの最大のメリットは、複数の拠点を結んで会議を行うことにより、人の移動に伴うCO2の排出を防げることです。さらに新幹線や飛行機など、交通費のコストを抑えられます。会議に出席する従業員の賃金も時給換算すれば、費用対効果が非常によく見えるソリューションです」
かつてのWeb会議(テレビ会議)システムは、導入に伴う初期投資が非常に高額だったが、ブイキューブ提供の「V-CUBEミーティング」など、インターネットにつながったPCがあればシステム導入費なし・インストール作業費なしで利用できるサービスが増加している。
北堀は、「現在のWeb会議システムは、時間単位でシステムを借りることができ、初期導入・運用コストともにたいへん低額です。契約も1時間単位からと、使いやすい形で提供されています。これまでコスト面から二の足を踏んでいた中小企業でも、少ない負担で試すことができます」と説明する。
Web会議システムでは、会議の記録を動画として保存できる機能もあるため、社内での情報共有が進むというメリットもある。
エナジーカルクやV-CUBEのようなSaaS型のサービスは、初期投資コストが低いため中小企業におすすめしやすい。BP PLATINUM Type-Sで、各種Sa aSをご案内しているので、ぜひチェックしていただきたい。
eラーニングの導入では、Web会議システムと同様、集合研修にかかる受講者・講師などの人の移動を、テレビ会議と同様に削減できる。さらに、研修時に必要なテキストが不要となるため、ペーパーレスの効果も期待できる。
「企業内での通常の教育、研修などは、多くの拠点から人を1カ所に集めて、講師を呼んで、テキストを配布して、などの形で行われますが、eラーニングであれば、移動する必要もなく、従業員が、それぞれのタイミングで受講できます。弊社では、eラーニングの導入で社内教育に関するコストを10分の1に減らすことができました」と実際の導入効果を北堀は説明する。
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■改正省エネ法で年間のエネルギー使用量が1,500kl以上となる事業者の目安
■改正省エネ法と東京都環境確保条例
改正省エネ法では努力目標とされるエネルギー消費原単位が、東京都の環境確保条例では義務とされる。
■エネルギー量の集計・報告書作成のコストを低減するSaaS
■移動費の削減とペーパーレス会議でコストを削減
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