8月25日に発売された、a u b y K D D Iのスマートフォン「Windows Phone IS12T」。その基本ソフト「Windows Phone OS 7.5」のUI (ユーザインターフェース)に、Microsoftは「Metro(メトロ)」という新方式を採用した。正式名称はWindows Phone Design Systemだが、開発時のコード名だったMetroのほうが販売開始後も広く使われている。
一目で分かるメトロの特徴は、ウィンドウやアイコンがなく、大きな正方形や長方形が並ぶ平面的なトップ画面の構成だろう。これはタイルと呼ばれる操作用アイテムで、正方形のものは縦横とも173ピクセルの大きさ。長方形のタイルはその2枚分になっている。タイルの数が多くてトップ画面に入りきらない場合は、画面を指で上下にスクロールさせれば現れてくる仕組みだ。タイルをタップすると、対応するアプリケーションの画面にジャンプする。タイルの内容は書き替えることもでき、不在時着信の件数や電子メールの未読数を示したり、画像データをサムネールで表示するなど、Metroではダイナミックな表示が可能だ。
従来型のメニューは、トップ画面の右側に隠されている。これも上下スクロール型なので、ドラッグやフリックで目的の場所に移動し、アプリケーションや機能をタップすればよい。アプリケーション画面の表示方式には、複数のページを左右に並べた「パノラマ」や、最上部の行でグループを選択してその中から対象を選ぶ「ピボット」などがある。
実は、Windows Phoneに先立つWindows MobileやWindows CEなどのOSでは、MicrosoftはWindowsに準じたUIを採用していた。画面はウィンドウになっていて、アプリケーションを起動するには、ウィンドウ内のアイコンをクリックするか、スタートボタンでメニューを開いて選ぶというスタイルである。PCの操作に合わせたほうが、「ユーザフレンドリー」というのが当時の判断だったのだ。
それがMetroへと変わった理由は、マルチタッチ対応のタッチパネルの普及にある。Windows MobileやWindows CE時代の感圧パネルは、スタイラスと呼ばれる「ペン」での操作が前提の方式なので、ウィンドウとアイコンを使う方式が適していた。しかし、複数の指で操作するマルチタッチの時代になると、ウィンドウとアイコンではデバイスの能力をフルに引き出せない。そこで、より直感的なMetroのデザインが登場となったのだ。
Microsoftは、今後、Metroの方式を他のプラットフォームにも採用していく方針だ。すでに、Windows 8(Windows 7の後継OSの開発コード名)のUIにもMetroを採用すると公式に発表。マルチタッチ対応のタッチパネルを備えたPCなら、スマートフォンと同じ操作ができるようになる。Microsoftは、スレートPCの普及に努めるとしているので、一般的なビジネスパーソン向けのPCは指で操作するタイプが主流になる可能性もある。
ただし、Windows 8が主流となっても、キーボードとマウスを使うこれまで通りのUIは残る。タイルの一つが従来型ウィンドウに割り当てられていて、それを選べば、Windows 7までと同じウィンドウに切り替わるのだ。タッチパネルを備えていないPCの場合は、起動時から従来と同じウィンドウ表示にする設定も可能になるに違いない。操作方法の変更は、生産効率に大きな影響を及ぼす。選択肢が増えることで、パートナー様には、エンドユーザ様の業務効率を高める製品の選択が求められる。