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巻頭特集 新年度ビジネス提案のキーワード その課題、仮想化が解決します!
2012年3月時点の情報を掲載しています。

実際とは異なる仕様のハードウェアが存在するかのようにソフトウェアに見せる、“仮想化”。単に最新・最先端であるだけでなく、ビジネス現場の課題を解決するための即戦力として、すでに多くの成功例を生み出している技術だ。例えば、災害が発生しても事業を継続できるようにする事業継続計画(BCP)、TCOの削減や電力制限令への対応を可能にする節電、面倒な管理を手軽に導入できるようにするIT資産管理、そして、事業継続性確保やテレワークのための在宅勤務など。これらの具体的な課題の解決に仮想化とそれに基づくソリューションが役立つのである。本特集では、どのようなケースにどのようなソリューションが使えるのかを具体的な事例を交えながら紹介したい。



実際とは異なる仕様のハードをソフトに見せられる「仮想化」
 2000年前後から、WindowsサーバやWindows PCでも仮想化ソフトウェアが使われるようになってきた。「仮想化」とは、実際とは異なる仕様のハードウェアが存在するかのようにソフトウェアに見せる技術のこと。主な方式には、分割(一つの物理ハードウェアを複数の論理ハードウェアとして見せる)、集約(複数の物理ハードウェアを一つの論理ハードウェアに統合)、エミュレーション(他の物理ハードウェアと同じ特性を持つ論理ハードウェアとして振る舞わせる)の3種類がある。
 このほか、対象となるコンピュータの種類に基づく「サーバ仮想化」「クライアント仮想化」「デスクトップ仮想化」という分類法もある。
 サーバ仮想化とは、物理サーバを論理サーバに分割または集約すること。高性能の物理サーバを多数の論理サーバに分割して使用率向上と費用削減を目指す、というのが典型的な使い方だ。代表的なサーバ仮想化ソフトウェアとしては、VMware(ヴイエムウェア)、Hyper-V(日本マイクロソフト)、Xen(シトリックス・システムズ・ジャパン)の3製品がある。
 また、クライアント仮想化では、物理PC内に複数の論理PCを作り出す。主な用途は、異なる種類のOSを同じPC内で使い分けられるようにすること。Windows 7から使えるようになった「XPモード」(Windows 7上に論理的なWindows XPを作成)やMacOS Xに添付されている「Boot Camp」(Mac上に論理的なWindows PCを作成)が、この典型例だ。
 一方、デスクトップ仮想化では、PC用Windowsをサーバ上で稼働させ、それをネットワーク経由でPCから利用するという使い方をする。最大の利点は、PCのローカルディスクにソフトウェアやデータを置かなくて済むので情報漏えいのリスクがなくなること。自宅のPCでもオフィスと同じ作業ができるので、災害時の事業継続策としても期待される。


サーバ統合、仮想専用サーバ、クラウドの基礎技術としても活躍
 さらに、仮想化はコンピュータの高度な使い方を可能にするための基礎技術としても活躍する。
 例えば、サーバ仮想化を利用したサーバ統合。設置スペースを節約してオフィス賃料やデータセンター利用料を削減できるほか、サーバ台数を減らすことによって初期費用や電気料金も抑制できる。
 最近、注目が集まるクラウドコンピューティングは、仮想化されたサーバをさらに大規模にしたものに相当する。クラウド事業者が提供するサービスは、ハードウェアに近い下位層から順に、IaaS(論理ハードウェアの貸し出し)、PaaS(OSやミドルウェアも貸出)、SaaS(アプリケーション機能を貸し出し)の3種類。このうち、IaaSを実現するための基礎技術として、サーバ仮想化、ストレージ仮想化、ネットワーク仮想化のそれぞれが使われている。
 今回の特集では、「BCP」「節電/コスト削減」「資産管理」「在宅勤務」といった4つのキーワードごとに、実際に導入された事例を参考にしながら仮想化について紹介したい。パートナー様のご提案の参考となれば幸いである。


提案キーワード/ BCP  事業継続(BC)を仮想化が実現遠隔地のバックアップサイトで業務システムを短期に再開させる
 昨年起きた東日本大震災をきっかけとして、多くの企業が「事業継続性(BC:ビジネス・コンティニュイティ)の確保」に取り組んでいる。
 事業継続性とは、災害などに遭っても事業を継続できること。マンハッタンのワールドトレードセンター爆破事件やアメリカ同時多発テロ事件の際、事前の準備をしていた企業が短時間に業務を再開できたことから、世界的に注目されるようになった概念だ。
 復旧に主眼を置くディザスタリカバリ(DR)に対して、あらかじめ別の場所に設けておいた施設を使って業務を再開することがBCの目的だ。BCを確保するための計画が事業継続計画(BCP)、そのBCPを常に実現可能な状態に保つ活動が事業継続管理(BCM)と呼ばれる。
 エンドユーザ様が、事業継続性について検討中であれば、BCPは業務とITの両面について策定するのが一般的だ。そしてITについてのBCPを策定する際は、データとアプリケーションを運用するサイトをメインサイトから離れた場所に設けることがポイントになる。従来は50〜100km程度離せば十分とされていたが、東日本大震災では被害がきわめて広い範囲に広がったことから、現在では数百kmの距離が妥当とされるようになった。仮に300kmを目安とすると、東京からでは仙台・新潟・名古屋以遠にバックアップサイトが必要となる。


BCB策定の一環でSaaSの導入を決断 モデル ケース.1
 モデルケース1のエンドユーザ様は、クライアントPCのOSバージョンアップ時にBCP策定の一環として、業務アプリケーションにSaaSの利用を決断された。通信環境とノートPCやスマートデバイスがあれば、会社や外出先、自宅などの場所を問わずにメールやオフィスソフトのサービスが利用できる点に興味を持ったとのこと。初期導入費用に大きな負担もなく、月々のライセンス料で運用できる点や、保守管理費用を削減できる点も高く評価されたようだ。
 情報系システムと業務アプリケーションは、SaaSの利用が始まったが、開発環境として利用していたミドルウェアやデータベースはSaaSへの移行が難しい。当たり前だが、自社で開発したシステムは、SaaSでは提供されていない。使い慣れた開発環境や蓄積されたデータを活用できないと、作業効率はあきらかに悪くなる。このままオンプレミスで運用し、外部からのアクセスには、リモートコントロールでの対応も検討したが、ミドルウェアのサポートが終了することもあり、IaaSによる仮想化環境に移行を決めた。その理由は、仮想化環境であれば、新しいハードウェアに対応していないミドルウェアも継続して利用でき、災害対策としても十分だと考えたからだ。今後の方針として、開発環境は、当面仮想化サーバ上で運用することとし、新たなシステムへの移行をパートナー様と検討をしている。

※SaaS(Software as a Service)とは、クラウドで実行されている業務アプリケーションをインターネットを通じて共同利用する形態のこと。


クラウドへの差分バックアップ モデルケース.2
 モデルケース2のエンドユーザ様は、データのバックアップ体制に不安を持っていた。長年、使い慣れたテープによるバックアップを続けていたが、機器の消耗が激しくなり、そろそろ限界を感じていたのだ。テープによるバックアップは、コスト的に有利な反面で、バックアップには長時間を必要とする。
 例えば夜中に自動バックアップするにも、停電や機器トラブルが起こった場合、バックアップは行われない。また、社内でバックアップを行う場合、大規模な震災時には、テープそのものが被災する可能性がある。パートナー様は、これらの点を確認したうえで、クラウドを活用したリモートバックアップを提案した。
 現在のバックアップサービスは、重複排除や圧縮機能が進化し、変更や追加されたデータを瞬時にバックアップする「差分バックアップ」が主流となっている。最初にすべてのデータをバックアップしてしまえば、日々のバックアップは、差分ファイルだけで済む。そのため作業時間は、ほんの数分。驚くほど短時間で完了する。
さらにサーバを仮想化するとバックアップの管理工数の削減となる。複数のサーバをバックアップする場合、サーバごとに設定や管理を行わなければならないが、サーバを仮想化して集約してあれば、仮想マシンをまるごとバックアップする「スナップショット機能」が利用できる。
 この機能はファイル単位ではなく、仮想マシンのシステム全体をイメージコピーする方式なので、仮に災害などで、サーバを復旧する場合でも、仮想マシンのイメージを別の環境にコピーするだけで業務を復旧できる。OSのインストールや設定は必要なく、ハードウェア構成が異なっていても稼働できるのがメリットだ。もちろん重複排除によるバックアップにも対応している。
 モデルケース2の例では、エンドユーザ様が日頃思っていたバックアップに対する不満を感じ取り、エンドユーザ様が他に相談する前に提案できたことが勝因だった。現在、エンドユーザ様はバックアップシステムに非常に満足し、パートナー様と良好な関係を継続しているとのことだ。


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表

■モデルケース 1 「従業員約100名の製造メーカー」
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■モデルケース 2 「従業員約100名の法律事務所」
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【バックアップサービス】
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Backnumber

【巻頭特集】

・エンドユーザ様とパートナー様の躍進の年へ 激変したITビジネス2012年の商流を占う【Vol.60】

・クラウドサービスの真打ちが登場!『たよれーる Office 365』から始まるビジネスチャンス 【Vol.59】

・クラウド時代の新ビジネススタイル スマフォ&タブレットの導入決断 【Vol.58】

・オフィスの節電は限界に達しているのか? 今すぐ役立つ節電対策チェックポイント 【Vol.57】



   
 
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