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巻頭特集 エンドユーザ様とパートナー様の躍進の年へ 激変したITビジネス2012年の商流を占う
2012年1月時点の情報を掲載しています。

転進は余儀なくされたが、見るべき前進もあった。
2011年のITビジネスの成果は、この一言にまとめられそうだ。「転進」とは、3月11日に起きた東日本大震災によって、業務継続(BC)と災害対策(DR)が最優先のテーマとなった結果、他の分野へのIT投資が先送りや延期されたこと。しかし、世界的にはクラウドサービスの普及やビッグデータの活用準備が着々と進んでおり、その影響は日本のITビジネスにも及んでいる。また、タブレット端末やスマートフォンをビジネス用のクライアント端末として使う動きも加速中だ。ノートPCを置き換えるまでには至らないが、用途に応じた使い分けは今後さらに進むことだろう。



[BC/DR対策]大規模災害から企業ITを守る方策が最優先の課題に
 2011年のITビジネスは、前年からの流れを受けて始まったものの、大きな災害によって進路修正を余儀なくされた。3月11日の東日本大震災により、震源地に近い地域は、地震と津波による大きな被害を受け、復旧・復興の取り組みは、今もなお続いている。
 このため長期化が予想される電力不足への備え、事業継続(BC)と災害対策(DR)への対応などが最優先の課題となった。
 特に大きな意味を持つのは、多くの企業が「普通のビルに設けたサーバルームでは、大規模災害に耐えられない」と理解したこと。地震、津波、停電によってサーバが稼働不能になった企業は数知れないが、商用のデータセンターやクラウドサービスで大きな障害が発生したという話は聞かない。大災害に備えて、IT機器や設備の全部または一部を商用データセンターやクラウドサービスに移そうと考える企業が増えるのは当然の流れだ。東日本大震災以後、クラウドサービス、ホスティング、ハウジングのどれもが活況を帯びている。
 同じ理由から、データベースなどの重要なビジネスデータの複製を遠隔地に保管しようとする企業も増えている。仮にメインのサーバルームやデータセンターが被災しても、データさえ残っていれば、短期に業務を再開できるからだ。被害が数百kmの範囲に及んだ東日本大震災並みの巨大災害に備えるには、保管場所も遠隔地にならざるを得ないため、高速データ回線を利用したリモート複製やリモートバックアップが必要となる。


[クラウド]クラウドは多様化し、ハイブリッドが主流に
 BC/DR対策は、数年前から進行していたクラウドコンピューティングへの移行を推し進める強い追い風になっている。ただ、元々のクラウドが「インターネットのどこかに存在するIT資源」という意味合いを持っていたのに対し、BC/DR対策用のクラウドではデータセンターの所在地をはっきりと示すのが一般的だ。これはメインサイトからの距離が分からなければ、対策として有効かどうかを利用者が判断できないためだ。
 クラウドサービスの利用形態も、ますます多様化してきた。パブリッククラウドのSaaSを利用する形態だけでなく、自社または同一企業グループの専用環境をプライベートクラウドとして業者に運用してもらうスタイルや、社内にあるオンプレミスのシステムとパブリッククラウドを連携させるハイブリッドクラウドも増えている。このまま推移すれば、数年後には、クラウドはごく当たり前のIT環境の一つという位置付けになることは確実だ。
 そうした将来予測を基に、大手の商用データセンターは、事業の拡張をさらに加速している。施設については、大電力を必要とするブレードサーバに備えて給電能力の増強や、冷却効率を高めるために外気空冷方式を併用するといった動きが盛んだ。高電圧直流給電(HVDC)方式もようやく普及期を迎えつつある。


[節電対策]UPSやLED照明ノートPCの飛躍
 原子力発電所が被災したことで、電力の供給が不足し、多くの企業の生産活動に支障をきたした。その中で、緊急の対策として注目されたのがUPS(無停電電源装置)の導入だ。製品に対する多少の誤解はあったものの、新規の導入需要と、置き換え需要が高まった。
 また、交換するだけで節電効果のあるLED照明も躍進の年となった。LED照明は、節電というネガティブな印象を「明るく節電に貢献」というポジティブなイメージに変えたという意味でも評価されている。
 節電対応製品としては、LEDを採用し、消費電力を大幅に低減したモニタや待機電力をカットするプリンタ、未使用時には、スイッチを切るプロジェクタなども発売されるなど、節電機能が強化されたことも記憶に新しい。
 数ある節電対応製品の中でも主役となったのは、ノートPCだ。電源供給のピーク時に節電できるピークシフト機能の搭載が注目された。現在のノートPCは、オフィスで使うためのデスクトップ型並みのものから、一回の充電でまる一日使える省電力タイプのものまで、豊富な選択肢がラインアップされている。
 2012年、ノートPCの“改良”が進むのは確実。その一つが、さらなる薄型化・軽量化・長時間駆動を目指したUl t rabookというノートPCのジャンルだ。Windows 8(次期Windowsの開発コード名)を搭載したタブレット型の開発も鋭意進められている。Windows 8にはタッチパネル対応のユーザインターフェース「Metro UI」が標準装備されるので、業務アプリケーションの中にもこの新ユーザインターフェースを積極的に利用するものが増えると見込まれる。


[仮想化]すべてのITリソースで仮想化と統合が進む
 サーバ、ストレージ、ネットワークといったITリソースは、仮想化と統合が進んでいる。これまでは、サーバだけを仮想化・統合する例が多かったが、現在では仮想化対応のストレージやネットワーク製品も増え、システム全体を容易に仮想化・統合できるようになった。
 その当然の帰結として、サーバもストレージも高性能化に拍車がかかる。少数の高性能機で統合による利益を得つつ、その中に多数の仮想マシンや仮想ディスクを作り出すことによってスケールアウト拡張と同じ効果を見込めるというのがその理由。そのため商用データセンターに置くサーバの場合は、集積度が高いブレードサーバが好んで採用される。
 ストレージについては、iSCSI対応ストレージとネットワーク接続ストレージ(NAS)の人気が高まってきた。その理由は、iSCSIやNAS用の配線となる10Gbpsイーサネットが安価となったからだ。また、管理コスト抑制を望む利用者の声に応えて、手間のかからないアプライアンス(専用機)も多数登場。バックアップ/リストアの高速化と容量圧縮に役立つ重複排除(デデュープ)機能を備えた製品も増えている。
 仮想化・統合の普及にともない、運用管理ソフトウェアもそのほとんどが仮想化対応になった。そうした製品なら、仮想マシンの稼働状況だけでなく、物理サーバと仮想マシンの関係や業務アプリケーションと物理サーバ/仮想マシンの関係についても一元的な監視・管理が可能。「仮想化・統合したら管理工数が増加した」という悲劇は避けられる。
 ネットワークの仮想化について、2011年には新しい動きがあった。ネットワーク構成などをソフトウェアで自在に変えられるソフトウェア定義ネットワーク(SDN)の嚆矢として、OpenFlow対応製品が日米のメーカーからリリースされたのである。本格的な普及は、2012年以後になる見通しだ。


[在宅勤務]脚光を浴びるテレワークSNSの利用も浸透した
 また、BC/DR対策の一環として、テレワーク(在宅勤務)も再び脚光を浴びることになった。従来はワークライフバランスの観点から提唱されてきた働き方だが、ネットワークを活用して自宅などで仕事をすれば大規模災害時の業務継続にも役立つからである。
 そのために必要となるのが、ノートPCやタブレット端末、携帯電話の3G回線やWiMAXを使ってインターネットにアクセスするためのモバイルネットワーク機器、リモートアクセス用のソフトウェアとセキュリティツール、Web会議システムなど。予備の執務環境はクラウドサービスや商用データセンター内に仮想デスクトップとして用意しておき、大規模災害が発生したときも確実に利用できるようにする。
 一方、利用技術の面ではソーシャルネットワークサービス(SNS)のビジネス利用が一気に進んだ。企業名やブランド名でのアカウント取得を許しているのは、Twitter、Facebookページ(旧・ファンページ)、Mixiページ、Google+ページなど。すでに消費財メーカーやサービス業の企業がSNSを顧客とのコミュニケーションに活用しており、SNSマーケティングという考え方も定着しつつある。


[スマートデバイス]普及への期待が高まる携帯端末やタブレット
 昨年は、スマートフォンとタブレット端末が目覚ましい成長を続けている。期待されたiPhone 5こそ登場しなかったものの、いっそう高性能・高機能化したiPhone 4Sがソフトバンクモバイルとau by KDDIの2社からリリースされたほか、iPad2も登場。Androidベースのスマートフォンとタブレット端末はさらに機種数が増え、日本マイクロソフトのWindows Phone 7.5を搭載したスマートフォンもau by KDDIからデビューした。
 そうした背景の中、タブレット端末やスマートフォンを使う人や企業も急増している。業務アプリケーションパッケージにも、タブレット端末やスマートフォン用のクライアントアプリケーションが対応し始めている。グループウェアをスマートデバイスから使えるようにしたり、業務専用端末と同等のiPhone/Android/Windows Phoneアプリケーションを開発してタブレット端末に組み込むなどの流れだ。ノートPCのように業務アプリケーションをタブレット端末/スマートフォンで使う企業がさらに増えることは確実だ。
 それにともない、タブレット端末やスマートフォンを業務で使用するには、運用管理の必要が生じる。そこで使われるようになったのが、許可されていないアプリケーションを組み込んでいないかを確認したり、盗難・紛失時にデータ消去や端末ロックなどの対策をネットワーク経由で行ったりするためのモバイルデバイス管理(MDM)ツール。ウイルスなどのマルウェアを検査・除去するためのセキュリティツールにも、タブレット端末やスマートフォンに向けた製品が登場している。


[セキュリティ]新たな脅威の登場標的型メール攻撃
 2011年は、標的型メールによる情報漏えい事件が大々的に報道される一年でもあった。防衛産業、衆議院/参議院、国の省庁などが軒並みこの攻撃に遭っており、重要なビジネスデータが漏出してしまった企業もあると報じられている。
 多数の相手を無差別に攻撃する従来の手法と異なり、標的型メール攻撃(A P T攻撃とも呼ばれる)への対処は難しいとされる。検体が少ないためにマルウェアの特徴を記した「パターンファイル」を作ることが難しく、セキュリティツールの網を通り抜けてしまうことが多いのだ。それでも、パターンファイルに依存しない“振る舞い検知型のツール”ならかなり高い精度で検出が可能。検出の際にサーバやPCに被害が及ぶことを防ぐために、クラウドなどに用意したサンドボックス(仮想的な実行環境)でメールと添付ファイルを開く方式の製品も登場している。
 2012年は、標的型メール攻撃に対抗するためのツールが目玉となる。もちろん、アンチウイルス、アンチスパム、Webフィルタリング、統合脅威管理(UTM)といった既存のジャンルとの組み合わせにより、効果的な提案を行いたい。


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■2011年の主な出来事
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■自然災害リスクに対するBCPの策定状況
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■2011年注目された商材
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【巻頭特集】

・クラウドサービスの真打ちが登場!『たよれーる Office 365』から始まるビジネスチャンス 【Vol.59】

・クラウド時代の新ビジネススタイル スマフォ&タブレットの導入決断 【Vol.58】

・オフィスの節電は限界に達しているのか? 今すぐ役立つ節電対策チェックポイント 【Vol.57】

・オールジャパンは大規模停電を回避できるか 電力飢饉に備える【Vol.56】



   
 
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