SNSなどで多くの人から資金を集めるクラウドファンディングが、起業を目指す人々に注目されている。クラウドファンディングの最大の魅力は、株式や社債と違って手軽に募集できること。日本では寄付型と購入型が多い。 新規のアイデアを基に事業を起こそうとする者にとって、最初の難関となるのが資金集めである。一番簡単なのは誰かに出資してもらうことだが、そのような人が知り合いの中に常にいるとは限らない。株式や社債を発行したり金融機関から借り入れたりすることもできるが、そのためには、各機関の審査をパスしなければならない。まだ実績がない新規のアイデアの場合、その将来性を信じてもらうのは至難の業といえる。 ところが、インターネット時代になって状況は変わった。ブログやソーシャルネットワークサービス(SNS)などのコミュニケーションツールを利用すれば、新規のアイデアに興味を持ってくれる人を集めるのは簡単。その人たちに少額の出資をしてもらえば、全体としては必要な資金を得られる可能性がある。 このような資金集めの手法が「クラウドファンディング」。ただし、クラウドコンピューティングとはなんの関係もなく、クラウド(大衆)とファンディング(資金調達)の2つの言葉を合成した造語だ。内容的には、むしろ、集合知の活用をうたったWeb 2.0のイメージに近い。 では、出資者に対して何をどのようなかたちで還元するかで分類すると、クラウドファンディングは三つの型に整理できる。 まず、「寄付型」。お礼メールを送ったり出資者リストに記載したりはするが、物や金銭のかたちでの還元はしない形態だ。実施する上でのハードルが低いので気軽に始められるという利点はあるものの、よほど熱心な“ファン”でなければ出資してくれないので、得られる資金量には限りがある。 次に、物やサービスなどの“現物”で還元する「購入型」がある。この型は消費者相手のクラウドファンディングで採用されることが多く、できあがった製品のファーストロットを提供したり施設の利用クーポンを送ったりといった方法で出資額に応じた還元をする。これも比較的手軽に実施できるクラウドファンディングだが、予定していた物やサービスができあがらなかった場合に法的な問題をかかえてしまうリスクはある。 もっとも多くの出資者を集められる可能性があるのは、金銭で還元する「投資型」だ。原理的には株式や社債と同じやり方なので、アイデアや製品に興味を持たない層にも金融商品や投資商品として広く受け入れてもらえるからである。 ただ、株式や社債と同じ仕組みであるがゆえに、各国の金融当局は投資型クラウドファンディングに対してさまざまな制約を課している。 投資型クラウドファンディングを直接の対象としていることで知られるのが、アメリカで2012年春に成立したJOBS法(Jumpstart Our Business Startups Act)である。この法律では、証券取引所に登録されていない企業が一般投資家から資金を集める際の条件として(1)募集総額は年間100万米ドルまで(2)一般投資家が投資できるのは2,000米ドルまたは年収の5%まで(年収10万米ドルまでの場合)(3)証券取引委員会(SEC)に登録された仲介業者を通して取り引きする(4)情報提供やリスク開示についてのSEC規則を守る、などを規定。既成のベンチャーキャピタルとは別の資金調達方法を起業者に許している。 日本の場合、投資型クラウドファンディングに直接にかかわる法律としては金融商品取引法がある。具体的には、募集または仲介をするには自らを第二種金融取引業者として金融庁に登録する必要があり、日常の運用についても同庁の監督を受ける仕組み。一般企業がこの規制をクリアするのはきわめて難しいため、国内で行われている多くのクラウドファンディングは寄付型または購入型となっている。