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にっぽんの元気人
2016年3月時点の情報を掲載しています。

失敗はビジネスセンスを磨くチャンス「ラッキー」と思って、乗り越えていくことです!
女性にとって、男性中心のビジネス社会は完全アウェー。それだけに、似たような失敗をしても男性社員より女性社員のほうが目立ちやすく、何となく不公平にも思えてくる。しかし、「目立つからこそ、女性のほうがビジネスセンスを磨くチャンスに恵まれている」と語るのは、女性脳と男性脳の違いに関する本などを数多く執筆する感性アナリストの黒川伊保子さん。ただし、そのチャンスを活かして働く女性がもっと輝くためには、意識の変革が求められるという。

自分にスポットライトを当てると失敗するのが怖くなる
BP:安倍内閣が「女性の活躍促進」を成長戦略のひとつとして打ち出して以来、働く女性に対する世の中の期待も高まっているように感じます。しかし、黒川さんは逆にその風潮が、働く女性たちを疲弊させていると感じておられるようですね。

黒川伊保子氏(以下、黒川氏):
「女性の活躍推進」と言われて期待され、本人も素敵なキャリアウーマンになりたいと思っている女性たちがなぜ疲弊していくのかと言うと、「美しくて、若々しくて、センスがよくて、頭もよくて、英語もできる」といった世の中の理想像を目標にしているからですね。外から見た理想像ではなく、もっと自分らしさを追求してみてはどうでしょうか。
 疲弊しないための方法は2つ。「自分を基準にすること」と「自分にスポットライトを当てないこと」です。
 自分にスポットライトを当てる人は、誰かに叱られると「こんなに努力しているのに、認めてもらえない」と自分を責めてしまうので、とても苦しくなってしまいます。でも、自分ではなく、上司やお客さまといった相手にスポットライトを当てられる人は、叱られたり、クレームを受けたりしても、「えっ、自分は何を読み間違えたのだろう」と客観的になれるのです。
 自分にスポットライトを当てがちな女性が増えているのは、時代のせいもあると思います。
 わたしは感性トレンドと言って、世の中の人々の気分の変遷を研究しているのですが、1980年代ごろまでの若い人たちは、どちらかと言うと興味が外に向いていました。
 ところが1990年代以降の“空気を読む”若者世代は、外よりも自分に興味があるのです。他人にどう思われているのかがすごく気になる。他人から見て素敵な人になりたいし、やさしい人になりたい。あくまでも自分が中心ですね。そういう人は、他人に何か言われたときにものすごく打たれ弱い。だから自分にスポットライトを当てないことがとても大切だと思います。
 もう1つの「自分を基準にすること」は、自分にスポットライトを当てないことの裏返しだと言えます。
 周りにどう思われるかを恐れるのではなく「自分はこう生きていく」と1人称で物事を考えること。上司もお客さまも、周りはつねに自分を楽しませてくれる観客だと思って、気楽に向き合うことが大事です。
 もともと女性は、自分の気持ちを見つめやすい傾向があります。女性の脳は、感情をつかさどる右脳と理性をつかさどる左脳の“橋渡し役”である脳梁と呼ばれる部分が男性の脳よりも太く、感じる領域の出来事が男性の数百倍も顕在意識に伝わるので、つねに自分の気持ちを強く感じながら生きています。
 なので、いい意味でも悪い意味でも、ビジネスのシーンの中で自分にスポットライトを当てやすい。だからどうしても、自分はちゃんとできているかどうかとか、人にとやかく言われるのが怖いという感情が男性よりも強く働いてしまいます。女性が社会で活躍するためには、まずそういう感情を消すこと。他人にとやかく言われるのを恐れないでと言いたいですね。

35歳までの失敗が脳のセンスを育てる
BP:小言やクレームを受けても、自分を責めすぎないことが大切ですか?

黒川氏:
そもそもビジネスなんて、とやかく言われないと始まらないじゃないですか。ビジネスセンスは、小言やクレームを受けながら少しずつ身に着いていくものなのですから。
 じつは、失敗こそが脳のセンスを育ててくれるので、恐れる必要はなく、むしろ積極的に受け入れたほうがいいのです。これは何歳になってもそうですが、とくに35歳までの失敗は脳にとって大変重要です。

BP:なぜ、失敗は脳のセンスを育ててくれるのでしょう。また、なぜ35歳までの失敗が大事なのでしょうか?

黒川氏:
人わたしたちの脳には1000億を超えるニューロン( 脳細胞)が入っていて、それが縦横無尽にネットワークされるので、その組み合わせは天文学的な数字になります。
 仮にこのネットワークに等しく電気信号が流れてしまったら、人間は何の判断もできなくなってしまいます。目の前を通り過ぎる黒い影が猫だと認識するためには、猫だとわかる回路だけに電気信号が流れる必要があります。でもネズミだとわかる回路や、象だとわかる回路にも信号が流れてしまうと、何が通り過ぎたのかがわからなくなって、立ちすくむしかなくなるわけです。
 ところが、やがて成長するにしたがって、日常生活で象と出会うことはないという知識を積んでいくと、余分な回路が消えて、目の前を通り過ぎたのは猫だということがわかってくるようになります。わたしたちはそうした日々の経験をもとに脳の中を整理し、ブラッシュアップしています。
 もちろん、失敗も大切なブラッシュアップの要素です。失敗して痛い思いをすると、人間の脳は失敗のために使われた回路のしきい値(反応に必要な刺激量)を上げて、そこに信号が行きにくくします。また逆に、成功してうれしい思いをすると、しきい値を下げて信号を受けやすくします。
 それによってわたしたちの脳は、成功しやすく失敗しにくい脳に変わっていくわけです。

BP:失敗を重ねることが、知らず知らずのうちに脳に磨きを掛けるのですね。

黒川氏:
ヒトは、生まれてきたその瞬間、人生最多の脳細胞を持っていると言われています。どのような環境でも生きていけるように、満載の感度で生まれてくるわけですね。
 しかし、それでは、先ほど言ったように、すべての事象に反応してしまって、とっさの判断がかなわない。このため、体験による試行錯誤を繰り返し、要らない脳細胞を捨て、回路の優先順位をつけていくわけです。
 脳を装置として見立てると、28歳までの脳はいちじるしい入力装置で、脳神経回路を増やす方向。他者から見て失敗と見える事象であれ、成功と見える事象であれ、そこから等しくさまざまなことを得ていきます。
 このため、28歳までは、失敗を失敗とも思わないタフさがあるのです。まさに人材教育の好機ですね。
 29歳からの28年間は、成功と失敗を明確に分けて、脳の優先順位をつけていく「脳の洗練期」。特に最初の7年は、失敗適齢期です。最初に要らない回路を消してしまった方が、成功回路の上書きがしやすいから、脳は先に失敗したがっているのです。というわけで、35歳までは失敗しやすく、それを脳神経回路に活かしやすい、ということになりますね。
 十分に要らない回路に電気信号が行かなくなれば、当然、物忘れが始まります。物忘れは老化じゃなくて、進化。物忘れするくらいの脳じゃないと、ビジネス・センスは発揮できません。
 入力期を終えた3 0 歳の頃、世界のすべてを知ったような気になるのがヒトの脳の定番です。仕事にも慣れ、「あー、世の中こんなもん」とちょっとなめた気分にもなる。なのに、失敗適齢期を迎えた脳は、惑ったあげく失敗案件を選び取ってしまう。
 そういう意味では、30代は過酷な年代ですね。周りの期待もどんどん高まるし。でも、失敗に疲弊しやすいこの年齢だからこそ、あえて失敗を恐れない人だけが抜きんでてくる。特別なひとりになりたければ、失敗を恐れないことです。
 35歳を過ぎても、もちろん間に合います。年齢にかかわらず、人生は失敗の数が多いほど勝ち。わたしは50代ですが、いまでも失敗は大好物(笑)。
 それによって脳に磨きがかかり、使い物になる知識や経験を手に入れられるのは、とてもありがたいことだと思っています。
 いままでにやったことがないこと、失敗しそうなことに出会ったら、逆にものすごいチャンスをもらったと思ったほうがいいですね。

失敗を糧にするために守りたい“3カ条”とは?
BP:失敗を恐れないようになるための 効果的な方法があれば教えてください。

黒川氏:
そもそもビジネス社会は男性脳型ですね。
 男性脳型というのは、大量の商品を、均一の質で、迅速に、しかもコストパフォーマンスよく市場に流通させていくという行為に向いています。一方、女性は1つひとつのことを丁寧にやっていく脳を持っているので、男性脳型に合わせていくのは簡単なことではありません。でも商品は1つひとつ丁寧に扱うことも大事じゃないですか。だからビジネス社会には、女性が活躍できる場もありますよね。
 だけど、どうしてもビジネス社会における主流は男性。ということは、わたしたち女性はアウェーにいるわけです。そのことは覚悟したほうがいいと思います。わかってもらって、ちやほやされることなんてはなっから考えないこと。そう割り切ると意外と周りの男性がやさしく接してくれるものです。
 逆に、男性にもアウェーがありますからね。それは家庭です。半径3メール以内のものに気が付かないのが男性脳なので、女性の目からは、どうしてもリビングの中で使い物にならない存在に見えています。
 お互いにホームとアウェーが異なるだけで、イーブンと言えばイーブンなのですから、アウェーである会社での身の振り方、相手との接し方については覚悟を決めちゃったほうがいい。
 そして、会社にいるときは、つねに自分がこの世のエンターテインメントを楽しんでいる観客だと思ってください。いやな上司や手強い顧客を見て遊んでいる観客。そのぐらい感覚で相手に接すれば、失敗を受け入れることができるはずですし、こちらが観察者の立場になるので、接していても緊張することもないと思います。
 もうひとつ、これは失敗の経験を脳に最大限書き込むためにぜひ心掛けていただきたいのですが、@失敗を他人のせいにしない、A過去の失敗をくよくよ思い返さない、Bまだ起こってもいない失敗に怖気づかない、という“失敗の3カ条”を守ってみてください。
 失敗を他人のせいにすると、脳が自分の失敗だと認識できないので、脳神経への書き込みが行われません。せっかく痛い思いをしたのに、それがムダになってしまって、センスの向上に結び付かない。
 また、過去の失敗をくよくよ思い返すと、せっかく捨てた回路を通電させてしまうので、成功回路が見つけにくくなってしまいます。
 3つ目のまだ起こってもいない失敗に怖気づかないことも大切。これは、失敗を責める上司の方に気を付けていただきたいですね。「以前にも似たようなことをやって失敗しただろう」などとあげつらわず、むしろ「失敗を恐れることなく、どんどんチャレンジしてみて」と背中を押してあげることが大切だと思います。

BP:最後に頑張っている働く女性たちに応援メッセージをお願いします。

黒川氏:
とにかく失敗したら「ラッキー!」と思ってどんどん経験し、乗り越えていくことです。
 女性はアウェーにいるので、どうしても男性より失敗が目立ちやすくなってしまうけど、見方を変えればビジネスに必要な「勘」や「つかみ」「センス」を手に入れるチャンスに恵まれているということじゃないですか。そういうふうに発想を転換して、凛々しく頑張っていただきたいなと思います。

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株式会社 感性リサーチ 代表取締役
黒川伊保子氏
Ihoko Kuokawa

◎ P r o f i l e
1959 年、長野県生まれ、栃木県育ち。1983 年、奈良女子大学理学部物理学科を卒業後、(株)富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにて、14 年に亘り人工知能(AI)の研究開発に従事する。その後、コンサルタント会社勤務や民間の研究所を経て、2003 年、(株)感性リサーチを設立し代表取締役に就任。2004、脳機能論とAI の集大成による語感分析法『サブリミナル・インプレッション導出法』を発表。サービス開始と同時に化粧品、自動車、食品業界などの新商品名分析を相次いで受注し、感性分析の第一人者となる。2006年、大前研一アタッカーズビジネススクールで、感性マーケティング講座を開講。明治大学スマートキャリア講座講師、日経MJ セミナー講師。日本テレビ「世界一受けたい授業」やフジテレビ「ホンマでっか!?TV」などに出演。雑誌の脳トレ、恋愛特集のコメンテイターとしても幅広く活躍ている。






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【にっぽんの元気人】

・株式会社コミュニカ 代表取締役 山元賢治氏 【Vol.83】

・JSパートナー株式会社 代表取締役 福島文二郎氏 【Vol.81】

・一般社団法人 営業部女子課の会 代表理事 太田 彩子氏 【Vol.80】

・フリー・アナウンサー 福澤 朗氏 【Vol.79】


 
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