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2018年1月時点の情報を掲載しています。

人間のファンドマネージャーに代り、AIが有望な投資先を選定するAI投資信託はすでに現実のものになっている。AIが個人投資家にアドバイスするサービスも登場する中、金融業界におけるAI活用の流れを俯瞰する。

　ファンドマネージャーに代わり、AIが有望な投資先を選定し、機関投資家の巨額の資産を運用するAI投資信託が注目されている。実は金融の第一線では、A Iを活用した資産運用は珍しくないばかりか、有望な運用担当者としての地位を確立している。仏エドモン・ド・ロートシルト（ロスチャイルド）グループがファンド・オブ・ファンズ方式（複数ファンドへの投資で運用するファンド）で運用するヘッジファンドによる集計において、2016年に好成績を収めたファンドのベスト20にAIを活用した3ファンドがはじめて入ったことはその一例と言える。
　国内でも、AIが銘柄を選択する投資信託はすでに運用を開始し、ネット証券会社では個人投資家を対象としてAIが運用をアドバイスする「ロボアドバイザー」などのサービスの提供を開始している。
　AIによる資産運用は、どのように行われているのだろうか。実は、金融の世界ではコンピュータによる資産運用は、すでに20年ほど前からスタートしている。「アルゴリズム取引」や「システムトレード」とも呼ばれるコンピュータを活用した資産運用は、さまざまな経済指標や為替レート、株式市場の動きといったビックデータを日々分析し、最大リターンを実現する最適解を求めていくことがその基本的な考え方。
　その仕組みを一口で言えば、その名の通り「AであればBを買う」「CであればDを売る」というアルゴリズムの集積と言うことができる。近年の自然言語処理やディープラーニングに至るAI開発の歴史の中に位置付けるなら、1980年代に盛んになった、人間の思考や判断をコンピュータに置き換える「エキスパートシステム」と呼ばれる取り組みの延長上にある。
　人間の思考や判断をコンピュータに置き換えることを目指したエキスパートシステムは、人が判断の材料として参照している情報の多様性や膨大さという課題に直面し、行き詰まりを迎えた。だが経済指標という限られた情報に基づいて行われる投資判断では、その可能性を開花させることにつながっている。近年では、ベテラントレーダーが行う競合する投資家との丁々発止の駆け引きまでアルゴリズム化したシステムまで登場しているという。
　AIによる資産運用の強みは、判断スピードの速さと正確性にある。速さについては、人間と比較した際のコンピュータの処理能力の速さに疑問を呈する人はいないはずだ。さらに、アルゴリズム取引では、取引所のシステムに近接する場所に証券会社が専用サーバーを設置し、ミリ秒単位の発注や注文の変更・取り消しを行うことが一般的だ。こうした取引はHFT（High Frequency Trading：超高速取引）と呼ばれ、「塵も積もれば山となる」を地で行くような手堅い運用を人間には不可能な速度で行うことも可能。こうしたコロケーションサービスに基づく取引は、東京証券取引所の場合、2016年の段階で約定件数ベースで4割以上、注文件数ベースで7割に及んでいる。
　一方の正確性については、人間につきものの誤謬とは無縁であることが関係している。人間の判断は、先入観の影響を受けやすいが、それはファンドマネージャーも例外ではない。エドモン・ド・ロートシルトグループの発表からもうかがえるように、時には大博打に成功するが定石の判断を見誤るファンドマネージャーより、AIの方がトータルで見た場合、成績が優秀であることが少なくないのだ。AIによって失業する職業の一つに、ファンドマネージャーが挙げられることが多いのもこうした現実が反映している。
　マーケットが日々変動する中、複雑なヘッジファンドの運用には、これまでロケットエンジニアに匹敵する知性が求められると言われてきた。アメリカでは、今後こうした才能がウォール街から新たな成長分野に流出すると見る向きも多い。

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