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2017年9月時点の情報を掲載しています。
遠からぬ未来、コンピュータの知能が人類をはるかに超えるという予測がある。その分水嶺になると目されているのが2045年。その先には、いったい何が待っているのか? AI開発への警鐘として引用されることも多い2045年問題を整理する。
将棋やチェスの世界では、すでに人間はAIに歯が立たなくなりつつある。だがプログラム通りに次の一手を判断するコンピュータを人類への脅威と騒ぎ立てる人はいない。人工知能には、「弱いAI」「強いAI」という考え方がある。前者は、特定課題の解決だけを目的としたAIで、将棋コンピュータや対話型の自動応答サービスなど現在実用化が進むAI技術はすべて弱いAIと呼ぶことができる。それに対し、人間と同じように思考し、判断するAIが強いAIになる。では、人間をはるかに超える知性を持つ強いAIが誕生したとき、なにが起こるのか? この疑問こそが、2045年問題の本質である。
この問題のキーパーソンは、AIの世界的権威であり、現在はGoogleでAI開発の総指揮をとるレイ・カーツワイルという人物である。発明家としても知られ、オムニフォント式OCRソフト、フラットヘッドスキャナー、さらにKurzweilのブランド名で一世を風靡したシンセサイザーも彼の発明品だ。彼は未来研究の専門家としての一面を持ち、その能力を高く評価する声も多い。理由は、その正確さにある。例えばiPhone登場前の2005年に出版され、日本でも話題になった『The Singularity Is Near』では、彼はすでに以下のようなことを予測している。
2010年代…コンピュータは小さくなり、日常生活に統合されていく。VR技術が登場し普及が進む。
2015年…家庭用ロボットが家を掃除している可能性がある。
2018年…10TBメモリが1,000ドルで購入できるようになる。
多少誤差はあるものの、ここまではほぼ予測通りに進んできたと言えるのはないだろうか。2020年代以降、人間の血管に送り込めるサイズのコンピュータ=ナノポット実用化による医療技術の飛躍的進歩や、コンピュータによる人間の脳の完全なシミュレーションを予測する彼が、その先の2045年に到達すると予測したのがシンギュラリティ(技術的特異点)だった。
数学の世界では、シンギュラリティは変数が無限大に拡散するようなポイントを指す。では、彼が人類を越える知能を備える強いAIの誕生を予測する2045年になにが起こるのか。その先のシナリオはこうなる。人類を越える知性を手に入れた強いAIは、さらに優れた次世代のAIの開発に着手する。その連鎖は、AIの爆発的な進化へと導くことだろう。それこそが、彼がシンギュラリティという言葉で表そうとしたものにほかならない。
この問題の一番の難しさは、AIが人類をはるかに超える知性を得たとき、彼らが何を考えるか誰にも想像できない点にある。カーツワイルのようにシンギュラリティを人類の新たな進化の歴史の一歩と考える見方がある一方で、それを否定的に受け止める意見も少なくない。シンギュラリティ後のSF映画のようなコンピュータの反乱を危惧する実業家イーロン・マスクの見方はその代表と言える。AIの暴走に警鐘を鳴らす彼が、AI開発の制限や兵器への応用の禁止を訴えているのはよく知られる。
一方、ムーアの法則に代表されるハードウェアの進化を前提としたカーツワイルの未来予測自体が虚構に過ぎないという意見もある。1000億を越えるニューロンで構成される人間の脳の仕組みをコンピュータ上に完全に再現できたとして、そこに本当に自我や魂と呼ばれるものが生まれるのかという疑問はその一例である。
企業に目を向けると、限定的な形ではあるが、すでに経営判断へのAI活用が進んでいる。その際、多くの企業が直面する課題があるという。それは、AIの判断には、説明がつかないことも少なくないという問題だ。では理解不能な判断であっても、AIに従うべきなのか? この問題は、2045年問題を先取りしているとも言えそうだ。
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