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2006年5月時点の情報を掲載しています。
昨年から今年にかけて、大手電機メーカーの社長交代が相次いでいる。
ソニー、松下電器、日立製作所、東芝、パイオニア、三菱電機、三洋電機、そしてNEC。企業名を羅列するだけで大手電機メーカーの経営トップが一気に様変わりしたのがわかるだろう。また、IT産業に関連したところでは、キヤノン、エプソンもこの1年で社長が交代していて、外資系でもデルやマイクロソフトといった主要企業で社長が交代している。言い換えれば、社長が交代していない大手電機メーカーは、富士通、シャープ、日本アイ・ビー・エムと限られた企業になるといっていいかもしれない。
もちろん、新社長登板の事情は各社ごとに異なる。ソニーやパイオニア、NECは、今後の改革を担う役割が新社長に求められているのに対して、松下電器、日立製作所、東芝といった企業は、改革というよりも、成長戦略を担うことが新社長に課せられたとテーマとなりそうだ。そして、ソニーのように外国人社長の登用というサプライズ人事もあれば、NECのように前社長の体調不良による突然の新社長登板もある。一方、松下電器のように、下馬評通りの順当な社長人事も見られる。大手電機メーカーの社長交代といっても、一概には、共通項で語れないところが多い。
しかし、その一方で、共通した要素もいくつかある。そのひとつが、社長就任会見の場で多くの新社長が触れた「創業時の経営理念に基づく経営」という点だ。日立製作所の新社長に就任した古川 一夫氏は、「社長就任までの間、社史を紐解き、日立創業の地を訪れました。創業者である小平 浪平が国産技術の振興を目指したときの創業の理念を改めて思い起こしました」と自らの経営のベースに創業時の理念を持ち込むことを示した。
また、東芝の西田 厚聰社長も「東芝は、創業以来、数多くの優れた技術と、高い品質の商品、サービスを創出するわが国を代表する電機メーカーに成長しました。2005年に創立130年を迎え、この節目にふさわしい最先端の商品、技術を世に送り出し、東芝というブランドがまた新たな輝きを獲得できるようにしたいです」と語る。
一方、松下電器の新社長に就任する大坪 文雄氏は、「環境変化が大きければ大きいほど見失ってはいけないのが、創業者の経営理念です」と、創業者である松下 幸之助氏の考え方を、経営の根幹に置くことを示して見せた。大坪次期社長は、創業者の理念のなかでも、「衆知を集める」という言葉を好み、自らの経営も「衆知を集めた経営としたい」と語る。
NECの新社長となった矢野 薫社長は、東大卒、通信畑出身の人間である。歴代のNECの社長は通信畑出身の人間であったが、前社長とその前の社長はコンピュータ畑出身であった。2代続いたコンピュータ畑出身の社長体制から、久しぶりにかつてのNECの王道な社長人事に戻ったといえる。矢野社長は就任直後から、「NGN(次世代ネットワーク)」といったネットワーク関連のキーワードを連発しているため、NECの原点ともいえるネットワーク事業を成長エンジンとした事業形態へと回帰していることを感じさせる。
もうひとつの共通点として、大手電機メーカー新社長に共通的に課せられたのがグローバル戦略だろう。何故なら、海外事業比率の引き上げとともに、海外における成功がそのまま全社成長戦略につながるからだ。
新社長に海外での事業経験者が多いこともそれを強く感じさせる。ウェールズ生まれの米国人であるソニーのハワード・ストリンガーCEOは、米国でソニーを立て直した実績はもとより、強いブランド力を誇る北米市場を足がかりに復活の道を模索するには最適な人物だといえる。松下電器の大坪次期社長、NECの矢野社長も、海外現地法人での社長経験者だ。また、東芝の西田社長も、東芝の海外法人から入社したという異例ともいえる経歴の持ち主である。いずれも海外での深い経験が、新社長の舵取りに生かされることになりそうだ。
実際、新社長からもグローバルを意識する言葉が相次いで聞かれている。「2010年には、グローバルエクセレントカンパニーを目指す」というのは松下電器の大坪次期社長の言葉で、「世界のエクセレントカンパニーとして輝くことを目標とする」というのは日立製作所の古川社長の言葉である。これらのグローバル展開を前提とした取り組みが各社の成長戦略の鍵となりそうだ。
このように各社の置かれた立場は異なるものの、日本のものづくりの根幹ともいえる大手電機メーカー各社の創業時の理念を経営に生かすこと、そして、それをベースとしたグローバル戦略を展開していくことは各社に共通したものだといっていい。
新社長体制となった大手電機メーカー各社の新社長たちの手腕がどう発揮されるのか注目したい。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
【コラム】「ビジネストレンド最前線」
・第6回 大手電機各社が薄型テレビ向けパネル生産設備に大型投資する理由 【Vol.25】
・第5回 2006年の隠れたヒット製品と噂されるビジネスモバイルPCとは?【Vol.24】
・第4回 複合機を巡るインクジェットプリンタ市場の争いが激化 【Vol.23】
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