大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
Up Front Opinion
|
ソフトウェアライセンス
|
Open Source Solutions
|
ソフトウェアライセンス
| Column >
IT活用
>
売れるショップ
>
ビジネストレンド
|
イベント情報
2006年7月時点の情報を掲載しています。
FIFAワールドカップドイツ大会に沸いた日本列島。残念ながら、日本代表の1次リーグ突破はならなかったものの、4年に一度のお祭り騒ぎは、まさに、ワールドカップならではのものだったといえよう。しかし、勝敗による各国の明暗は必至で、勝ち進んだ国と、敗退した国とでは、テレビ映像から映し出される選手、そしてサポーターの姿を見ても歴然の差だ。
そのワールドカップは、日本の電機業界にも明暗をもたらした。ワールドカップの開催前に、薄型テレビなどのデジタル家電の需要が一気に増大するという明るい話題が見られる一方、PCの売れ行きは前年実績を下回る厳しい状況であった。日本代表が、1次リーグ第1戦となった対オーストラリア戦直前の6月第2週には、前年同月に比べて、PC市場はなんと20%近くのマイナス成長を記録してしまったのだ。
一方、薄型テレビの売れ行きは、BCNの調べによると、5月には販売台数ベースで前年同月比37.3%増、販売金額ベースでは47.7%増という高い伸びを記録した。トリノオリンピック需要に沸いた今年1月、2月に比べると、台数ベースではほぼ横並びとなったものの、金額ベースでは1月の40.6%増、2月の34.1%増よりも高い伸び率となり、単価が上昇していることが明らかになった。
実際、液晶テレビでは6月第2週に42V型以上が49.6%と約半分を占めたほか、プラズマテレビでも56.5%を40V型以上が占めるといったように大画面化が進んでいる。なかでも、液晶テレビは、台数ベースで前年同月比36.6%増、金額ベースでは52.1%増という高い伸張率が注目すべき点である。プラズマテレビに比べて応答性が劣り、サッカーなどの動きが速いスポーツ番組には適さないとされていた液晶テレビだが、各社の技術革新により、それが大幅に改善された。そのおかげで、液晶テレビが弱いとされたFIFAワールドカップという舞台で、需要を拡大して見せた。
一方、液晶テレビほどの伸びを見せなかったのが、プラズマテレビである。今年2月には、金額ベースで85.6%増と大幅な伸びを見せたのに対して、5月は28.3%増となった。プラズマテレビの雄である松下電器が、トリノオリンピックの公式スポンサーであり、大規模な広告宣伝を行っていたのに対して、スポンサードをしていない今回のワールドカップでは、それほど積極的な広告展開は行わなかったことも少なからず影響しているといえよう。
デジタル家電のなかで、最もワールドカップの恩恵を受けたといわれるのがDVDレコーダーである。今年に入ってからは、金額ベースでほぼ2桁減で推移していたものの、ワールドカップ直前となる5月には一転して12.2%増と2桁増を記録した。このことは、ワールドカップ開催前に駆け込み需要が集中したことを裏づけた。また、DVDのハイビジョン化も進展し、5月にはDVDレコーダーの販売台数の54.5%をハイビジョンが占めている。
こうしたデジタル家電の好調ぶりとは裏腹に、低迷を余儀なくされたPC業界では、メーカー側からも予想外だったとの声が聞かれている。2002年の日韓ワールドカップや、2004年のシドニーオリンピックでもデジタル家電に先行された苦い経験を生かして、「これまでとは比較にならないほど入念な準備を進めてきた」(大手PCメーカー)はずであった。しかし、6月第2週には19.5%減と大幅に落ち込み、やはり今回もデジタル家電に特需のほとんどをもっていかれた格好となった。「スポーツイベントを薄型テレビで見るという構図はできあがっても、これをテレビパソコンで見ようというイメージづくりが追いつかなかった点に反省がある」とある大手PCメーカー幹部は語る。
だが、新たな動きもではじめている。デスクトップPCのうち、地デジチューナーを搭載した製品の販売比率は、5月第3週以降20%を突破、6月第2週には24.6%に達し、なんと4台に1台が地デジ対応のPCとなったのだ。地デジ対応が、PC購入の選択肢のひとつとなりはじめていることを証明する出来事ともいえる。
しかし、PC業界がこれで満足するわけではない。来年1月のWindows Vistaの投入をはじめ、IEEE802.11nやPLC(Power Line Communications:電力線搬送通信)、そして次世代メディアドライブの搭載と、今後は新たな機能が続々と控えているからだ。これらを加えた「セット」プレイで、PC業界が巻き返しを図ることになりそうだ。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
【コラム】「ビジネストレンド最前線」
・第7回 現代に通じる近江商人の心意気 【Vol.26】
・第6回 大手電機各社が薄型テレビ向けパネル生産設備に大型投資する理由 【Vol.25】
・第5回 2006年の隠れたヒット製品と噂されるビジネスモバイルPCとは?【Vol.24】
・第4回 複合機を巡るインクジェットプリンタ市場の争いが激化 【Vol.23】
本紙の購読申込み・お問合せはこちらから
Copyright 2006 Otsuka Corporation. All Rights Reserved.