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2006年9月時点の情報を掲載しています。
いよいよ高速ブロードバンドが走行中の列車の中でも利用できる時代がやってきた。
首都圏新都市鉄道が、8月24日から、秋葉原とつくばを結ぶ、つくばエクスプレスの2000系車両において、区間全線で無線LANを利用できる商用サービスを開始したからだ。この車両は主に快速および区間快速において使用されており、秋葉原とつくばを最短45分で結ぶ。つくばエクスプレスの最高速度は時速130Km。これだけの高速走行中に、列車内で安定した接続環境を実現し、無線ブロードバンドが利用できるのだ。
8月から利用できるのは、NTTドコモの「mopera U」と「Mzone」。年内には、NTT東日本の「フレッツ・スポット」も利用できるようになる。つくばエクスプレスでは、開業前の昨年7月から試験運用を開始。インテルおよびNTTドコモ、NTT東日本、NTTブロードバンドプラットフォームの協力を得るとともに、これまでに4,465人の一般ユーザーが、この試験運用に参加してきた。
「試験運用は、時間を経るに従い、どうしても参加者が減少する。だが、つくばエクスプレスでの試験の場合、逆に参加者が増加するという異例の状況となった。この実現に多くの人が関心を寄せていることの証といえる」と、NTTブロードバンドプラットフォームの小林忠男社長は語る。
世界初となる走行中の無線LANによるブロードバンド接続サービスは、多くのユーザーの期待の中で開始されることになった。もちろん、この環境を実現するのは並大抵のことではなかった。高速で移動する列車の中で、途切れることなく無線LAN通信を行うためには、絶え間なく通信ができる環境が必要。列車の前後と、車両内の混雑時にも安定した環境を確保するために、各車両にアンテナを設置。これと、全20駅のホームの前後に配置されたアンテナと、駅間に約500m置きに設置された中継局とを無線LANで結んで利用できるようにした。
「時速130kmで走行すると、500mの各ゾーンを通過するのに15〜20秒。この間に、短時間でアンテナを感知し、さらに、次から次へと途切れることなくハンドオーバーできる通信環境を維持することに苦労した」と小林社長は語る。
だが、こうした問題をクリアすることで、乗車前にホームの椅子に座りながらでPCを無線LANに接続して仕事をはじめ、列車が来たらそのまま乗車して、走行中も接続を維持。さらに、下車したホームでも接続したまま、という使い方ができるようになった。
つくばへの移動の際は、まさに、つくばエクスプレスがオフィスと同じ環境になるわけだ。実際、インテルでは、東京本社と筑波本社への移動の際に、つくばエクスプレスを利用することを推奨している。
インテルの吉田和正共同社長は、「車両の中でもブロードバンド環境で仕事ができるようになり、効率的な時間の使い方ができるようになる。社員には、なるべく、つくばエクスプレスで移動するようにと話している」と語る。その吉田共同社長も、2週間に一度のペースで筑波本社に出向いているが、その際には車を使わずに、つくばエクスプレスを利用。ノートPCを携行することで、列車の中を自らのオフィスに変えて、効率的に仕事を進めているという。首都圏新都市鉄道やインテルなどでは、今後、つくばエクスプレスの駅周辺地域においても、無線LANブロードバンドが利用できる環境を整備していく方針を示す。具体的には、駅前の商店街や公共施設に協力を得て、ブロードバンド環境を整備することになりそうだ。
頭脳集積都市であるつくばと、ITの街に変貌を遂げつつあるアキバとを結ぶつくばエクスプレスを、首都圏新都市鉄道の橋伸和社長は「ITエクスプレス」と称する。無線LANによるブロードバンド環境は、都心部であれば東京メトロや都営地下鉄、JRの駅などでも利用できるようになっているが、列車の中で利用できる環境を整備したことで、また一歩、ITエクスプレスの名にふさわしいものとなった。
こうした環境は、つくばエクスプレス以外にも、これから整備されていくことになるだろう。ユビキタスが列車の中でも実現するようになるのだ。この調子だと、「出張中は、列車の中で、ゆっくり昼寝」とはいかなくなりそうだ。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
【コラム】「ビジネストレンド最前線」
・第8回 ワールドカップで破れたPCがセットプレイで巻き返す? 【Vol.27】
・第7回 現代に通じる近江商人の心意気 【Vol.26】
・第6回 大手電機各社が薄型テレビ向けパネル生産設備に大型投資する理由 【Vol.25】
・第5回 2006年の隠れたヒット製品と噂されるビジネスモバイルPCとは?【Vol.24】
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