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2006年11月時点の情報を掲載しています。
マイクロソフトが、同社のビジネスアプリケーションブランドである「Dynamics(ダイナミクス)」の国内第1弾として、CRMソフト「Dynamics CRM 3.0」を投入した。Dynamicsブランドは、4種類のERP製品とDynamics CRM 3.0からなる製品群だ。日本ではCRM製品を先行して投入し、ERPは来年春以降の国内投入を予定している。いずれも、同社の主力アプリケーションであるExcel、Word、OutlookなどのOffice製品、あるいはActive DirectoryやExchange Serverとの親和性が高いことを前面に打ち出して、日本市場への浸透を図る考えだ。
「Office製品をフロントエンドのインターフェイスとして利用でき、中小企業や部門単位で構築した顧客データ管理システムや営業管理システムなどをそのまま利用しながら、新たにCRMを導入できる。いわば、CRMを構築することを意識せずに、自然とCRMが導入できるのが特徴」(マイクロソフト)という。
つまり、Dynamics CRM 3.0は、CRMの導入に前向きな企業以外にも、自然とCRMの導入を広げることができる製品ともいえるのだ。言い換えれば、日本の企業におけるCRM普及を促進する起爆剤ともなり、ディーラーやシステムインテグレータにとっては、新たな市場を創出することが期待できるともいえる。
実は、Dynamics事業のなかで、マイクロソフトが最も重視しているのが、パートナービジネスである。マイクロソフト日本法人のダレン・ヒューストン社長は、米国本社に勤務していた時代に、中小・中堅企業を担当し、Dynamicsを軸にして、北米市場における中堅・中小企業向けビジネスを10%以上成長させた実績がある。同氏は、その経験から、次のように語る。
「Dynamicsはあくまでもプラットフォームである。そのプラットフォームの上に、パートナーがソリューションを作り、ユーザーに提供するのがDynamicsのビジネスモデルである」。
今回の製品発表でも、パートナー各社が業種別のテンプレートなどを提供し、Dynamicsとともに販売する「拡張型」、パートナーの製品と連携した形で製品を提供する「連携型」、Dynamicsをエンジンとして位置づけて、ソリューションを提供する「組み込み型」の3つのパートナーシップのパターンを用意。それぞれの分野において、最適なパートナーと連携して、国内におけるDynamics普及を図る考えを示した。
「たとえば、日本でも広く普及しているExcelは、単体で利用することも可能だが、各種テンプレートの活用や、マクロ機能によるカスタマイズによって、より効果の高いシステムへと発展させることができる。Dynamicsも同様の考え方をベースにした製品であり、パートナーのソリューションとの組み合わせが、より効果的なシステム構築につながる」(同社)と語る。
「連携型」のなかでは、中小企業向けに高い実績を持つ大塚商会のERPソフト「Smileシリーズ」が、その中核製品のひとつに位置づけられているのも見逃せない。また、マイクロソフトでは大塚商会とのパートナーシップのほかにも、国内50社以上のシステムインテグレータやISV(独立系ソフトベンダー)、コンサルティングファームとのパートナーシップを発表している。
「Dynamics CRMは、CRMを自然と広げることができるとともに、パートナー各社にビジネスチャンスを提供できる」としているが、それも、Dynamicsをプラットフォームと位置づけ、パートナーによるソリューション提供こそが、Dynamics普及の鍵になると見ているからだ。発表当初、CRMやERPで市場すべてを席巻する可能性すら指摘されていたDynamicsだが、実は、パートナービジネスを軸とした施策が基本といえる。そして、マイクロソフトでは、同製品によって、「既存のCRMの概念を打ち破りたい」とも語る。それは一言でいえば、先に触れたように、CRMを意識しないで導入できるCRMという同製品の特性に尽きそうだ。CRM先進国といわれる米国でも、Dynamics CRMによる、CRMを意識しないCRMの浸透が、普及の原動力になったとの指摘すらある。
Dynamics CRMによって、日本のCRM市場が大きく変革することになるのは間違いなさそうである。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
【コラム】「ビジネストレンド最前線」
・第9回 つくばエクスプレスが実現する、ユビキタスの大きな一歩 【Vol.28】
・第8回 ワールドカップで破れたPCがセットプレイで巻き返す? 【Vol.27】
・第7回 現代に通じる近江商人の心意気 【Vol.26】
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