先頃、米マイクロソフトのスティーブ・バ ルマーCEOが来日したのにあわせて、同 氏と国内PCメーカー8社の幹部が意見 交換する「P
C I n n o v a t i o n F u t u r e Forum」が開催された。個別の企業の 訪問はこれまでにも例があるが、こうし
た形で意見交換をするのは珍しい。しか も、この内容を一部報道関係者に公開 する形をとったのも異例のことだった。
フォーラムは、バルマーCEOの挨拶 のあと、NECパーソナルプロダクツ、エ プソンダイレクト、シャープ、ソニー、東 芝、日立製作所、富士通、松下電器産業
の8社のPCメーカー幹部が50音順で 現況を述べた後、マイクロソフトに対し ての提案を行った。冒頭のバルマー CEOの挨拶では、「マイクロソフトの事
業の中核は、あくまでもPCビジネスで ある」と、改めて宣言したことが見逃せ ない。続けて、「P C こそが情報産業の ハブであり、仕事をするにも、家庭で楽
しむにも、最もスマートで、最もインテ リジェンスで、最も有能で、最も多くの リソースを持っているのがPC。日本で は、価格が高く、機能が高いものが売れ
ており、一方でインドや中国では、ロー エンド市場の開拓も必要であり、100 〜200ドルのPCが必要とされている。 標準的なPCとは別に、高機能を追求し
たもの、あるいは低価格で提供される ようなP C プラスという 領域の製品が必要かもし れない」などと語った。
最近のマイクロソフト の発言は、インターネット を活用した各種サービスや、Xboxなど のゲーム機、あるいはエンタープライズ 事業などに関するものが目立っていた。
それだけに、「Windows Vista」発売 を前にして、改めてPC事業の重要性に 触れたのは、大きな意味があったとい える。一方で、国内PCメーカーから
の要求も直接的だった。
実際、「日本のPC市場は低迷しており、 Vistaによって業界を活性化したいと考 えている。マイクロソフトには、V i s t a
に 対する普及、認知の施策を改めて徹底し てほしい」(NECパーソナルプロダクツの 高須英世社長)、「画一的なOSで、すべ ての顧客をカバーするのではなく、個々
の顧客に向いたOSやアプリケーション ソフトの開発に取り組んでほしい」( エプ ソンダイレクトの山田明社長)、「セキュリ ティに対する安心、安全に関して、定量的
なデータを示すことが、企業のユーザー が安心して使える環境の提案につなが る。こうした活動がマイクロソフトには必 要ではないか」(松下電器産業パナソニ
ックAVCネットワークス社システム事業 グループI T プロダクツ事業部・高木俊幸 事業部長)などの提言が相次いだ。
こうしたなか、とくに意見が集中したの がテジタル家電とPCとの融合に関する 意見。これらの意見を聞いたバルマー C E O も、「AVとの融合やデジタル放送
のサポートをここまで真剣に望んでいる のは日本だけ」と驚いたほどだ。
具体的には、「家庭向けのPCテレビの 普及に向けた、シンプルでテレビと親和 性が高い、低コストのOSの開発を望み たい」( シャープの情報通信事業本部・大
畠正巳本部長)、「日本のデジタル放送に 対して、もっとプライオリティをあげて対 応してほしい」(ソニーの石田佳久コーポ レート・エグゼクティブSVP
VAIO事業 本部長)、「PCほど機能が高くない家電 製品でもハンドリングできるようなイン ターフェースの標準化を進めてほしい」 (
日立製作所ユビキタスプラットフォーム システムグループ・ユビキタスシステム事 業部・金子徹事業部長) などといった声 が、バルマーCEOに直接伝えられた。
こうした意見を聞いたバルマーC E O は、「1週間ほど北米を離れているが、そ の間、これほど多くメモをとる会談はな かった」と前置きし、「これらの要求に対
しては、一部は短期的に実現できるもの もあるだろう」と、数々の要求に対して、 前向きに取り組んでいく姿勢を見せた。
フォーラムは約1時間で終了したが、こ れほどまでに忌憚のない意見が交わさ れたフォーラムは例がなかったといえよ う。また、参加者からも有意義なもので
あったとの声があがっていた。
マイクロソフト日本法人社長のダレン・ ヒューストン社長は、「Windows Vista の発売から半年を経過した段階で、第2 回目のフォーラムを開催したい」とコメン
トし、今後定期的に同フォーラムを開催し ていく姿勢を見せた。