大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
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2007年3月時点の情報を掲載しています。
この数年にわたって、多くの企業が取り組んできたのが、顧客の声を数多く収集するという作業だ。たとえば、製造業においては、技術主導での製品開発が限界に達し、顧客の要求を反映した製品開発が求められるようになった。また、流通・サービス業、金融業においても、顧客満足度の追求や、顧客の生活に密着した製品の開発といった点で、顧客の声は重要な武器になっている。ある大手製造業企業は、顧客相談窓口に寄せられた年間数百万件にのぼる問い合わせデータを蓄積することに成功した。顧客の声は、宝の山といわれるように、蓄積した問い合わせデータの中に重要な情報が埋まっていることは、多くの社員に共通した認識であった。しかし、残念ながら、この数百万件のデータをどう処理するのか、どうすれば生きたデータに変換できるのか、文字通り立ちつくしてしまった、というのが実態だったという。
企業は、膨大な情報を蓄積しているものの、それを処理できないジレンマに陥っているという例が後を絶たないのだ。こうした問題を解決する手法のひとつが、BI(ビジネスインテリジェンス)だといえる。
BIの役割は、全社規模、部門単位、個人ごとといった、社内に蓄積された膨大なデータのほか、インターネットで得られる情報や、取引先から得られる情報といった、社外から入手する膨大なデータを、統合的に管理するとともに、これらの情報をデータマイニングやテキストマイニング技術を活用して分析する。この中から、経営に生かすことができる情報を導き出して活用し、企業の競争力を高める、というところにある。過去の傾向を分析するだけでなく、今後、予想される課題や市場の変化を事前に提示するといったことも、BIの果たす重要な役割として求められている。
こうした背景からも、データウェアハウス、データマイニング、テキストマイニング、多次元解析、クエリ、レポーティングといったBIを構成するそれぞれのツールやソフト、機能が有機的に連携し、蓄積されたデータを瞬時に分析し、経営判断に必要な情報として抽出する能力が必要とされているのだ。
IT市場調査会社のガートナーが、全世界の約1400人のCIOから回答を得た「EXP(エグゼクティブ・プログラム)CIOサーベイ」の調査結果によると、CIOが技術面において優先する項目として、最も多くあがったのがBIであったという。日本のCIOに対する調査結果に限定しても、「セキュリティ強化ツール」、「ネットワーク、音声、およびデータ通信」といったインフラ関連の項目に次いで、3番目にBIがあがっており、CIOのBIへの関心が高ことを示している。
そのBIが新たな進化をはじめている。それは、現場が活用するBIへの進化である。もともとBIは、情報システム部門や、一部の統計知識を持った専門家が、専門的な知識を駆使してデータを導き出すというところからスタートしている。当時は、BIがIT化されたといっても、人的な能力、専門知識に頼らざるを得ない部分があったのも事実だ。しかし、その後、専門知識を必要とせずに、経営判断に活用できるような形で、データの抽出が可能になり、経営層からも高い評価を得るようになってきた。BIが広く普及しはじめたのも、こうした段階に到達したからだ。それをさらに一歩進めて、経営層だけでなく、営業の現場、マーケティングの現場といった、社員が日常的に使うといったニーズが、BIに求められ始めているのである。
経営判断という大きな決断にのみ活用するのではなく、日常の業務の判断にBIを積極的に活用していこう、という動きは、結果としてBIに求められる機能、性能を、数段上に跳ね上がらせることにつながる。現場で日常的にツールとして活用するには、これまで以上に、迅速に、しかも簡単な操作で、結論を導かなくてはならないからだ。BIに対する要求は大きくなっている。
また、こうした動きを見て、BIベンダーといわれる企業だけでなく、マイクロソフトをはじめとする複数の企業が、この分野への参入を図り始めている。これは、現場向けの製品を得意とするベンダーの参入ともいえる。BIは分析を得意とする「顧客の声」をもとに、新たな次元へと踏み出しているといえる。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
【コラム】「ビジネストレンド最前線」
・第11回 国内PCメーカー8社がマイクロソフトに要望したこと 【Vol.30】
・第10回 マイクロソフトがもたらす日本のCRMの変化とは 【Vol.29】
・第9回 つくばエクスプレスが実現する、ユビキタスの大きな一歩 【Vol.28】
・第8回 ワールドカップで破れたPCがセットプレイで巻き返す? 【Vol.27】
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