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第2特集 いよいよ始まった印鑑レス社会 電子契約の仕組みと運用を学ぶ
2020年11月時点の情報を掲載しています。

新型コロナウイルスの感染拡大が日本社会のあり方に大きな影響を与えるなか、令和2年9月16日に菅内閣が発足した。菅総理は、所信表明演説において「行政への申請などにおける押印は、テレワークの妨げになることから原則すべて廃止する」と発言した。印鑑レスの急速な推進により、オフィスの課題の一つだったオフィスのペーパーレス化を実現させようとしている。そこで印鑑レスの代替となる電子契約システムの仕組みについて確認しておきたい。


コロナ禍を受けて大きな一歩を踏み出した電子契約
 オフィスのペーパーレスが推進される中、印鑑レスに大きくかじが切られようとしている。きっかけはコロナ禍だった。リモートワークが中心となる業務では、社判を押印するためだけに出社するのは、確かにムダが多い。またコロナ禍を経て、クロージングまでリモートで行う営業スタイルが一般化したこともその背景にはある。
 ビジネスにおける意識変化とともに菅政権の行政デジタル化の取り組みにも注目する必要がある。10月26日、総理は所信表明演説において「行政への申請などにおける押印は、テレワークの妨げになることから原則すべて廃止する」と発言した。
 なお演説に先立ち河野行政改革担当相は、民間からの申請など行政手続きで求める押印のうち99%を廃止できるという見通しを明らかにしている。約1万5000の押印が必要な行政手続きのうち、押印が存続されるのは1%未満の111件で、その多くは印鑑登録された実印や銀行届け出印に関するものという。ちなみに廃止される押印の中には、閣僚が首相に閣議を求める「閣議請議」の書面も含まれる。「閣議申請する大臣が多い場合は、往々にして大臣間を文書が巡るスタンプラリー状態になっている」とは河野大臣自身の説明である。
 行政手続きの押印廃止は、社会全体の印鑑レスへの移行促進とともに、行政の効率化、スリム化という狙いもある。今日、行政文書はPCで起草され、決裁手続きも含め部局内ではほぼペーパーレス化が実現している。だが部局間の連絡は、今もなお紙と印鑑によるやり取りが前提というのが実情だ。スピードが求められる新型コロナ感染症のPCR検査結果の共有に、FAXが使われていたことはその一例である。
 こうした状況を受け、菅首相は押印廃止や行政手続きの書面・対面主義の見直しに向けた方針を速やかに策定するよう指示し、来年1月召集の通常国会に関連法案が提出される見通しだ。行政手続きのデジタル化では、マイナンバーとひもづけられたアカウントが本人確認に用いる方向で制度設計が進む。  
 では電子契約では文書や作成者の真正性はどのように担保されるのか。その仕組みを提供するのが普及の進む電子契約システムである。その仕組みについて確認しておきたい。

「誰が」「何を」「いつ」を証明する電子契約システム
 電子契約は紙文書ではなく、PDF契約書などの電子データを合意の証拠とみなす契約の総称だ。日本では2001年の電子署名法の施行によりその法的基盤が整備されている。
 電子契約において大きな課題になるのが、紙文書と異なり書き換えが容易という電子データのぜい弱性である。この課題を克服し、電子データに紙文書に準じる法的効力を持たせるうえでは「誰が」「何を」「いつ」作成したかを証明する仕組みが不可欠になる。電子契約システムとは、それらを実現するクラウドをベースにした仕組みといえる。
 「何を」「いつ」作成したかの証明には、特定の電子データがある時刻に存在し、それ以降変更がないことを証明するタイムスタンプと呼ばれる技術が用いられる。具体的には、T S A(時刻認証局)が電子データのハッシュ値と時刻情報を結合したタイムスタンプトークンを生成し、トークンと電子データを比較することでスタンプが付された時刻からの変更・改ざんがないことを確実に証明することがその基本的な考え方になる。なおTSA事業者は複数の事業者が登録されているが、その役割に違いはない。
 一方「誰が」「何を」作成したかを証明するのが、印鑑に代わり、本人性を担保する仕組みである。その方法は二つある。一つはメール認証とシステムログによって本人性を担保する「電子サイン(」立ち合い型)と呼ばれる方法だ。当事者のメールアドレスにサイトのリンクを含むメールを送信し、本人性を担保するこの方法は、システム内で手続きが完結するため利用しやすい方法といえる。
 もう一つが、通信セキュリティを保証するために用いられることも多い電子証明書を使った「電子署名(」当事者型)と呼ばれる方法である。第三者機関であるパブリック認証局が発行する証明書によって法的効力が高まることが特長だ。そのプロセスは以下のようになる。

  1. 送信者が電子証明書の発行申請を認証局に対して行う。
  2. 認証局が電子証明書を発行。
  3. 送信者は平文の契約書と電子証明書(公開鍵)を添付して受信者に送信。
  4. 受信者は認証局に証明書の有効性を確認。公開鍵を使い暗号文を復号。平文の署名と照らし合わせ署名の有効性を確認する。
 電子サインと電子署名の違いは、紙の契約書における認め印と実印の違いに相当する。実印は、市区町村に印鑑登録を行うことでその真正性が担保されるが、電子署名において市区町村に対応するのがパブリック認証局になる。
 ちなみに一般的な販売契約や業務委託・請負契約などの場合、法的には電子サインでも十分な効力を備える。電子契約において電子署名が必須とされるのは、不動産売買など一部の契約に限られる。
 また賃貸アパートの更新手続きや派遣契約など、個人を当事者とする契約において、数千〜数万円の証明書発行コストが必要とされることも多い電子署名を利用することは現実的な選択肢ではない。電子サインと電子署名は用途に応じて使い分ける必要がある。

arrow 続き「第2特集 Withコロナ時代の商機を考える」は本紙でご覧下さい。

■本人性担保の二つの方法図拡大

■電子署名の仕組み図拡大

 

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・エンドポイントセキュリティ技術の理解と運用 Windows Defenderだけで本当に大丈夫? 【Vol.105】

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・徹底検証!! Office 2019 vs. Office 365【Vol.103】

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