大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
|
News
|
にっぽんの元気人
|
巻頭特集
|
第2特集
|
Focus
|
コラム
|
イベント
|
バックナンバー
|
vol35以前のバックナンバー
|
2018年9月時点の情報を掲載しています。
CPUは、集積回路のトランジスタ数が18カ月毎に2倍になるというムーアの法則にしたがい、年々性能を高めてきた。しかし、最近はムーアの法則もそろそろ限界ではないかという議論が行われるようになり、実際、ここ数年のCPUの性能向上ペースは、一時期に比べると確かに落ちている。ムーアの法則はプロセスルールの縮小によって支えられてきたが、プロセスルールが10n mに近づき、さまざまな問題が噴出してきたからだ。インテルは当初、2017年に10n mプロセスルールでのCPU生産を始めるとアナウンスしていたが、2018年6月時点でも限定的な生産しかできておらず、本格的な生産は2019年にずれ込むこととなった。その代わり、現行の14n mプロセスルールの最適化を進め、より高性能なCPUを投入することで当座の苦境を凌ごうとしている。
その象徴となるのが、インテルが2018年6月に行われたCOMPUTEX/TAIPEIの基調講演に相当するe21FORUMで公開した2 8コアのP C 向けプロセッサである。このプロセッサは、ハイエンドデスクトップPC向けCPUであるCore Xの後継製品であり、開発コードネームCascade Lake-Xと呼ばれる。Cascade Lake-Xは、サーバー向けの次期Xeonプロセッサ(Cascade Lake-SP)がベースとなっており、14n mプロセスルールを改良した14n m++プロセスルールで製造される。講演内のデモでは全コア5GHzで動作しており、現在最速のCore i9-7980XE(18コア、基本クロック2.6GHz、最大クロック4.4GHz)と比べても、2倍以上高い性能を実現する。28コアの次期Core Xの出荷は、2018年第4四半期の予定となっている。もちろん、次期Core Xはかなり高価なCPUであり、一般的なクライアントPCに搭載されるわけではないが、高い演算性能が要求される科学技術計算などを行うハイエンドデスクトップPCには最適な製品である。
CPUの性能向上に注力しているのは、インテルだけではない。Qualcommの「Snapdragon」シリーズは、スマートフォンの多くが採用しているSoCである。Snapdragonシリーズの現行のハイエンド製品「Snapdragon 845」は、Kyro 385と呼ばれる8コアのCPUコアとAderno 630と呼ばれるGPUコアを統合しており、インテルより進んだ10n mプロセスルールで製造されている。ベンチマークにもよるが、Snapdragon 845の性能はインテルのモバイル向けCPU「Corem56Y54」を3割ほど上回っており、ハイエンドスマートフォンのCPU性能は、2in1ノートP Cと比べても遜色がなくなっている。Snapdragon 855は、Snapdragon 845の後継となる次世代SoCであり、7n mプロセスルールで製造される可能性が高い。Snapdragon 855は、Snapdragon 845に比べて3割程度性能が向上するだけでなく、2020年に商用サービス開始を目指している次世代通信規格5Gに対応したモデムが統合される。Snapdragon 855の出荷は2018年末とされており、2019年に登場するハイエンドスマートフォンで採用されるだろう。
このように、P C向けCPUもスマートフォン向けSoCも、今年年末から来年にかけて性能が大きくジャンプアップしていくことになる。ムーアの法則の終焉は、まだまだ先の話になるだろう。
text by 石井英男
1970年生まれ。ハードウェアや携帯電話など のモバイル系の記事を得意とし、IT系雑誌や Webのコラムなどで活躍するフリーライター。
【進化するIT基礎技術の可能性】
・第37回 5GHz動作の28コアCPUがPCに搭載?スマートフォン用SoC「Snapdragon」もさらに進化【Vol.99】
・第36回 ノートPC向けCPUとして初の6コアを実現した第8世代Core iプロセッサ【Vol.98】
・第35回 仮想通貨の中核となるブロックチェーン技術とは【Vol.97】
・第34回 RFID(Radio Frequency IDentification )とビーコンの最新動向【Vol.96】
・第33回 数年後の実用化が見えてきた「量子コンピューター」【Vol.95】
・第32回 IoT/M2M向け無線通信技術として注目を集めるLPWA【Vol.94】
本紙の購読申込み・お問合せはこちらから
Copyright 2018 Otsuka Corporation. All Rights Reserved.