近年、地震をはじめとする自然災害が日本列島の各地で猛威を振るっている。豪雨による冠水や災害レベルの猛暑、今年の初めには、豪雪による運送機関のストップなどもあった。これまで、災害対策としてBCP対策が議論されてきたが、新たにテレワークが課題の解決として注目されている。働き方改革としても有用なテレワークについて、必要なポイントや課題について紹介したい。 |
これまで、BCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)対策とテレワークはそれぞれ別の文脈で語られる案件だった。だがこの夏、日本列島を襲った自然災害でテレワークが果たした役割は、その認識を大きく変えようとしている。
今年7月の西日本豪雨では、JR各社をはじめとした115路線が一時運転を休止し、21路線は9月になっても運転を再開できていない。通勤への影響も大きく、大阪商工会議所が西日本豪雨直後に行ったアンケート調査では、豪雨への対応策として「出勤不可能な従業員への自宅待機命令」を挙げた企業が7割近くに及んだ。こうした中、事業継続に大きな役割を果たしたのが、社内LANに社外からセキュアにアクセスできるテレワークの仕組みだった。
通勤への影響という面では、今年6月の大阪北部地震も記憶に新しい。大阪・高槻を震源にするマグニチュード6.1の直下型地震が発生したのは、通勤ラッシュのさなかの7時58分のことだ。最大震度6弱の地震により、関西のほぼすべての路線は一時運行をストップ。その結果、多くの通勤難民が駅や路上にあふれることになった。
その後の調査では、その際に6割以上が自宅に引き返すのでなく、勤務先を目指したことが明らかになっている。地震に伴う鉄道の間引き運転が終日続いたことで、その選択は多くの帰宅困難者を生むことにもつながった。こうした中、注目されたのがテレワークを導入する大手医薬品メーカーの大阪本社の判断だった。同社は、地震発生後即座に従業員に在宅勤務を指示し、従業員を混乱から守ると共にスムーズな事業継続を図ることに成功している。
また、東京都内で観測史上初めて最高気温が40度を超えるなど、今年夏の記録破りの暑さは記憶に新しい。これだけ暑いと通勤も一苦労だが、こうした中、都内のあるソフトウェア開発会社は予想最高気温が35度を超えると当日朝に従業員にテレワークを推奨するメールを配信し好評を博した。
これらの事例からも、従業員の安全確保と業務の継続へのテレワークの有効性を知ることができる。政府は、テレワーク導入企業を2020年度までに2012年度比3倍の34.5%に高める目標を掲げている。2017年時点で導入を終えた企業は14%ほどにすぎない。また、数字に直接貢献することがないBCP対策もその必要性の周知が進む一方で対応が後手に回りがちだ。こうした状況の突破口として、BCP対策・テレワークの合わせ技提案は大きな意味を持つ。
まずはテレワーク導入における課題について整理しておきたい。大きく分けると(1)セキュリティ、(2)コミュニケーション、(3)労務管理という3点に集約できる。 セキュリティでまず求められるのが、社内L A Nに安全にアクセスできる環境の構築だ。具体的には、フレキシブルな運用が可能なインターネットVPN(Virtual Private Network:仮想専用回線)の利用が一般的だ。特に営業担当のテレワークには販売管理をはじめとする基幹系システムへのアクセスが不可欠だが、基幹系のシステムは、今もオンプレミス運用が一般的だ。VPNの活用はテレワークの大前提と言えるだろう。
セキュリティ関連でもう一つ着目したいのが持ち出しデバイスの見直しである。社外利用デバイスは、自席PCの持ち出しやタブレットなどの専用デバイス、個人所有のPC、スマートフォンの利用などさまざまであることが一般的だ。セキュリティの観点では、管理部門が適切にコントロールするデバイスをルールに基づき運用することが望ましいことは言うまでもない。テレワーク導入は、社外でのデバイス運用を全面的に見直す絶好の機会でもある。
こうした中、近年大きな潮流となっているのが自席PCを社外でも利用する、いわゆる“2 in 1”PCだ。社内外のあらゆる場面に1台のPCで対応することは、業務をスムーズに行ううえでもデバイス管理の効率化という観点でも望ましい。こうした観点から、ビジネス用途で1sを切る軽量ノートPCが売れ筋になっているのはご存じのとおりだ。
市場には多様な2 in 1 PCが登場しているが、その中で特に注目したいのが今年8月発売のSurface Goだ。10インチタッチスクリーンを備える同製品の第一のポイントは522g(本体)という軽さにある。重いデバイスの持ち歩きにストレスを感じることは多い。特に、内勤スタッフを含め、全社的なテレワーク導入を検討するエンドユーザー様にこの軽さはアドバンテージになるだろう。
さらに搭載OSであるWindows 10(Sモード)にも注目したい。Windows Storeを通してのみアプリがインストールできる同モードのメリットの一つが、よりスムーズなWindows 10運用にある。半期に一度、新たなビルドがリリースされるWindows 10導入では、動作検証の煩雑化を危惧する声も多い。同モードによる検証済みアプリのみ利用できる環境は、こうした懸念への一つの答えになるだろう。なお同モードは、専用アプリをインストールすることで解除も可能だ。
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