大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
|
News
|
にっぽんの元気人
|
巻頭特集
|
第2特集
|
Focus
|
コラム
|
イベント
|
バックナンバー
|
vol35以前のバックナンバー
|
2018年9月時点の情報を掲載しています。
インターネットの普及は、人気コンサートのチケットを買い占め、高値で転売することを可能にした。ファンにチケットが行き渡らないこうした状況を危惧する人気アーティストたちが共同声明を発表して対策を促すなど、新たな社会問題に浮上したチケット転売の背後には、目的に特化されたbotの存在があった。
久しぶりにコンサートに出かけたら、空港の出入国カウンター並みの本人確認が求められた。そんな経験を持つ方も少なくないはずだ。一見すると世界各地で続くコンサート会場のテロ対策とも受け取れる本人確認は、実はチケット転売防止の水際対策にほかならない。
人気アーティストのチケット転売は、決して目新しいものではない。最近はあまり見かけなくなったが、かつてコンサート会場には「いい席あるよ」という独特なしゃがれ声でチケットを転売する“ダフ屋”がつきものだった。ちなみにダフ屋とは、チケットを意味する“札”を反転させた隠語。2000年代以降、暴力団対策の一環としてダフ屋行為は厳しく取り締まられるようになった。その一方でチケット転売が新たな社会問題として浮上した背景には、インターネットによるチケット販売と転売サイトの普及がある。
かつて人気コンサートのチケットを入手するには、チケットセンターで列に並ぶか、なかなかつながらないコールセンターに何度も電話を掛けるほかなかった。インターネットによるチケット販売はこうした状況を大きく変えた一方で、転売を目的としたチケットの大量購入も容易にした。そこで大きな役割を果たすのが、単純作業を人間に代って行う「bot (robot:ロボット)の短縮形・略称」だ。国内大手チケット販売サイトが、この分野で定評があるアカマイテクノロジーズのbot検知システムを導入し、ある人気アーティストのチケット受付開始から30分間のアクセスを解析したところ、その9割以上がbotによるものだったという。
チケット販売サイトはこれまで、大きく変形した文字を読ませるCAPTCHAなどを通しb o tを排除する取り組みを続けてきた。だが、CAPTCHAはすでに進化したAIの前では無力な存在になっている。実際、CAPTCHAを自動解析するサービスが1000個あたり約0.5〜1.5ドルの料金で市場に出回っているという。また、チケット入手に特化されたbotの場合、使い捨てのIPアドレスを準備することも多く、ファイアウォールによる特定IPのブロッキングも効果が薄いのが実情だ。
アカマイテクノロジーのbot検知システム「Bot Manager Premier」(BMP)は、botをそのふるまいで検知する。例えば人間がキーボードで文字を入力するとき、キー打刻の間隔は不規則になるが、botはそうではない。マウスの動きも同様で、botの場合直線的な動きになるという。BMPは、こうしたbotのふるまいを自動学習することで検知精度を向上させている。またBMPは相手がbotであると判別しても、即座にブロックする対応は取らない。ブロックしても新たなアクセスに再挑戦するだけだからだ。その代わりにレスポンスを遅くすることで、botによる被害の鎮静化を図るという。
botによる不正ログインという新たな攻撃手法にさらされているのはチケット販売サイトだけではない。通販大手セシールが今年6月に公表した、同社通販サイトへのなりすましによるアクセスはその一例だ。同社の発表によると攻撃は(1)攻撃者が外部で入手したメールアドレスを使い、セシールのECサイトで新規顧客登録申請を行い、登録済みメールアドレスの場合、二重登録ができない機能を悪用し、登録済みかを確認する、(2)登録済みメールアドレスのリストを作り、不正に入手していたパスワードでログインを試すという手順で行われた。同社によると、6月2日午前0時ごろから16万件という異常な数の新規顧客登録申請があり、同日午前10時以降、2000件近い不正アクセスが確認されたという。その規模を考えても、botの利用は明らかだ。国内大手チケット販売サイトのケースでは、BMP導入後、botによるアクセスは沈静化した。だがbotとの知恵比べは今後も続くはずだ。
すでに「CAPTCHA」は、進化したAIの前では無力な存在になっているとは驚きだ。
【最新ITキーワード】
・第44回 AIの反乱【Revolt of the AI】 【Vol.99】
・第43回 Alexaスキル【Alexa Skill】 【Vol.98】
・第42回 マイニング(発掘)【Mining】 【Vol.97】
・第41回 AI投資信託【AI's mutual fund】【Vol.96】
本紙の購読申込み・お問合せはこちらから
Copyright 2018 Otsuka Corporation. All Rights Reserved.