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2018年3月時点の情報を掲載しています。
近頃、なにかと話題になる仮想通貨には、法定通貨にとっての国家や電子マネーにとっての企業など、その価値を裏付けたり、保証したりする組織が存在しない。では、単なるネットワーク上の情報に過ぎないともいえる仮想通貨を多くの人が価値あるものと認める理由はどこにあるのだろうか? そこには、マイニング(発掘)という概念を軸に、通貨が持つ意味を再検討したプログラムの存在がある。
グローバル化する世界の新たな基軸通貨として、あるいは有望な投機対象として、仮想通貨が注目を集めている。そこで浮かび上がるのが、いったい何が仮想通貨の価値を担保しているのかという疑問だ。
仮想通貨において取引の妥当性を保証しているのが、過去の取引履歴をネットワーク上の無数のサーバーが共有するブロックチェーンと呼ばれる仕組みである。通貨の歴史を振り返ると、偽札をどうやって排除するかという問題は常に大きな課題であり続けてきた。日本の法律では流通を目的として偽札を作った場合、最長で無期懲役というきわめて重い刑罰が科されるが、これもこうした通貨の弱点を反映したものにほかならない。それを考えると、ブロックチェーンというテクノロジーは過去の通貨の弱点を解決する方法であることは間違いないが、それだけでは仮想通貨がなぜ価値を持つのかという疑問の答えにはならない。
法定通貨の価値を担保するものの一つに、中央銀行の存在がある。1枚の一万円札の発行原価は20〜30円ほどと言われる。それを多くの人が1万円の価値があるものと認める背景には、日銀という通貨の発行をコントロールする組織の存在がある。しかし、仮想通貨には中央銀行は存在しない。その代わりにあるのが、通貨発行の前提として存在する一連のプログラムなのだ。
サトシ・ナカモトという今も正体不明の人物が投稿した論文の内容に基づき、2009年に運用をスタートしたビットコインを例に考えていこう。まず注目したいのは、コインの発行ペースと最終的な発行量がプログラム化されている点だ。発行量の上限は2,100万枚で、計画通りのペースで発行が進むと2140年に発行が終了する。
では、計画に基づくコイン発行はいったい誰が担っているのだろうか。その背後にあるのが、マイニング(発掘)という概念だ。ビットコインでは、ブロックチェーンの基本単位であるブロックが10分に1回発行される。マイニングとは、複雑な演算を通し、新たなブロックを生成するプロセスを指す言葉で、最も早く演算の答えを得たマイナー(発掘者)が対価としてブロックを得る。また、発行量が増えるにつれマイニングが次第に困難になるようにプログラミングされていることにも注目したい。ビットコインがスタートした当初、一般のPC程度のスペックでも発掘が行えたが、現在マイニングを手掛けるのが、人件費に強みを持つ中国企業やマシンの冷却コストに強みを持つアイスランド企業など、国際競争力を備える企業に限られつつあるのもそれが理由である。鉱山は採掘が進むにつれ、坑道は深くなり、含有率が低下していくことが一般的だ。マイニングという呼び名からも分かる通り、ビットコインの仕組みは、金の価値に裏付けられた貨幣の成り立ちをなぞっている。
ビットコインには、価値を担保するもう一つの仕組みが備えられている。約4年に一度、ブロックの価値が半分になる半減期こそがその仕組みだ。それにより、2009年50BTCだった1ブロックの価値は、2018年現在12.5BTCになっている。
貴金属の価値が通貨の価値を担保していた時代のリスク要因の一つに、金や銀の含有量を切り下げる改鋳がある。日本では、徳川幕府の財政逼迫に伴う小判改鋳に伴うインフレや経済の混乱が有名だが、同様のことは世界史の中で何度も繰り返されてきた。それにたとえるならブロックの価値切り下げは、金貨に含まれる金の量を増やすことになる。インフレや為替相場の変動に悩む新興国ではリスク回避の重要な手段として注目され、先進国では有望な投資先として仮想通貨が注目されるようになった背後には、あらかじめ仕組まれたこれらの仕組みがある。ちなみにサトシ・ナカモト氏は最初のマイナーとして巨億の富を得たと見られているが、それはまた別の話になるだろう。
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