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にっぽんの元気人
2019年5月時点の情報を掲載しています。

大胆で自由な発想を持つことがこれからの日本を元気にする!

英語と日本語を巧みに使いこなし、テレビ番組などで国際情勢に関する切れ味鋭いコメントにも定評があるモーリー・ロバートソンさん。ご自身の肩書について尋ねたところ「ミュージシャン」であるとの返答を得た。企業や団体などからの講演依頼も多く、世界と日本の現状に関するセミナーを行っている。満員となった会場では、「日本のよさをもっと引き出し、元気にしたい」と熱く語っているモーリーさん。あらためて、そのためには何が必要なのかについて聞いた。

日本を元気にするためには、思い切った行動を取ってほしい。そんな心のスイッチを入れることが、僕の使命だと思っている。

なぜ米国では貧富格差が拡大したのか
BP:モーリーさんは、ミュージシャンとして活動する傍ら、DJやパーソナリティー、ジャーナリストなど、幅広い肩書でご活動されています。講演依頼も非常に多いとうかがっていますが。

モーリー・ロバートソン氏(以下、ロバートソン氏):
おかげさまで昨年(2018年)は、それまで以上にいろいろな場所に行って講演をさせていただきました。商工会議所や信用金庫などからのご依頼で話をすることが多かったですね。
 テーマは「国際情勢と日本」に関するものが中心です。世界で起こっている変化が、日本にどのような影響を及ぼしているのかということを、自分なりの視点で話しています。

BP:今年2月に開催された大塚商会の『実践ソリューションフェア2019』でも、「これだけは言っておきたい! 世界の中の日本の現状」というテーマで、国際ジャーナリストの視点からの興味深いお話を聞かせていただきました。フェアの感想はいかがでしたか?

ロバートソン氏:
300名以上もの大勢のお客様が集まってくださったことにびっくりしました。たくさんお客様の前でお話をすることはめったにありませんから。でも、話を始めると流れを作っていくことに集中するので、全く緊張はしませんでした。

BP:おかげさまで満員盛況でした。入りきれなかったお客様がサテライト会場で、大型スクリーンに映し出されたモーリーさんの姿を見ながら講演を聴いていたほどです。残念ながら会場にお越しになれなかったお客様のために、お話になった内容をもう一度聞かせていただけますか?

ロバートソン氏:
「世界の中の日本の現状」を知ってもらうために、まず理解していただきたいのは米国の状況です。
 ご存じのように、米国ではいま、1%のスーパーリッチな人々と、99%の貧しい人々との貧富格差が年を追うごとに広がっています。
 かつては、米国にも厚みのある中間層が存在していたのですが、その富が一部の富裕層や巨大企業に吸い上げられることによって、富める人はますます豊かになり、貧しい人はどんどん貧しくなるという二極化現象が30年以上も続いているのです。
 二極化をもたらした引き金のひとつとなったのは、実は日本の存在です。
 1960年代から70年代にかけての米国では、いまの日本と同じように国民の所得はかなり平準化していました。
 なぜなら、お金をもうけた人はより多くの税金を納め、その分を社会保障費として貧しい人に還元するという「所得の再分配」が機能していたからです。
 ところが、1980年代に入ると、日本による自動車や家電などの対米輸出がますます盛んになり、米国の製造業は次第に弱体化します。
 その結果、1980年代の米国経済は、成長が止まってしまっているのに、インフレがどんどん進行するというスタグフレーションの状況に陥るのです。

BP:日本ではバブル景気が盛り上がり始め、“ジャパン・アズ・ナンバーワン”と言われていた時代ですね。

ロバートソン氏:
これを何とかしようと大胆な改革を打ち出したのが、1981年に米大統領に就任したロナルド・レーガン氏でした。
 レーガン氏は、それまでの所得再分配政策を根底から見直し、富裕層や巨大企業を優遇する税制に改めることで、世界で戦っていける企業を育て、米国経済をよみがえらせようとしたわけです。
 その後の度重なる減税によって、巨大企業はますます大きくなり、富める人はどんどん豊かになっていくという構図が出来上がりました。
 結果的に、この“お金持ち政策”によって米国は経済戦争を勝ち抜き、旧ソ連との冷戦にも勝利して世界唯一の超大国となったわけです。
 しかし、対照的に苦しい思いをするようになったのは中間層の人々です。
 社会保障が手薄になったことで、中間層の人々は満足な公共サービスを受けられなくなります。例えば米国の公立学校は、予算がないので清掃員すら雇えず、先生たちが自分で掃除をしています。満足に運営できない公立学校では、傷害事件なども後を絶たないので、お金持ちは子どもたちを私立学校に通わせるようになり、教育における格差もどんどん広がりました。
 公立学校には、次の世代の教育に必要な図書館すら満足にありません。
 99%の貧しい人たちは、満足な収入を得られないだけでなく、子どもたちの輝かしい未来まで一部のスーパーリッチに奪われてしまっているわけです。

米国が衰退するなかで日本が生き延びる道は?
BP:日本でも格差が深刻な問題となっていますが、米国ではこの30年間余りの間に、よりドラスチックに貧富格差が拡大したわけですね。

ロバートソン氏:
そうした状況の中で登場したのがトランプ大統領でした。
 トランプ氏は、スーパーリッチたちに富を奪われ、苦しい思いをしている貧しい人々、かつての「古きよき米国」を知っている中間層の人々に「Make America Great Again(」米国を再び偉大にしよう)と呼び掛けることによって、大統領選に勝利しました。
「貧すれば鈍する」という言葉があるように、貧しさや不公平さに憤り、切羽詰まっている有権者は、声の大きな人に投票しがちです。
 その結果、トランプ氏のような「既存の仕組みをぶっ壊せ」と声高に訴える独裁者のような人物が大統領に選ばれ、民主主義がどんどん失われていってしまうのです。
 民主主義が弱体化する一方で、急速なグローバル化とともに米国の雇用はどんどん海外に流出しています。
 特に中国への雇用流出が著しい。中国にはうるさい労働組合がありませんし、表現の自由が制限されているので、労働者があまり文句を言いませんからね。今後はインドへの雇用流出も加速することでしょう。
 これによって、世界における米国の地位や経済力がどんどん衰退していくことは間違いないと見ています。

BP:そうした状況の中で、日本が今後生き延びていくためには、どうすればいいのでしょうか?

ロバートソン氏:
少なくとも、いままでのような米国頼みではいられないでしょうね。共倒れになってしまいますから。
 日本が生き延びていくためには、いまのままの低成長経済に甘んじるか、より大きな成長を目指すかという二つの選択肢があります。
 わたしは、より大きな成長を実現して富を生み出し、分け前を増やし、それを社会全体に行き渡らせて中間層がハッピーになれるような国にするのが望ましいのではないかと思います。
 一方で、「日本は低成長から脱却できない」という悲観的な見方をする政治家の中には、限られた富を、さらに細かく切り刻んで分配することを考えている人もいます。これは日本経済の衰退を受け入れるということで、文字通り“じり貧”の発想ですね。
 日本人はやりくり上手なので、限られたものを、できるだけ長持ちするように分け合うのは得意とするところですが、乏しい資源や資産は、いつかはなくなってしまいます。
 やりくり術に磨きを掛けて生き延びるのか、思い切ったことをやって富を増やすのか。そのどちらを選ぶのかということが、いまの日本に突き付けられた大きな課題だと思います。

日本人を目覚めさせる心のスイッチを押したい
BP:人口減少によって日本の潜在成長力が失われていくなか、富を大きく増やすためには、相当思い切った発想の転換が必要だと思いますが。

ロバートソン氏:
例えば、外国人材や外国資本、女性人材などをもっと積極的に受け入れられるかどうかということが大きな分かれ道となりそうですね。
 外国人が増えると治安が悪くなる、英語を勉強しなければ仕事ができなくなる、といったことが障害となって外国人材の受け入れが滞るようでは、大きな成長は望めないと思います。
 逆に、日本人にはない発想や行動力を持った外国人材を積極的に受け入れることで、日本経済を停滞に陥らせている原因を打破することが求められているのではないでしょうか。
 ちょっと皮肉な言い方をすると、僕自身にとっては、いまのままの日本のほうが、個人として成功するためにはありがたいと思っています。なぜなら、僕は英語も日本語もネイティブに喋(しゃべ)れるという、普通の日本人にはない特殊なスキルを持っていますからね。
 その分、日本にいれば、ほかの人たちよりも国際ビジネスにおけるチャンスは広がりますし、マスコミへの露出機会もどんどん増えていくでしょう。
 日本に居ながらグローバルに活躍する僕が『子どもを国際人に育てる英語術』という本を書いたら、100万部は売れると思います(笑)。
 でも、僕はこれまでの人生でせっかく身につけた経験やスキルを、もっと日本に貢献することにささげたい。
 いままでのやり方や考え方に縛られず、思い切ったことが自由にできる日本になってほしいと心から願っています。僕は、それをお手伝いする存在であり続けたいのです。
 いまの日本人は忘れているのかもしれませんが、昔の日本人はもっと自由で、多少やんちゃなことをしてでも、自分のやりたいことを自由にやろうとする民族でした。
 なぜなら日本の歴史は、いまの平和な時代よりも、激動の時代のほうが圧倒的に長かったからです。
 平和な時代が訪れたことで、それを維持しようとする規制や慣習が増え、大胆な発想や行動をよしとしない風潮が強まってしまったのが、いまの日本が抱える大きな課題です。
 もっと大胆に発想して、思い切った行動を取ってほしい。そんな心のスイッチを入れることが、僕に与えられた使命だと思っています。
 そのついでに、僕ももうけることができれば最高ですけどね(笑)。

BP:最後に本誌読者にメッセージをお願いします。

ロバートソン氏:
講演活動で日本全国を回ると、話で聞いている以上に、地方経済の疲弊や人口減少が深刻化していることを実感します。
 しかし、人口が減っている分、むしろ地方においては自然の力がどんどん強くなっているように感じます。
 例えば、北陸新幹線を使うと東京から長野や富山などに2時間前後で行けますが、たった2時間移動しただけで、東京では味わえないような大自然に触れることができるのです。
 忙しい都会の生活から抜け出して自然と触れ合うと、「自分は何のために働いているのか」ということを見つめ直すことができるはずです。
 たまには仕事の手を休めて、そうした時間を作ってみてはどうでしょうか。
 特別な時間の中で、あらためて自分が生きること、働くことの目的や価値観を見つめ直してみてください。
 はっきりとした目的を持って生きている人は、その目的を果たす成功率が高くなるものです。

photo
ミュージシャン
モーリー・ロバートソン氏
Morley Robertson

◎ P r o f i l e
1963年ニューヨーク生まれの広島市育ち。日米双方の教育を受け、1981年に東京大学とハーバード大学に同時合格する。日本語で受験したアメリカ人としては、おそらく初めての合格者。東大、ハーバード大学に加え、MIT、スタンフォード大学、UCバークレー、プリンストン大学、エール大学にも同時合格。東京大学を1学期で退学し、ハーバード大学に入学。電子音楽とアニメーションを専攻。アナログ・シンセサイザーの世界的な権威に師事。1988年にハーバード大学を卒業。国際ジャーナリスト、ミュージシャン、コメンテーター、DJといった多岐な分野で活躍。日本テレビ「スッキリ」等の番組にレギュラー出演するなど、各種メディアでも活躍中。






Backnumber

【にっぽんの元気人】

・関西学院大学 教授 NEWS ZERO 元メーンキャスター 村尾 信尚氏【Vol.103】

・弁護士 菊間 千乃氏【Vol.101】

・経済ジャーナリスト・作家 大正大学客員教授 渋谷 和宏氏 / 慶應義塾大学 政策メディア研究科 特別招聘教授 夏野 剛氏 / 株式会社hapi-robo st 代表取締役社長 ハウステンボス株式会社 取締役 CTO 富田 直美氏【Vol.100】

・脳科学者、医学博士、認知科学者/東日本国際大学教授 中野 信子氏【Vol.99】



 
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